米国若手日本語教員(J-LEAP) 8期生 年間報告書
1年目を振り返って

キャベル・ミッドランド・ハイ・スクール
ハンティントン・ハイ・スクール
上尾 志乃

アパラチア山脈中の小さな州 West Virginia

ウエストバージニアと聞くと、”Country Road”という曲を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。まさに”Almost Heaven”という歌詞の通り、緑に囲まれた自然豊かな州です。 陸地面積は全米第41位、人口は第38位と、アメリカの中では小さい州です。外国人の割合は2%、家庭内で英語以外の言語を話す人の割合は2.7%、日本人比率は0.03%であり、いずれも全米で最も低いです。人口の93%以上を白人が占めており、日本はおろか、アジアに関する情報量の少なさには驚きました。
日本語プログラムがある機関はわずか4校で、マーシャル大学、ウエストバージニア大学、そして私の受入機関であるキャベル・ミッドランド・ハイ・スクールとハンティントン・ハイ・スクールです。2019年から州の方針により、K-12(幼稚園と1年生〜12年生までの教育)の外国語科目や教師数が削減されており、言語プログラム全体が厳しい状況に直面しています。

日本語クラス

私の派遣先は、州で2番目に人口の多いハンティントンという都市です。リードティーチャー(以下、LT)は州で唯一のK-12の日本語教師であり、午前中にキャベル・ミッドランド・ハイ・スクール、午後にハンティントン・ハイ・スクールで日本語クラスを担当しています。2校の合計生徒数は約3,500人、日本語履修者数は86人です。生徒は外国語を最低2年間履修することが卒業要件とされており、日本語の他にスペイン語、ラテン語、フランス語のプログラムがあります。1年生はアニメやソーシャルメディアから得た日本文化への興味がきっかけで履修する生徒が大多数ですが、3~4年生になると文化や歴史への興味が増し、さらに日本語を将来活かしていきたいと考える生徒が増えています。
1年目に私が担当した業務は、主に3つあります。

  1. 1) 2年生のクラスのメイン教師として、一連の業務を担当。その他のクラスはLTとチームティーチングを行いました。
  2. 2) 月に2度のペースで文化紹介の授業を実施。
  3. 3) 日本の学校と関係を構築し、ビデオや手紙交換等のプロジェクトを定期的に実施。また、地域コミュニティとの交流活動を企画。敬老の日には折り紙やカードを作り、生徒と共に近隣の老人ホームへ届けました。また生徒のオリジナル俳句集を作成し、オンラインで出版するとともに、地域の学校や施設へ配布することで、広報に活用しています。

校内・地域での活動

特に印象に残っている活動は、「お茶と芸術」をテーマに実施した美術クラスと日本語クラスの合同授業です。3週間にわたり、生徒約80人が参加しました。美術の先生と協力して「陶芸」と「墨絵」について授業を行い、オリジナルの茶碗作りをしました。さらにその茶碗を使って、茶道を体験。日米の芸術、文化、礼儀作法の共通点や相違点に触れることができ、興味深い授業となりました。
また、州では毎年夏に小学生を対象とした日本語イマージョンキャンプが実施されており、私はインストラクターとして携わりました。今年は5日間、「東京オリンピック」をテーマにスポーツを取り入れたクラスを企画しました。常に私の言動に反応し、考えたり真似したりする子どもたちの姿を見て、一つひとつの言動に責任を感じるとともに、子どもの可能性を広げる手助けができること、そして成長を見守ることができることに喜びを感じました。

2年目へ向けて

派遣先は経済・教育水準が全米で最も低い州の一つであり、留学や海外旅行をする生徒は現状多くありません。また日本人が少なく、生徒が日本語を使う機会はほとんどありません。そのため、この一年間、実際に日本人やコミュニティと交流させる機会を多く作りました。これは、「学習への動機づけ」「他文化への関心や知識の向上」「地域社会との関係性強化」という点で非常に効果的であったと言えます。
2年目の目標は、大きく分けて3つあります。

  1. 1) 2020年の日本語履修者数を1.3倍にする:小中学校への定期訪問、校内・地域への広報活動やアドボカシーに力を入れ、新規履修者の増加を目指すとともに、生徒の学習意欲・レベルの底上げを行い、履修継続者を増加させる。
  2. 2) 「日本語学習を通して国際人を育てる」という理念のもとカリキュラムを作成し、姉妹校やコミュニティとの活動をさらに発展させることで、より充実したプログラムにする。
  3. 3) 日本企業との交流:州内には製造業を中心とした日本企業が20社あるため、学習者が企業と関わる機会を作り、「日本語学習」と「将来」を繋げる。

以上を目標に、派遣先の日本語教育にさらに貢献できるよう、全力を尽くしたいと思います。

  • 派遣先での写真1
  • 派遣先での写真2
  • 派遣先での写真3
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