米国若手日本語教員(J-LEAP) 9期生 総合報告書
2年間を振り返って

イーストビュー・ハイ・スクール
佐藤 翼

J-LEAPで得たもの

この2年間の派遣でアシスタントティーチャー(以下、AT)として多くのことを学ぶことができました。それは、リードティーチャー(以下、LT)が私をアシスタントではなく、同僚として扱ってくれたおかげだと思っています。ATというと、会話スキットの相手や課題の添削が主な業務だと思われがちですが、私の場合は成績管理や保護者との連絡等すべての業務に関わることが出来ました。もちろんLTがきちんとサポートをしてくれましたが、授業だけでなく学校の一教員としての大きな枠で仕事内容を見ることができ、新型コロナウイルス感染症拡大で授業形態が変わってもLTの指示を待つだけでなく自ら率先して動くことができました。その中でもエドテック(教育現場で活用するICTサービスやソフトウェア)を使った授業づくりに一番力を入れました。派遣先では生徒に一人一台iPadが支給されていましたが、うまく活用できていませんでした。積極的に学会やセミナーに参加し、そこで学んだことを同期のJ-LEAP9期生で実際に使ってみて使い方を考察した後、授業に取り入れたり他の外国語学科教員と情報共有したりすることができました。自分のできることを見つけて行動する力は今後の日本語教師生活に役立つと思います。

コロナ禍での工夫

派遣先では生徒に一人一台iPadが支給されており、インターネット環境のない生徒にはWi-Fiルーターを配布してコロナ禍でも引き続き教育サービスを提供できるようにしていました。また、以前からSchoologyという学習管理システムを導入しており、課題の提出や生徒とのやり取りもそこでできるのでその点ではスムーズにリモート授業への移行ができたと思います。リモート授業になって、自分のペースで学べるのが良いと成績が上がった生徒も多数いました。一方で、家族の人数が多い生徒や自室を持たない生徒にとっては学習環境を確保することは難しく、どうやって学習環境を提供できるのかが課題として残りました。また、ビデオ会議アプリを使った授業は生徒のカメラが付いていないと授業に参加しているのかどうかがわからず、それぞれ学習環境が違うので強制もできませんでした。そんな状況の中、学習効果を高める授業ができるように参加型教材の作成に力を入れました。Pear DeckNearpodという参加型形式のスライド作成アプリを利用して授業スライドを作り、生徒がただ聞くだけの授業にならないよう試みました。その結果、画面の向こうにいる生徒の様子がわかるようになり、適切なサポートができました。

学校外での活動

J-LEAPの事業目的の一つである日米間の若者交流の中で一番の思い出はJ-Quizのお手伝いをさせて頂いたことです。J-Quizは毎年ワシントンDCで行われるJapan Bowlの予選大会としてミネソタ州で行われる日本語の大会です。2020年は会場設営などをお手伝いさせて頂きましたが、オンラインで開催された2021年のJ-Quizでは試験の問題作成以外に、メインステージで日本の音楽やビデオを流すことと、結果が出るまでの時間で毎年行われているKahootというゲーム形式のアプリを使った文化紹介クイズを担当させて頂きました。文化紹介クイズでは、日本語学習者が交流できる場になるようにと、今年は学習者から問題を事前に集めてKahootを作成しました。参加者は私の予想を上回るような幅広いジャンルの問題を提出してくれ、中には日本人の先生でも知らないような問題が多数あり、当日は参加者が活発にチャットでコメントのやり取りをする姿が見られました。派遣先高校でも、後日授業でやってみましたが、難しい問題に大盛り上がりでした。また、学習者がどのような関心を持っているのか知ることができ良かったです。これをきっかけに州内の日本語学習者につながりができ、教室外で日本語を使う機会ができればいいなと思いました。

未来のJ-LEAPer

この2年間 J-LEAPに参加してとても大切だと思ったことは、意見を聞く耳を持つことと伝える力です。異国の地で、自分とは全く違う文化や環境で育った人や異なる価値観を持つ人と多く出会いました。ホストファミリーやLTが一番身近な例です。言わなくてもわかるはずだと思い、自分の中に疑問やストレスがあっても相手に伝えないのは悪い癖で、言わなければ何も変わらないことを痛感しました。特にLTと授業案を作るときは、意見がぶつかることもありました。しかし、相手はどうしてそのように考えるのかを理解し、自分の考えもきちんと伝えることで、お互いの意見の良い所をとって、最適な授業を作ることができました。その際は相手の顔を見て話すことで、表情を読み取ることができ、適切な伝え方ができることと、相手にも聞く姿勢を伝えることができるので、対面で会うことが難しかったコロナ禍でも、ビデオ通話を利用し、顔を見て話すように心がけました。J-LEAPでは貴重な経験を積むことができただけでなく、切磋琢磨できる仲間もできました。私は今後もJ-LEAPで得たスキルを活かしながら、日本語教師としてのキャリアを築いていけたらいいなと思っています。

  • 派遣先での写真1
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  • 派遣先での写真4
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