米国若手日本語教員(J-LEAP) 9期生 年間報告書
ピッツバーグでの1年を経て

シェーラー・エリア・ハイ・スクール
シェーラー・エリア・ミドル・スクール
羽田野 美晴

ピッツバーグ

ピッツバーグはアメリカ北東部に位置するペンシルバニア州第二の都市です。ピッツバーグ市の面積は151.1平方キロメートル 、人口は30万人ほどです。ペンシルバニア州はアメリカの歴史において最も古い州の1つであり、欧州からの移民が多かったことから、その文化的繋がりも深く、独特な建築美も特徴的だと言われています。また、ピッツバーグにはアメリカを代表する川が3つ流れており、水の街、橋の街、またかつて鉄鋼産業で栄えたことから鉄鋼の街とも呼ばれています。川でボートやカヤックに乗って水遊びを楽しんだり、川沿いでサイクリングやジョギングを楽しんだりすることができます。市内には、ナショナルフットボール、野球、アイスホッケーの本拠地もあり、スポーツでも有名な街です。これらのことから、ピッツバーグはアメリカのもっとも住みやすい街ランキングで常に上位に選ばれているようです。
ペンシルバニア州内には500の公共教育学区、多くの私立学校、公立のカレッジと大学、また100以上の私立高等教育機関があります。州法により、州内に住む8歳から17歳の子供は学校への入学が義務づけられています。ペンシルバニア州において日本語教育の規模はあまり大きくありませんが、州内の他の地域に比べると、ピッツバーグは日本語教育が少し栄えていると言えるでしょう。ピッツバーグではいくつかの高校や大学で選択科目として、また日本語補習校もあり、日本語を学ぶ機会が提供されています。また、ピッツバーグ市内の図書館では日本語クラブも開かれており、会話クラスや読解のクラスなどがボランティアによって運営されています。

シェーラー・エリア・ハイ・スクール/シェーラー・エリア・ミドル・スクール

シェーラー・エリア・ハイ・スクールとシェーラー・エリア・ミドル・スクールは、ピッツバーグの北部に位置し、山を切り開いたような丘の上にあります。学校は住宅地に囲まれ、緑豊かなエリアで、鹿やリス、うさぎなどの動物が現れることもあります。教師数は高校に約120人、中学校に約70人所属しており、学生数は高校、中学校合わせて約2,500人います。外国語のクラスは選択科目であり、外国語を勉強したい学生は、日本語、スペイン語、フランス語、ラテン語の4つの中から選択することができます。高校には日本語レベルが1から5まであり、レベル5はAP(アドバンスト・プレイスメント)クラス(大学の一般教養レベルに相当するクラス)として日本語教育が行われています。中学校にはレベル1のクラスのみ存在します。日本語教師数は中学・高校共に1人ずつで、学生数は中学・高校合わせて80人ほどです。教科書を使用することはほとんどありませんが、高校のレベル4、APクラスで宿題として「げんき」が使われることがあります。
授業では、リードティーチャー(以下、LT)と一緒に会話のデモンストレーションを行ったり、発音のお手本を見せたりしました。生徒たちがペアやグループで活動する際には、そばで手助けしたり、できているかの確認を行ったりしました。また、宿題やユニット内のプロジェクトのチェックをして、生徒が何を間違えたのか、何に気をつけるべきなのかなどのフィードバックを、次のクラスの際に生徒全体に伝えたりしました。そのほかには、漢字学習の担当もしました。ユニット毎に新しい漢字を教える際、授業内での板書や意味の説明などをリードして教えました。

図書館でのボランティア活動・小学校訪問

地域の図書館の日本語クラブにボランティアとして参加していました。私が参加していたクラスは会話のクラスとワークシートのクラスです。どちらも活動は2週間に1度、1時間程度あり、誰でも参加できる形となっています。会話のクラスは5人程で日本人を交えてグループになり、何でも好きなことや話したいことなど、フリートークをしていました。また、ワークシートのクラスでは自分のレベルに合ったシートを好きなだけ取ってもらい、各々取り組んでいる際にボランティアスタッフがまわって質問に答えたり、手助けをしたりしていました。
また、日本語を知ってもらう、そして日本文化を広める活動として、小学校を訪れました。1年生の1つのクラスで、日本語の簡単な表現を一緒に動作つきで学んだり、折り紙の活動を行ったりしました。絵や写真を見せたり、笑顔で動作をおおげさに大きくすることで、日本語を知らない生徒も知っている生徒もとても楽しそうに参加してくれました。

オンラインでの学習

ライブレッスンの実施はできませんでしたが、オンラインで課題の提供をしました。学区の決めた規則により、外国語を含む選択授業の時間は週に40分程度の課題しか与えることができませんでしたが、毎週LTと一緒に10分程度のレッスンビデオを作成し、新しい内容を教えていました。生徒はそのビデオを見て学び、課題やプロジェクトに取り組みました。Google Classroomを使用し、生徒への連絡事項のやりとりや、課題やプロジェクトの提出、フィードバックを行いました。パワーポイントやワークシートの作成、生徒が提出した課題のチェックやフィードバックを主に行いました。生徒に与える課題でリスニングの練習として、J-LEAP同期の他のアシスタントティーチャーに協力してもらい、複数人の会話ビデオの作成を行ったりもしました。生徒からは好評で、いろいろな日本人の声を聞くことができたのが良い機会になったのではないかと思います。

1年の振り返り・2年目に向けて

仕事でもプライベートでも大きく感じたのは、「言わなければ伝わらない」ということです。日本にいる時は、国民性や私自身の性格もあるかもしれませんが、これだけ言えば私の言いたいことをわかってくれるだろう、何も言わなくても私が感じていることを汲んでくれるだろう、という気持ちがいつもどこかにありました。もちろん日本人同士でさえすべてがそれで済むわけではありませんが、アメリカに来て学校でのLTとの仕事やホストファミリーとの生活を通して、言葉にして伝えなければ相手にすべては伝わらないということを改めて学び、自分の意見や気持ちを相手に言えることが多くなり、積極性が増しました。コミュニケーションの大切さについてさらに深く学ぶことができたと感じます。
新型コロナウイルス感染症の影響がまだ続いており、新年度もオンラインでスタートすることになりました。オンラインでできることは教室で実際に生徒たちと一緒にできることに比べると限られてしまう面がたくさんありますが、LTと共にいい授業作りができるように一生懸命取り組んでいきたいです。また、この機会にLTがこの先も使える教材づくりに去年よりさらに時間を割くことができればいいなと思っています。さらに2年目はLTと2人で教えることができる、日本人として生の日本語を聞かせてあげることができる環境を活かして、生徒一人一人と日本語で関わる時間を増やしていきたいです。生徒が日本人の先生と勉強して楽しいなと感じることのできる時間を届けたいです。

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