米国若手日本語教員(J-LEAP) 9期生 総合報告書
サリナスでの二年間の活動を終えて

ノース・サリナス・ハイ・スクール
池田 寛子

ATとしての学びと成果

パンデミック以前は派遣校での通常業務に加え、リードティーチャー(以下、LT)以外の先生ともチームティーチングをさせていただいたり、同じ市内にある他校との合同イベントの企画・実施にも携わらせていただきました。
また、授業後や週末の時間を使って教材作成に携わらせていただいたことで、J-LEAPの研修で学んだバックワードデザイン(まずカリキュラムの最終目標を設定し、そこから評価方法、そして授業内容を作る方法)によるレッスンプランニングの知識を深め、実践の場で活かせるようになりました。着任研修ではトレーナーの先生の言っていることがよくわからず、デモレッスンプランをLTと一緒に作成しても、どのように授業を進めるのかイメージできませんでしたが、いまは教材やハンドアウトをみると全体の流れが把握でき、学生がその日の授業のゴールができるようになるためには「各アクティビティの間にどんな練習が追加で必要か」あるいは「学生のつまずきそうなところがどこか」ということが考えられるようになりました。文法、語彙の導入を中心に「日本語を教える」だけではなく、「日本語で何かを教える」というコンテントベースのサリナスの教材が理解できるようになったことは、日本語教師として自身の大きな成長につながったと思います。

オンライン授業への切り替わり

2020年3月以降、新型コロナウイルスの蔓延により学校が閉鎖となり、オンライン授業に切り替わりました。学生には入学時にChromebookが1人1台支給されていたため、教師も学生も自宅から授業に参加していましたが、兄弟の面倒をみながら授業を受けなければいけない、インターネットの接続が悪い、静かな部屋で勉強ができないなど、学習環境が整っていない学生もいました。また、プライバシーの問題から、カメラをオンにすることを強制できなかったため、対面で授業をするときよりも学生の反応がわかりにくく、オンライン授業への切り替わりは教師にとっても大きなチャレンジとなりました。とくに、1年生はクラスメイトの名前も顔もわからない状態だったため、教師が一方的に話すのではなく、グループミーティングを行うなど、学生同士が交流し、発話できる機会をつくるように気を配りました。また、ハンドアウトは学生が各々のペースで自習できるよう動画を組み込み、対面授業のとき以上に1人1人に細やかなフィードバックを与えるなどの工夫をし、LTとともに試行錯誤を繰り返しながら、なんとかコロナ禍の1年間を乗り切ることができました。

オンラインで日本とつながる活動

世界的にオンライン会議システムを使った授業の実施やICTツールの使用が一般的となったことで、派遣校の学生と日本の高校生をつなぐ機会を設けることができました。この2年間は例年他校と合同で行っている日本旅行が中止となり、姉妹都市との交換留学も延期され、日本人の学生との交流が一切ない状況でした。そのため、動画でコメントし合えるアプリを使って、自己紹介の動画を投稿し、日本の高校生と互いの学習言語でコメントし合ったり、APAdvanced Placement。高校時に大学初級のカリキュラムや試験を提供する)クラスの希望者には、「人種問題」という難しいテーマについて、日本語でプレゼンテーションやディスカッションをする活動ができました。クラスメイトや教師が相手ではなく、本物のオーディエンスを相手に日本語で話すことに対し、学生は戸惑い、上手く伝えられない場面もありましたが、それも良い経験になったように思います。
また、一時帰国で日本に滞在していた際には、同期の派遣者たちと協力し、お正月の様子やカラオケ、本屋、家など、学生が見てみたい場所や授業に関係するトピックについて紹介する動画を制作し、互いに共有することで、それぞれの派遣校の学生たちにリアルな日本の様子を楽しんでもらいました。

J-LEAP参加を目指す皆さんへ

新型コロナウイルスの蔓延という誰もが予期せぬ出来事が起こり、私だけでなく、この報告書を読んでくださっている皆さんも変化を求められた大変な2年間だったのではないでしょうか。アメリカでの生活では、想定外のことが度々起こります。もしかしたら、それは自分ではコントロールできないことかもしれません。そのような状況でも、私はLTや周囲の先生方、ホストファミリー、J-LEAPの同期やOB・OGの皆さんなど、この事業に関わる方々に助けていただきながら、与えられた状況のなかで自分のできることを探し、実行することができました。このような力強いサポート体制はJ-LEAPの魅力のひとつです。今後このプログラムに参加を希望する皆さんには、ぜひ逆境に負けず、思い切って挑戦し続けてほしいと思います。
私自身の次の挑戦は、アメリカを離れ、欧州で第二言語習得や外国語教育について学ぶことです。欧州はカリフォルニア以上に多様な人種、言語、文化が交わる場所です。そのような環境下で、どのように外国語教育が行われているのか学び、またいつかカリフォルニアやアメリカとご縁があった際に、胸をはってお世話になった方々の前に戻れるよう努力していきたいと思います。

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