米国若手日本語教員(J-LEAP) 9期生 年間報告書
1年目を終えて

カーニー・ハイ・スクール
土屋 円

ニュージャージーと日本

アメリカ東部にあるニュージャージーの面積は22,608平方キロメートルで、東京都の約10倍の大きさです。アメリカでは50州のうち4番目に小さい州ですが、ニューヨークに隣接していることからか人口密度はアメリカで1番高く、人口は2019年のデータで8,882,190人です。ニュージャージーは様々な風景が見られる州であり、高層ビルが立ち並ぶ都会的なエリアもあれば、一方でのどかな自然や北大西洋沿いの美しいビーチを楽しめるエリアもあります。
2020年現在、NJATJ(ニュージャージー日本語教師会)に登録している日本語教育機関は25機関で、うち9校が高等学校です。それら以外でも、ニュージャージーは日本に関わるチャンスにあふれています。多くの日本人がニュージャージー各地に住んでおり、日本食レストランや日系スーパーが充実しています。そして日本関連のイベントや日本語と英語の言語交換コミュニティーがニュージャージー及びニューヨークで盛んです。どの年代にとっても日本を知る機会に非常に恵まれている環境であると思います。

カーニー高校

私の受入機関であるカーニー高校は、ニュージャージー東部のハドソン郡カーニーにある公立高等学校です。ニュージャージー最大の都市であるニューアークから車で約10分、そして校舎からマンハッタンが一望できる距離にあるため比較的都会に位置します。カーニーの人口の多くがペルー、ブラジル、メキシコなどの中南米にルーツを持つ人々なので、カーニーのレストランや銀行などでは日常的にスペイン語やポルトガル語が聞こえます。そのため、カーニー高校の生徒約1,700人の多くは英語以外の言語を話すことができ、外国語への柔軟性が高いと感じます。
カーニー高校ではスペイン語、フランス語、イタリア語、ラテン語、日本語のいずれかを2年間勉強します。カーニー高校の教師約120のうち、日本語教師は私のリードティーチャー(以下、LT)とアシスタントティーチャー(以下、AT)の私だけです。2017年から2019年まで前任のATがいたため、生徒は多くの時間を日本語ネイティブと過ごすことができています。日本語の生徒は、2019年度は90人、2020年度は109人予定しています。日本語を勉強したい生徒が年々増えてきていることはLTも私も嬉しく、誇りに思っており、その生徒の期待を裏切らないよう今後も充実したクラスを作っていきたいです。

日本語の授業以外での活動

毎週火曜日の放課後に日本語クラブに参加しました。日本語を勉強している生徒を中心に約20人集まり、折り紙、 日本のアニメ映画鑑賞、箸の練習、日本語の伝言ゲームなどを楽しみました。生徒を中心に運営されていたので、私は顧問としてアイディアなどを提供したり、ゲームの審判役をしたりしました。
また、日本語クラブとは別にJapanese Award Ceremony Program 2020(ニュージャージー州の日本語学習者の表彰式)でのパフォーマンスに向けてソーラン節を練習していました。「さかな、さかな、上げて!」などひとつひとつの動きに簡単な日本語をつけて振付を教えました。生徒も筋肉痛になりながらも、一生懸命大きな掛け声を出しながら踊っていました。残念ながら新型コロナウイルス感染症の影響でイベントが中止になったため、発表はできませんでしたが、いつかどこかでパフォーマンスができることを願っています。

新型コロナウイルス感染症による授業のオンライン化

オンライン授業になる前から生徒たちには学校からノートパソコンが支給されており、クラス内でもオンラインマテリアルを使うことがありました。そのため、オンラインでの授業への移行は教師側にとって比較的取り組みやすいものでした。しかし、やはり難しいと感じたのは生徒との交流が減ることでした。各クラス、週1回(30分)はGoogle meetsで対面式オンライン授業を実施し、週に3~4つの課題を生徒に与えていましたが、全体的にはオンライン授業以前に比べると学習内容と生徒と会話をする時間はかなり減りました。日本語の学習はもちろんですが、生徒ひとりひとりと話す時間が必要だと思い、個別に少人数で英語と日本語を交えて話す機会を設けました。生活や学習の悩みをざっくばらんに話せたことは生徒にとっても有意義な時間であったと思います。
また、私は新しいテクノロジーを授業で活用したいと思い、教育現場で使われるアプリなどを調べ、どのように日本語のクラスで使えるかをLTと話し合いました。アメリカはデジタルデバイスが公立高校等で支給されているように、テクノロジーを教育で使う土壌ができています。日々新しいサービスが提供されるアメリカで、そのテクノロジーをうまく利用することはこれからの私の課題でもあります。

2年目に向けて

アメリカでの生活を通じて私が気に入っていることは、人々が言葉でお互いよく褒めあうということです。これは私自身の人との接し方にも影響し、以前にも増して、ポジティブな言葉がたくさん出るようになった気がします。日本語のクラスでも生徒が「いいです」「すごいですね」などを積極的に使えるよう指導しており、この環境をこれからももっと拡大していきたいと思います。
2年目の目標は、ATの私が帰国した後にLTがひとりで使えるマテリアルを作ることです。私はあと1年でカーニー高校を去りますが、日本語プログラムはLTと共に続きます。そして、これからももっと多くの生徒が日本語を勉強し、ニュージャージーの日本語教育を盛り上げてくれること、そして日本とアメリカの懸け橋になってくれることを期待しています。どんなマテリアルが作れるか、テクノロジーをどう活かしてレッスンができるか、新しい挑戦に取り組むことが楽しみです。また、受入機関以外の活動では、オンラインでボランティアの少人数日本語レッスンやバーチャルのイベントの企画に挑戦したいと考えています。新型コロナウイルス感染症の影響でできることは限られていますが、1日1日を無駄にせず、実りのある年にしたいです。

  • 派遣先での写真1
  • 派遣先での写真2
  • 派遣先での写真3
What We Do事業内容を知る