米国若手日本語教員(J-LEAP) 9期生 総合報告書
J-LEAP9期生としての二年間

クランフォード・ハイ・スクール
横山 奈央

アシスタントティーチャーとしての業務と貢献

私がこの二年間アシスタントティーチャー(以下AT)として意識して行ってきたことは「生徒の学習意欲UP」をどのようにするかということです。二年間の大部分が新型コロナウイルス感染症拡大のためオンラインかハイブリッド型の授業(対面とオンラインを組み合わて行う授業)でした。今までとは全く異なる環境の中での学習になり、生徒のやる気を保つのが難しかったです。そこで私はリードティーチャー(以下LT)が元々使っていた教材を軸に「LTの教材のバリエーションを豊富にすること」に注力しました。具体的には新出文型を導入する際、簡単なスキットを2,3個全力で演じ生徒にその意味を考えさせたり、文型練習では既存のスライドにイラストを増やすことで文字を減らし、生徒の独創性を引き出せるようにしたり、漢字やひらがなカタカナの小テストのやり方もオンライン化に伴い、様々なエドテック(教育現場で活用するICTサービスやソフトウェア)を用いて生徒が画面上に書き込む、またはタイピングをするなど、参加しながら学習できる方法に移行しました。更に文化紹介の授業では私が一時帰国した際に、私がその月ごとのイベントを実際に体験したビデオを作成しました。「自分が知っている日本人が日本で日本の文化を紹介している」ことが、生徒のモチベーションアップに繋がりました。実際に生徒から次の動画についてたくさんのリクエストをもらい、生徒がどんな分野に興味があるのかもわかってよかったです。今回イレギュラーなことが起こる中で様々なエドテックを利用した授業づくりを学ぶことができました。これらは今後オンライン、対面に関わらず、どんな環境で教える時も役に立つと思います。

コロナ禍でのリモート授業

2020年3月から6月の学年末まではオンライン、9月からの新年度は地域の感染状況に応じてオンラインとハイブリッドで教えていました。オンラインでは基本的に学校指定のオンラインシステムに課題やビデオを投稿し、生徒は締め切りまでに各自学習、課題をするという形をとり、その後、週1回はSynchronous(リアルタイムで生徒が参加するオンライン授業)、その他の日はそれまでと同様に各自課題や宿題をするという形式でした。ハイブリッドでは生徒は週2~3日午前中に登校していました。生徒やその家族の希望により自宅からリモートで授業に参加するか、登校して対面で参加するのかを選択できるというスタイルでした。
リモート授業のメリットとしてはAsynchronous(生徒が好きな時間に授業動画や課題にアクセスして学習する方法)の場合、自分のペースで勉強できること、Synchronousも共通して自宅からリラックスして勉強できるなどですが、反対にデメリットとしてリラックスしすぎて集中できない、教師は生徒が他のことをしていても気づきにくい(カメラを強制的にオンにさせることは困難)ことや、Wi-Fiの接続環境によって、なかなか参加できない生徒や教師側に問題があると授業が完全にできないなどのトラブルがありました。円滑に進めるために同じタイミングで話さない、LTが話しているとき、私はパソコン操作や出席の確認等裏方に徹するなどの役割分担を明確にしました。またリモート授業の学習効果を高めるために、私は上記で述べたように元々対面用だった教材をPear DeckFlipgrid等を用いて、オンラインでもわかりやすく、少しでも生徒が興味を持ってくれるような楽しい教材に作り替えるよう努めました。

日米間の若者交流

クランフォード学区には2つの中学校があり、そのどちらも日本語のクラスがあります。そこで日本の文化紹介をする機会をいただきました。中学校の生徒は高校の生徒とは違い日本人と話す機会があまりない中、日本の文化紹介を楽しんでくれたこととはもちろん、私という「日本人」と接することにワクワクし、一生懸命日本語で話す子どもたちの姿がとても印象的でした。ここでは日本人と実際に会って話すという体験を提供できました。また、夏期は日本語イマージョンキャンプ「森の池」に参加させていただき、ここでも今までの人生で一度も日本人に会ったことも話したこともない子どもたちと交流することができました。更にそのキャンプで共に働いていたスタッフは私と同期二人以外は全員がアメリカ人の10代後半~30代の若い年齢層の人たちでした。研修中の模擬授業でのそのスタッフ達の反応がとても印象的でした。日本語の「あー!」や「えー!」など同じ感嘆詞でもシチュエーションによってイントネーションや言い方が変わるということをゲームとクイズを混ぜながら教えたときに「日本語の感嘆詞は知っていたけど、こういう風に使い分けるのは初めて知った」や「今までの日本語の授業で一番面白かった!」と言ってもらうことができました。日本のことを全く知らない人たちに日本のことを知ってもらえる喜びはもちろん大きいですが、このように既に日本語を長年学んできた人たちに更に日本の文化や言語を知ってもらい、もっと知りたいと思ってもらえたことがとても嬉しかったです。

この二年間で私が学んだこと

今回のコロナ禍のように予想もできないようなことが起こることがあると思います。その中で一番大切なのは「柔軟性」だとこの二年間で実感しました。派遣された当初、LTの教え方と派遣前研修やシアトルでの研修で学んだ教授法に大きなギャップを感じ、自分の中で苦しんだ時期がありました。そんな中でパンデミックが起こり、自分で全てを変えていく実力や経験もなく、自分には何ができるのだろうかと悩みました。同期や基金、ローラシアン協会、他のLTの先生等に話を聞いてもらったり、助言を頂いたりして、自分とLTにとって何をするのが一番有益で授業を効果的に楽しいものにできるかを考えた結果、私は既存の教材の軸に「肉付け」していくことがいいのではないかと考えました。「柔軟性」とは第一に環境を受け入れること、そしてそこから自分ができることを考え実行し、時には他者と協力していくことだと思います。J-LEAPでは特にLTやホストファミリーなど他者と協力していく機会が多いので、そういった点でこの「柔軟性」に長けている、またはこの能力を伸ばそうと努力している人がいいのではないかと思います。私自身、今後どのような形で日本語教育に関わっていくかは未定ですが、J-LEAPで学んだ「柔軟性」を忘れずに外国と日本を繋ぐような人材になりたいと考えています。

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