米国若手日本語教員(J-LEAP) 8期生 年間報告書
ミネソタでの挑戦

ハーディング・ハイ・スクール
中山 諒

「ミネソタ州ってどこ?」

派遣先が告げられた直後に私が抱いた疑問でした。どこに派遣されるか想像もできず不安でしたが、ミネソタについて調べたり実際に住んでみたりすると、ミネソタ州の素晴らしさが見えてきました。ミネソタ州は1858年に誕生。中西部に位置し、カナダと国境で接している冬が非常に寒い州です。州の面積は8693平方マイル、米国内で12番目の大きさです。人口は約566万人(2019年現在)、米国内で21番目の多さです。ミネソタの名前の由来は、アメリカ先住人の言葉で「水」を意味する「mni」と「曇り空のような」を意味する「sota」を合わせた造語で、「Minnesota」は「曇り空の色に染まった水」を意味しています。大都市のミネアポリスと州都のセントポールはツインシティーと呼ばれ、ミネソタ州の人口の約60%が住んでいます。アメリカ国内で州の面積は12位、人口は21位のミネソタは、その魅力や特徴を一言で表すことが難しいように思います。大手ショッピングセンターのTargetや「Post-it」で有名な3M、大手家電量販店のBest Buyなどはミネソタから誕生しましたが、これらはアメリカ人にもあまり知られていないことだそうです。しかし、実はミネソタにはミネソタを一言で表す「Minnesota Nice!」という言葉があります。これは「ミネソタの人々は他人に親切で友好的」という意味です。初めてこの言葉を聞いたときは半信半疑でしたが、1年間ミネソタで過ごして、ミネソタの人々は本当にナイスだと感じることができました。大自然と都会が融合していて、人も親切。そんな魅力たっぷりの州です。ぜひ「Minnesota Nice!」を体験しに来てください。

ゴー!ハーディング!!

ミネソタ州セントポール市に位置するハーディング・ハイ・スクールは、1926年に設立されました。教師数は約100名、生徒数は約2,000人とセントポールの中で比較的大きな高校です。本校の特徴としては、(1)アジア人の多さ、(2)IB(国際バカロレア)実施校、(3)言語プログラムの多さがあげられます。本校全体の60%から70%の生徒がアジア人で、モン族やカレン族などミャンマーやタイ出身の家族を持つ生徒が多く在籍しています。本校はIB校であり、多くの生徒がIBプログラムに参加し、高い学習意欲を示しています。IBテストは英語、数学などの主要科目に加えて、言語や音楽などの選択科目のテストもあります。合格すると大学の単位として認められることが多いです。また、本校はスペイン語、日本語、フランス語に加えて、モン語、オジブエ語、ラコタ語の6つの言語を学ぶことができます。
日本語プログラムは、スペイン語につぎ2番目に生徒数が多いプログラムです。多くのモン族の家庭内ではモン語を話すため学校ではモン語を受講せず他のアジアの言語を選択していることや、日本のポップカルチャーの影響で日本に興味を持つ学生が多いことが、日本語を選択する生徒が多い要因としてあげられます。本校では独自に作成した4年間のカリキュラムに沿って授業を展開しています。ミネソタの多くの大学で『元気』のテキストを使っていることから、生徒が進学し日本語の学習を続けることを踏まえ、『元気』の教科書の漢字や文法を参考にしています。日本語の教師数は2人で生徒数は約200人。日本語のレベルは1から6まであり、4から6までは現在一緒のクラスで行っています。中学校時代に日本語を学習した生徒が5や6に当てはまります。1クラス25人から35人と比較的多く、チームティーチングは生徒の授業理解に非常に役立っています。

コミュニティーと日本語教育

日本語の授業以外に、日系企業で働く方々による企業パネルディスカッションや、JETプログラム経験者による講演会などを実施しました。また、高校だけでなく継続的な日本語教育を促すために日本語プログラムがある地元の大学と連携し、高校生と大学生の交流やキャンパスツアー、大学の日本語の授業見学も行いました。パネルディスカッションや日本語を勉強する大学生との交流を通して、生徒たちが「なぜ日本語を学ぶのか」や「日本語を使って将来何ができるのか」を考えるきっかけになりました。
2019年のハーディング・ハイ・スクール日本語プログラムの新たな取り組みとしてJNHS (Japanese National Honor Society) への参加を決めました。JNHSとは、全米で日本語を履修している成績優秀者たちによる日本語プログラムの宣伝や日本に関するボランティアを行う活動のことです。その一環として、ミネソタ日米協会(JASM)と協力して日本人老人ホームへの訪問を行いました。生徒全員で老人ホームの利用者の方々へプレゼントを作り、代表の数名がプレゼントの受け渡しや日本の歌を披露しました。普段日本人と交流する機会が少ない生徒たちは、貴重な経験だったと振り返っていました。今後も引き続き日本人老人ホームと交流をしていく予定です。
また、夏休みの期間である6月初旬から7月中旬まで、Concordia Language Villageの日本語キャンプ「森の池」に参加し、1年間の日本語クラスの単位を4週間で取得できるプログラムの教師として、初級1の生徒を担当しました。普段、派遣校ではリードティーチャー(以下LT)と二人で授業を行っているため、ひとりで教案からテスト作成まで全て行うのは初めての経験でした。初級の生徒たち全員、クラスの目標に達することができ、私自身も日本語教師として大きく成長を感じられる経験でした。思い出深い生徒たちとの別れに、最終日は涙が止まらなかったです。

中山の挑戦!

J-LEAP1年目の目標は「挑戦→反省」でした。アメリカの日本語教育に関してゼロからのスタートだったので、様々なことに失敗を恐れず挑戦することを大切にしました。しかし、挑戦するだけで満足するのではなく、挑戦して得られたことを毎日記録として残し、反省することも大切にしていました。
このような反省をもとに、2年目の目標は「実行→引継」です。1年目にやってきたことを、よりよいものへと変えていきます。また、私の任期が終わった後も、私が中心となって進めてきた行事や文化紹介をLTが行えるように引き継いでいきます。また、LTだけの負担にならないように、生徒中心の行事を作り、先輩から後輩へと引き継がれるような関係を作っていきたいです。そのような関係を築くことで、日本語のクラスが生徒たちにとってよりよいコミュニケーションの機会になると思います。また、J-LEAP9期生が新たに近くの学校に赴任されましたので、密に連絡を取り合い、日本語プログラムのあるミネソタの全ての学校が使えるようなリスニング教材の作成など、学校の垣根を越えた交流を実現していきたいです。ミネソタの日本語教育に少しでも貢献できるよう、2年目も突っ走ります!

  • 派遣先での写真1
  • 派遣先での写真2
  • 派遣先での写真3
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