米国若手日本語教員(J-LEAP) 9期生 年間報告書
J-LEAP1年目

ワイパフ・ハイ・スクール
由井 理紗子

ハワイ州の日本語教育

ハワイ州は主に8つの島を中心に成り立つ総面積約28,311平方キロメートル(東京の約7.5倍)、アメリカで50番目に州となった最も新しい州です。人口1,415,872人(2019年調べ)のうち約70%が住むオアフ島は政治経済の中心地です。
複数の国から労働者がハワイに渡ったことから、様々な国の文化が入り交じったハワイ独自の文化が発展しています。それらは国の文化や食習慣から垣間見ることができます。ハワイで何を食べようかなとお店を探すと、様々な国のお店やファストフード店に出会うことができます。
ハワイの教育制度は、多くの地域が6・2・4年制で、高校までが義務教育です。日本語は現在ハワイ州全高校で教えられています。ハワイの地は日本人にとって観光地として高い人気があり、多くの日本人がハワイを訪れるため、学習者は日本語を使う機会がたくさんあります。日本人観光客を相手にしたビジネスも多く、仕事でお客さんとコミュニケーションをとるために学習している人も多いです。また、生徒の中には、日系人として祖先の文化を理解したいという気持ちやアニメや漫画などのポップカルチャーが好き!もっと知りたい!という理由から日本語の授業を選択する生徒もいます。

ワイパフ・ハイ・スクール

派遣先のワイパフ高校は、オアフ島の真ん中に位置しています。生徒は全体で約2,000人、教師は約200人在籍しています。元気いっぱいの生徒とスタッフが集まった、ハワイで2番目に大きな高校です。現在約400人の学生が日本語を履修しており、2人のアメリカ人日本語教員と中国系教員と私の4人で教えています。私はリードティーチャー(以下、LT)と一緒に日本語レベル1~3とAP(アドバンスト・プレイスメント)クラスを担当しています。APとは大学レベルの日本語で、5月に全米共通の試験があります。
ワイパフ高校は2年前から聞く・話すに重点を置いた会話中心の学習方法になりました。特に特定の使用教材はなく、自分たちでテーマに合わせて0からつくりあげていきます。特に生徒の反応がよかった授業は「日本とハワイを比べる授業」と「日本文化紹介」でした。ハワイと日本の違いはたくさんあり、ときには生徒たちの関心が爆発し、ディスカッションのようになっていきます。また、日本の精神性を学ぶことができる日本文化紹介では、できる限り沢山の文化を伝えました。習字・おりがみ・アニメ・巻き寿司・かるた・けん玉・福笑い・ゆるきゃら作りなどに挑戦し、習字ではみんな手や顔を真っ黒にしながら楽しく一生懸命に取り組んでいました。

授業外のイベント

ワイパフ高校には様々な交流会やイベントがあります。日本語クラブ、交換留学生の受け入れ、修学旅行生とのイベント、短期留学プログラム、日本体育大学の大学生との交流会などがありました。その中でも特に6つの学校から修学旅行生が訪れてきたときが印象に残っています。修学旅行生がワイパフ高校を訪れる日は、1日中生徒同士で交流イベントを行います。どの学校も約80~180人と大規模だったので、日本語履修の生徒だけでなく、他の語学の先生や生徒にも協力してもらいながらイベントを行いました。準備として、1か月前からどんなゲームを行うのか、当日の流れや役割分担などを生徒と何度も話し合い、必要な日本語の練習を一緒に繰り返し行いました。当日は生徒同士のコミュニケーション補佐、活動記録、引率の先生たちの対応を担当しました。
初めてのことで大変でしたが、終わってみると充実感がありました。また、学生が習った日本語を一生懸命使っている姿を見られたり、最初は日本語で挨拶をしても反応がなかった生徒が何度も修学旅行生を迎えるうちに、何も言わなくても「こんにちは」「ありがとう」「私は日本人が好きです」と言ってくれるようになった時は感動しました。

今オンライン授業でできること

ワイパフ高校では、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、新学期からクラスを2つのグループに分けてオンライン授業を実施することになりました。クラス内クラスターを避けるために、学校に登校し授業を受ける生徒とオンラインを使用し授業に参加する生徒に分けます。この2つのグループの順番はローテーションで回していきます。
また、私が一身上の都合で日本に帰国した際に、オンラインでの授業が実施されることが決まりました。そのため、時差の影響により、リアルタイムでの授業参加は難しいと判断され、授業の前に事前に日本でビデオを撮影し、そのビデオをオンライン授業や宿題として使ってもらっています。ビデオの内容は、日本で撮影できるクイズや日本文化紹介になります。 新型コロナウイルス感染症により、色々なものが大きく変わってしまいました。それでも、これからも自分ができることを模索してやっていきたいと思います。

2年目に向けて

1年目はとにかくすべてに慣れるために必死で走ってきました。必死になりすぎて周りが見えていなかった時、LTがよく言ってくれた言葉があります。「一期一会」と「どんなときでも丸ごと楽しむこと」でした。この1年間で多くの人たちに出会えました。どの人からも学ぶことがあり、人や環境に恵まれた1年だったと感じます。また、アメリカの学校教育はコミュニケーションに重点が置かれていて、それを成り立たせるための考える・伝える能力を伸ばす教育がされていると感じます。私が受けてきたアジアの学校教育とは異なるやり方に最初は戸惑いました。その中で「わかりやすく伝えること」と「楽しくなる」をキーワードに授業をつくっていきましたが、なかなかうまくいかないこともあり、試行錯誤を繰り返しました。それでもこの1年間で授業の流れや生徒の気質を知ることができたので、2年目からはそれらを踏まえながら、沢山のことを伝えていきたいです。何かを発言する際に後のことを考えて動けなくなってしまう時があったのですが、やりたいことをやり遂げるためにも、積極的に動き、今という瞬間を楽しんでいきたいです。たくさんのことを吸収し、より成長した自分になって帰国します。

  • 派遣先での写真1
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