米国若手日本語教員(J-LEAP) 9期生 総合報告書
J-LEAPを終えて

カーニー・ハイ・スクール
土屋 円

教える立場だけど学ぶことも多かった2年間

私はアシスタントティーチャー(以下、AT)として、毎年約100人の生徒(1~4年生)に日本語を教えていました。主に教材作成、宿題の作成と添削、成績管理などの一連の業務をリードティーチャー(以下、LT)と協力して行いました。私は1年目の後半から3年生、2年目には2年生をLTの立場としてメインで担当しました。LTの立場で授業を進行することは、教師経験があまりない私にとっては大きな挑戦でした。授業の流れを何度も頭のなかでシミュレーションしたり、学習する内容を詰め込みすぎないようにしました。そのなかで生徒から思いもよらない質問やリアクションがあったりしたので、教える立場であったけれども、学ぶことも多かったです。
その経験に加え、私にとって有益だったことは約1年間のオンライン授業を通じて、パソコン1つでできる授業作りを実践できたことです。オンライン授業でのクラスマネージメントのルール作り、アプリの活用の方法、生徒の集中力を保つための工夫などをLTと考え実践し、私たちにとってやりやすいオンライン授業の骨組みを作り上げました。もともと私はテクノロジーに苦手意識がありました。しかし、今ではさまざまなツールを活用できるオンライン授業に強い興味があり、今後も教育とテクノロジーの分野に関わっていきたいと考えています。

オンライン授業への挑戦

パンデミックの状況悪化により、2020年3月中旬より突然リモート授業が開始しました。Synchronous(リアルタイムで行われるオンライン授業)は各学年週1日でしたが、学校側のルールなどが確立するにつれて徐々に週3日まで増えていきました。画面上であっても生徒の顔が見られる機会が多くなることは私にとっては嬉しかったです。その一方で、生徒は1日のほとんどをカメラの前で過ごさなければいけないため、ストレスが増えていったようでした。そのため授業内外で精神面でのケアが必要になったり、個別に学習指導をしなければならない生徒が増えました。私たちはHelp Period(授業時間外の補習の時間)をより多く設け、生徒とより一対一で向き合えるようにしました。このように、教師という立場でどのように生徒に寄り添うかをLTなどから学ぶことができました。「私はあなたをサポートする」という姿勢を示し、「何か手助けはできるか」と何度も聞くこと、これらは生徒に限らずあらゆる人を助けるためのヒントとなることでしょう。
また、Synchronousの授業においては、なるべく生徒が多く発言できるようなアクティビティを考えました。1回の授業中にひとり2回以上の発言ができるよう努力しました。生徒は基本的にミュートの状態なので、テンポよく名指しをして進めていかなければなりません。例えば、「Aさん、この文で何がわかりますか。…そうですか、じゃあBさんはどう思いますか。」「次はAさんがBさんに聞いてください。」など常に生徒が授業に意識を向けられるよう工夫しました。オンライン授業をしてみて、通常の教室で行う授業より素早く、時間を効率良く使える授業作りができることを実感しました。

たくさんのつながりを

生徒たちにより多くの日本人と出会う機会を提供しました。例えば、他校のATに授業に参加していただいたり、日本からニューヨークに来ていた青年に英語と日本語を交えてプレゼンテーションをしていただきました。さまざまな年代、性別、地域の日本語を聞くことができた機会でもありました。そして、前任のATと生徒のつながりを保つためにも、ビデオ教材にゲストとして登場していただいたり、生徒に向けたメッセージを届けていただきました。また、隣の州であるニューヨーク州とニュージャージー州の日本語学習者や日本からの学生が集まる文化祭イベントにも参加予定でした。パンデミックで参加は叶いませんでしたが、その機会があれば生徒はもっと多くの発見ができたかもしれません。また、夏季休暇中にカーニーの小学生向けのサマースクールに参加して、折り紙を教えました。カーニーには日本人がほとんどいなく、アニメ以外の日本文化や日本人に出会う機会などが少ないです。私との交流が小学生たちにとって日本に興味を持つきっかけになることを期待しています。そして、将来、彼らがカーニー・ハイ・スクールで日本語を勉強する姿を見られるのを楽しみにしています。

アメリカで教師を経験して

教師として必要な心構えのひとつは「Be flexible!」、つまり柔軟性だと感じました。この言葉は、長年J-LEAPを見守られている方がアメリカ出発前に私たちに伝えたものでした。今になって振り返ると、この言葉に支えられながら2年間を過ごせたと思います。パンデミックを含め、想像もできなかったことがたくさん起きましたが、そのたびに一旦気持ちを落ち着かせ、よく考えて、柔軟に対応することができたからです。そして、この言葉を胸に、今後も日本語教育に関わりながら前に進んでいきたいです。日本語教師としてより多くの経験を積むこと、そしてオンライン授業に挑戦したように新たな教え方を研究し、授業作りに活かすことが目標です。
また、世界中でより多くの人が日本語に少しでも興味を持つきっかけが増えるように、教育機関以外での活動にも積極的に携わっていきたいです。J-LEAPの経験により、日本語教師としての一歩が始まりました。アメリカという多様でさまざまな価値観が混ざり合う社会でこのスタートができたことは、私にとって大きな財産です。今まで支えてくださった皆様に心からの感謝を届けたいです。そしてこれからもこの繋がりを大切にしていきましょう、日本とアメリカの素晴らしい未来のために。

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