米国若手日本語教員(J-LEAP) 8期生 年間報告書
1年目を終えて

バラク・オバマ・アカデミー・オブ・インターナショナル・スタディーズ
西明 絵理

ピッツバーグ

ピッツバーグはアメリカ北東部に位置するペンシルバニア州の都市です。面積は151.1平方キロメートル、人口は30万人ほど(2010年)、日本との時差は14時間(夏は13時間)です。ピッツバーグにはアメリカを代表する川が3つ流れています。かつては鉄鋼産業による環境汚染が深刻な問題だったようですが、行政の積極的な介入により、今は緑豊かな美しい街の姿を取り戻しています。またスポーツも盛んで、ナショナルフットボール、野球、アイスホッケーの本拠地があり、1年を通してスポーツを楽しむことができます。
学術都市としても知られるピッツバーグですが、ピッツバーグ大学、カーネギーメロン大学といった主要大学で日本語の授業を選択することができます。また、ボランティアによって運営されている図書館での日本語クラスには週2回たくさんの人が集まります。学習者のモチベーションとしては、日本文化、アニメやJ-POP等のサブカルチャーへの関心が大きいようです。
一方、公立の中高における日本語教育は縮小傾向にあり、以前は9校あった日本語を選択できる学校が今は5校になっています。私の派遣されている学校は市内の公立学校の中で一番日本語を学習する生徒数が多いのですが、中学、高校卒業後も引き続き日本語を選択する生徒が少ないのが問題点としてあります。

バラク・オバマ・アカデミー・オブ・インターナショナル・スタディーズ

派遣校であるバラク・オバマ・アカデミー・オブ・インターナショナル・スタディーズ(以下、オバマ・アカデミー)は、ダウンタウンまで車で20分ほどのところに位置しています。IB(国際バカロレア)プログラムを特色とした中高一貫のマグネットスクールで、校区を超えて生徒が集まります。現在の教師数は80人、生徒数は1,000人を超えており、生徒の人種構成としてはアフリカ系アメリカ人が70%以上を占めています。本校での日本語教育は、生徒に日本を紹介することから始まります。現在中学校で日本語を学習する生徒は130人いますが、その中で日本語を自ら選択して入ってくる生徒はゼロです。小学校でどの言語も選択していなかった生徒が自動的に日本語に振り分けられるため、“なぜ日本語を学習するのか”という動機づけがとても大切になります。オバマ・アカデミーでのアシスタントティーチャー(以下、AT)としては、『日本っておもしろい!』を生徒から引き出すことに重点を置き日々の業務に取り組んでいます。授業で教科書は使用せず、いかに日本の魅力を生徒たちに伝えられるか、とリードティーチャー(以下、LT)と日々奮闘しています。

授業外での活動

授業外での活動としては、Speakathon引率、高校生のチューター、ボランティア(図書館、大学)、流しそうめんプロジェクトの4つを紹介したいと思います。

  • Speakathon引率:日本語だけでなく様々な言語を学習する生徒が一斉に集まり、該当言語に一日どっぷり浸かるという趣旨の言語キャンプです。オバマ・アカデミーの日本語の生徒を引率し、現地で他校の生徒と一緒に日本語を使ったさまざまな言語活動を行いました。
  • 高校生の日本語チューター:オバマ・アカデミーの高校で日本語を学ぶ生徒を対象に、宿題やプロジェクトの補助等の個別指導を行いました。自身が教える中学校の生徒とはまた違った学習スタイルを見ることができてとても勉強になりました。
  • ボランティア:図書館では一般学習者向けのクラスで学習補助を、大学では日本語クラスにアドバイザーとして参加し、学生との意見交換を日本語で行いました。
  • 流しそうめんプロジェクト:地域で毎年行われているブロックパーティーで流しそうめんを紹介しました。昨年のクリスマス頃から準備をはじめ、当日はたくさんの方々に日本の夏の風物詩を体験していただけて嬉しかったです。

2年目に向けて

J-LEAPとして1年間活動し、アメリカという国、ピッツバーグという都市についてたくさんの新たな発見がありました。まずアメリカという国で生活する中で強く感じているのは、日本の察する文化との差です。あえて言葉にしていなかったことも、米国では自分の言葉にして伝えることが当たり前で、それが必須であるということです。次に、ピッツバーグの人々と接する中で感じるのは地元への愛着の強さです。学業や仕事で一度地元を離れた人も、ピッツバーグの住みやすさを求めまた戻ってくることが多いと聞きました。私自身も生活する中で緑豊かで利便性に富んだピッツバーグが“アメリカの最も住みやすい街ランキング”で上位にランクインしているということに納得できました。
J-LEAPとしての1年目は、まず地域や学校、生徒について知ることに重点を置き活動してきました。2年目はこの1年を通して見えたこの土地でのニーズに応じた日本語教育、文化普及に努めていきたいと考えています。今年はピッツバーグにJ-LEAPの新しい仲間がもう一人派遣されます。お互いに協力しながら、公立学校で日本語を学ぶ生徒が学校の枠を超えて実際に日本語を使えるような機会がつくれたらと考えています。また個人的な目標として、J-LEAPを通して得た経験を帰国後にどう日本社会で還元していけるかも考えつつ、意欲的に活動していきたいと思います。

  • 派遣先での写真2
  • 派遣先での写真3
  • 派遣先での写真1
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