米国若手日本語教員(J-LEAP) 9期生 年間報告書
1年を振り返って

クランフォード・ハイ・スクール
横山 奈央

ニュージャージーってどの辺?

派遣先が発表されてはじめに思ったことが、「ニュージャージーってどこ?」でした。アメリカの地図を見ても小さすぎて中々見つけることができなかったことを覚えています。
ニュージャージー州はアメリカの東海岸に位置し、ニューヨーク州、ペンシルバニア州、そしてデラウェア州と隣接する州です。ニュージャージー州の面積は全米で4番目に小さいですが、アメリカの中心都市のひとつでもあるニューヨーク市と隣接していることもあり、人口は2019年時点で8,882,190人、人口密度はなんと全米で一位です!
社会的には国内でもリベラルな州と見なされています、また、ニュージャージー州の銃規制法は国内でも最も厳しいレベルで、州内21郡のうち9郡が、国内の裕福な郡100傑に入っていて、このような側面から見ても、ニュージャージー州は全米の中でも比較的、経済的にも豊かで、治安がいいことがわかります。
教育制度は小・中・高校あわせて12年間で、小学校が5年、中学校が3年、高校が4年です。日本語教育に関しては2018年の時点で中学校、高校、大学とカレッジを含めて25校に日本語のクラスがあり、その中で9校の高校が日本語を教えています。ニュージャージー州はニューヨークと隣接していることもあり、地域によっては日本人駐在員やその家族も多く住んでいて、学習者は日本人や日本文化に接する機会が比較的多いように感じます。

小さな町の歴史がある学校

クランフォード高校はマンハッタンから南に約14マイルに位置するニュージャージー州のUnion Countyにある公立高校です。クランフォードは人口が約24,000人で小さい町ですが、多くの住民がニューヨーク市で働いており、マンハッタンまで車で30分ほどで行くことができます。
クランフォード高校は閑静な住宅街の中にある歴史を感じさせる赤レンガ造りの建物で9年生から12年生までの4年制の高校です。1902年に創建され、全校生徒約1,200人、教師数100人程度で、その中で日本語を選択している生徒は2020年度で109人います。また、クランフォード学区には2つの中学校があり、そのどちらにも日本語クラスがあり、高校入学時には1年生にも関わらず日本語2や日本語3のレベルに入る生徒も少なくありません。同じ教室内に様々な学年の生徒が混在していることはクランフォード高校の日本語クラスの特徴と言えるかもしれません。
教科書は使用しておらず、リードティーチャー(以下、LT)が作ったカリキュラムに沿って、主にGoogle Slidesを用いて教えています。アシスタントティーチャー(以下、AT)の仕事としては月に一度ほどのペースで文化紹介をしたり、新出漢字の導入から小テストまでを作成したり、生徒とマンツーマンで会話する時間を設け、学んだ日本語の定着とアウトプットの向上を目指しています。

どんな日本文化を知ってる?

お弁当ワークショップ:クランフォード高校と中学校で日本のお弁当文化を紹介するワークショップを開催しました。食堂のスペースを借り、日本語を選択している生徒でなくても参加できるようにし、参加者には事前に「お弁当の歴史」や「日本で人気のキャラ弁」、「お弁当の種類」などをスライドを使ってプレゼンテーションをしました。実際に作る際は、参考に数種類のキャラ弁の作り方の紙を配ったのですが、実際にはほとんどの生徒が独創的なお弁当を作っており、様々なアイデアに感心しました。最後には「オリジナリティー」や「美しさ」などの項目に分け、投票し各部門の優勝を決め、楽しみながら日本の文化や食べ物を知ることができる機会を作ることができたと思います。

冬の日本の行事:地元の中学校の日本語クラスへ出張文化紹介に行きました。5日間の日程で、「日本のクリスマス」と「お正月」を紹介しました。また、ただ単に私がプレゼンテーションをするだけではなく、「書初め」と「年賀状作り」を実際に生徒と一緒にしました。中学校の日本語担当の先生が不在の中、一人で授業を行うことになり不安が大きかったですが、真剣に話を聞いてくれ、目をキラキラさせながら筆で漢字を書いている子どもたちを見ると、本当にやってよかったなと思いました。

パンデミック中の日本語授業

3月中旬からオンラインになりましたが、4月中旬の春休みまでは新しいことは教えず、Google Classroomに課題をアップし、それを採点して成績をつけるという方針を取ることになりました。その間はLTと分担し既習の文法復習のワークシートを作成したり、日本語で料理動画を作り、それを編集して発信し、内容理解ができたかのクイズを作ったりしていましたが、春休み以降はZoomを使用しオンライン授業が許可されたので、1週間に各クラス30分の授業の中で新しい内容を教え、残りの4日間はGoogle Classroomに課題をアップする形になりました。オンライン授業の場合、学区の方針で生徒の参加は義務ではなく、かつ不参加者のための授業の録画に生徒の音声や顔が映ることが禁止されていたため、どうしても教師が一方的に話すしかなくアウトプットの機会を作ることが難しかったです。そこで一対一で私と日本語で話す課題を作りました。生徒には各レベルに合わせたトピックを事前に与え、それに合わせてオンライン上で私と会話するという形式です。例えば、レベル3では位置詞や助数詞を学習していたので、「私の部屋紹介」というトピックで簡単なスピーチを準備させ、私はそれを聞いた後に質問をしたりしました。さらにパンデミック以前は教室でスライドを用いて行っていた文化紹介やひらがな、カタカナ、漢字の練習もオンライン授業になってからは様々なEdTech(教育とテクノロジーをかけ合わせたサービス)を活用するようにしました。

誰も経験したことのないハイブリッドスタイル

ニュージャージー州は比較的治安もよく交通も便利で、私の派遣先の町からニューヨークへは1時間以内で行けることもあり、居住するにはとても良いエリアだと感じています。人種も多様性に富んでおり、ニュージャージー州に住んでいれば、様々なバックグラウンドを持った友達ができます。それは生徒にとってもとても刺激的でいいことだと思いますが、一方で日本語や日本人に対して特別感や珍しさはあまりないため、生徒の興味や学習意欲を掻き立てるのが難しいように感じています。
また、私たち9期がアメリカに派遣されたタイミングでパンデミックや黒人差別の問題など本当に色々なことが起こりました。2年目はハイブリッドスタイルで始まる予定です。具体的には生徒は名前の順で2グループに分けられ、週2回または3回の午前中のみの登校になります。それ以外の日はオンラインで課題をします。希望者は学校には登校せず自宅からオンラインで参加も可能です。教師も生徒も誰も経験したことがないので、手探り状態ではありますが、3月にオンライン授業になったときもLTと協力し、J-LEAPの同期からたくさんの新しい知恵をもらい助け合いながら乗り越えてきたので、この2年目も状況に順応した新しい私たちのスタイルを作っていきます。方針がある程度定まったら、私のJ-LEAPプログラムでの個人的な目標であるユニット作成および授業内でのリードに力を入れたいと思っています。また、私が帰ってからもLTが一人で使えるような教材やワークシートなどの作成に引き続き注力します。現在、漢字のワークシートやクラスの導入時に行うスキット、授業内での口頭練習などのスライドを作っているので、任期が終了するまでにそれらをより充実させていければと考えています。

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