米国若手日本語教員(J-LEAP) 9期生 総合報告書
J-LEAPを通して

マローニー・インターディストリクト・マグネット・スクール
和田 理以沙

学びの成果

私の派遣校であるマローニー小学校では、各学年に4つのクラスがあるため、週に同じ授業を4回行います。そのため、はじめの2回はアシスタントティーチャー(以下、AT)として、リードティーチャー(以下、LT)のサポートを行いながら教授法を学び、後半の2回は私がLTの立場になって教えました。
また、Pre-Kindergarten(5歳以下の就学前児童。以下、Pre-K)のクラスはLTの立場で教えるだけではなく、最初の3か月間既存のユニットを使って授業を行った後、自分でユニットを作成する機会をいただきました。日本語プログラムのカリキュラムは螺旋型カリキュラム(「聞く」「話す」「読む」「書く」の順に、螺旋型階段を登るように学習を繰り返しながら、レベルを上げていくカリキュラム)と内容重視型カリキュラム(教科に関連した授業内容を通して、理解可能なインプットに触れることで、自然と外国語に興味を持ちながら言語を習得するカリキュラム)で作成されていました。また、各ユニットはACTFL(全米外国語教育協会)の5C(同協会が提唱する外国語教育の学習基準。Communication、CultureComparison、ConnectionCommunityの要素で構成)の考えをもとに作られていました。ここまで充実したユニットを作成することはプレッシャーがありましたが、日々LTに相談しながら「持続可能な開発目標(SDGs)」をテーマとしたユニットを作り上げることができました。このユニットを作成した経験はこれからもレッスンプランを考えていく上での重要な経験になったと思います。新型コロナウイルス感染症の拡大により、対面での授業を最後まで行うことはできませんでしたが、今後も自分で作ったユニットや教材が使われることは、大きな貢献になったと思います。

日本に出会う場

9月にThe Gatheringというイベントが私の派遣校の位置する町、ウォーターベリーで開催されました。このイベントは世界各国がブースを用意し、それぞれの国の文化体験や食べ物などを紹介します。LTと私は一緒に日本ブースを用意し、折り紙や着物などの日本文化を紹介しました。多くの方が私たちのブースに立ち寄り、扇子を見ながら「これはなに?」と質問をしたり、「日本が大好きで行ってみたい!」と言って駆け寄ってきてくれる方もいました。私が一番印象に残ったことは、子供の頃に広島に住んでいたという方が私たちのブースで鶴を折っていたことです。広島で毎日鶴を折っていたということをはじめ、沢山の思い出話をしてくださり、忘れられない時間となりました。
コネチカット州には日本語プログラムが少ないため日本に興味のある人が少ないと思っていましたが、私たちが発信することで興味を持った人たち、もともと日本に興味のある人たちと交流できたことはとても有意義な経験でした。そして、このイベントでは児童の家族にも日本の文化を体験してもらえる素晴らしい機会となりました。

オンラインで繋がりをもたらすために

オンライン授業や課題提出は学校の意向により行うことはできませんでしたが、学びたい児童に自由に学んでもらうための課題を作成しました。1週間の課題を学年ごとにわかりやすく掲載できるようにPadletというアプリケーションを使用しました。私はPre-Kのクラスを担当していたので、Padletにレッスンビデオを掲載しました。ビデオでは、パペットを使用して児童にビデオレターを送ってもらうよう促し、児童とオンライン上でコミュニケーションが取れるように工夫しました。そして、児童から送られてきたビデオレターにパペットがビデオで返答する形をとることで、児童は自分の発言を理解してもらえたことを実感し、とても喜んでいました。また、PearDeckというアプリケーションを使用し、色の名前の復習を行いました。オンライン上で絵を描いてもらうアクティビティーを取り入れ、正解か間違いかを確認するだけではなく、個性を評価することができたため、児童や保護者が安心して行える課題になりました。そして全校児童に向けて、週に3回、カレンダービデオという映像を作成し配信しました。手洗いの歌やマスクの作り方をカレンダービデオの中で行うことで、家族も一緒に見て楽しめる内容となりました。
いつ日本語の授業が再開できるのかがわからない状態ではありましたが、児童が次の授業を楽しみに待っていてもらえるような環境を届けることができたと思います。

1対1のコミュニケーション

日本語の授業時間は25分と短く、全校で28クラスあるので一人一人とコミュニケーションを取ったり、授業で活発ではない児童の声を授業内に聞いたりすることは難しいと感じました。そこで私は、日本語以外の科目の授業見学に行くことで、児童たちと関わる時間をできるだけ増やしました。また、昼食の時間、休み時間、アフタースクールにも参加し、児童と一緒に折り紙を折ったり、絵を描いたり自然に触れ合うことを心掛けました。児童は初め、「どうしてここにいるの?」と驚いていましたが、徐々に私が来ることを楽しみにしてくれるようになりました。私が児童に学校や家族の質問をするうちに児童から私に「日本ではどうなの?」と聞き返すようになりました。私は児童が日本語の授業時間以外にも日本に興味を抱いてくれたことが嬉しくなり、日本の身近なことについて話をしました。そして、日本とアメリカの学校の比較やルールの違いについて話していると「日本語の授業のときに勉強したよ!」と大喜びしていました。このように私が1対1でのコミュニケーションをとることで習ったことが本当に日本では当たり前だということを実感していました。私とのコミュニケーションを通して日本が身近に感じてもらえるようになったことがとても嬉しく思いました。

小さな挑戦から大きな成長

私はJ-LEAPの経験を通して、「まずは目の前にあることを全力でやってみよう!」という意気込みが何事にも大事だと思いました。アメリカでは、挑戦することに対して寛大で後押しをしてくれる印象を受け、新しい環境でも一歩を踏み出しやすい環境だと感じました。挑戦には失敗がつきものですが、私たちは常にLTに支えられているので、失敗をしてもフォローやフィードバックをしてもらい、学びながら挑戦することができます。私が派遣されて1か月目のときは、なにもわかりませんでしたが、自分に挑戦できそうなことを探しながら授業に参加していました。そして、挨拶や歌など小さなことから少しずつ挑戦しましたが、その結果、2か月目にはPre-KのクラスをLTの立場として教える機会をいただくことができました。小さなことを全力で行うことで大きな成長へと繋がったと思います。私がこのように挑戦することができたのは、1年間私を支えてくださった皆様のおかげだということを心に留め、感謝の気持ちを忘れることなく成長していきたいと思います。今後は新たな環境でカリキュラムやシラバスにかかわる挑戦をしていきたいと思います。

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