米国若手日本語教員(J-LEAP) 7期生 総合報告書
憧れていたアメリカでの2年を終えて

A.J.ダイモンド・ハイ・スクール
鞭馬 未佳

アシスタントティーチャーだからこそ出来ること

私が派遣されたダイモンド高校には、幼稚園から高校まで日本語を一貫して学ぶことのできるイマ-ジョンプログラムが導入されており、5クラス中4クラスはイマ-ジョンのクラスでした。日本語や日本の文化に対しあまり新鮮味を感じない生徒達に、どれだけ楽しみながら学んでもらえるかということをリードティーチャー(以下、LT)と考え、結果、「テイラーみか」という人物が生まれました。私が金髪のカツラを被り、いつもとは違う陽気なキャラで日本語を学ぶ生徒という設定で、チームティーチングをする際に登場していました。初回登場の時には一瞬場が凍りつきましたが、想像以上に反応がよく、それからは登場するたびに拍手で迎えられるようになりました。
LTがメインで教える際には、クラスを回り、分からない生徒がいる時にはサポートをしました。イマ-ジョンのクラスにいると、クラスによっては分かって当たり前という空気が何となく流れているからか質問しようにも皆の前ではできないという生徒がいました。そんな時に、普段の授業態度やテストのスコア等でこちらから気づいてあげることにより、授業中や授業以外の時間を使ってサポートをしてあげられるようになりました。クラスに教師が2人いることで、気に掛けてあげられる生徒、気に掛けることができる時間も倍になったと感じています。
今日のクラスでは何が起こるんだろうという生徒たちのキラキラとした目や「先生ありがとう」という言葉が教えることへの原動力になっていたので、これから教える機会があった時には、発想力があり、気遣いを忘れない教師になれたらと思っています。

授業以外での活動

同期の河野さんと一緒に、保護者向け授業を行いました。日本語で学ぶイマージョンに通い始めたばかりの幼稚園生の保護者対象の一日限定授業でした。家で子ども達と使えるような日本語の基本的なフレーズを教えたり、「10 things you don’t know about Japan」という内容でプレゼンテーションをしました。一日限定で時間も限られていたので、基礎の基礎しか教えることができなかったのですが、そんな中で発音に関しての質問がありました。日本語を普段当たり前に話していると気づかないことに気づけたり、教える対象が違うと聞かれる内容も変わってきたりと、日本語を教えることへの奥深さを感じる一日になりました。普段は日本語で日本語を教えているので、英語で授業するということはなかなかのチャレンジでしたが、保護者の方々は熱心に聞いて下さり、心からやって良かったと感じています。

日本語を学校外で使ってもらうには

私が担当していた日本語クラスの一つに、「オーナーズ」という、テストや先生による面接を受けて合格しなければ入れないクラスがありました。授業内容は少しレベルが高く、また課題も多かったのですが、自分でこのクラスを取ると決めたやる気いっぱいの生徒達が集まる「オーナーズ」クラスは、毎日活気に溢れていました。
このクラスの生徒達は、「アダプタスチューデントプログラム」という、アラスカ州アンカレッジに住む日本人と毎月3時間、6か月にわたって日本語のみで会話をするプログラムに参加するのですが、私はそのプログラムのコーディネーターをしていました。アンカレッジには日本からのインターン生が7名いたので、インターン生1~2人に対して生徒2〜3人で1グループ、計7グループに分かれて、放課後や週末の時間を使って生徒達と会ってもらっていました。日本語のみでお互いの文化についてシェアしたり、実際に体験するということが目標の一つだったので、生徒とインターン生は必ず直接会わなければならず、それぞれのグループにおいてきちんとスケジュールが組まれているか確認することが私の主な仕事内容でした。また、生徒とインターン生との間でちょっとしたトラブルがあった時には間に立って話す等、陰ながらのサポートもしていました。生徒たちもインターン生も限られた時間の中で活動する大変なプログラムではありますが、プログラムを通して一生の友達ができ、日本語を学び続けるモチベーションをキープできる素晴らしい取り組みだと思いました。学校外での日本人とのコミュニケーションの場を、クラスの特色の一つとしてこちらからも提供できるんだということをこのプログラムを通して学ぶことができました。

これからの夢にむけて

日本語教育に携わったことのない私でしたが、この2年間の派遣を終えた今、改めて日本語教育について学び直しいつかまた教育現場に立つことが新たな夢となっています。そう思わせてくれたのは、生徒達の日本語を学ぶ姿と、2人のLTの「生徒にかける熱い思い」です。長年、教えていると独自の教材ができ、良かったものでも反応が悪かったものでも使いまわそうと思えば使いまわすことができます。ただ、生徒やクラスによって反応が全く変わってくるので、毎年アップグレードをするように私のLTは心がけていました。その思いは、生徒にも届いていたように感じます。言葉を学び続ける理由として、もちろんその言葉やその国の文化に興味があるからという人が多いと思いますが、今思えば、私が英語を好きになりアメリカで働きたいと夢を持ったのは「中学の英語の先生の教え方が好き」という理由からでした。
生徒への思いは、教材からも教え方からも、普段の接し方からも自分が思っている以上に伝わっていると思います。日々頭を悩ませ大変なこともあるかとは思いますが、「先生の日本語クラスが好きだから、日本語が好き」という生徒を自分自身も増やしていきたいとともに、同じような夢や目標を持つ人にも少しでもこの気持ちが伝わればと思います。

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