世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)中東・北アフリカの日本語教育を広くサポートしています

カイロ日本文化センター
蟻末 淳

みなさん、こんにちは。

2020年11月にエジプト・カイロ日本文化センターに赴任した日本語教育アドバイザーの蟻末です。管轄地域はエジプトを中心に22の国・地域に渡ります。残念ながらコロナ禍のために、これまで行ってきたような出張を中心とした直接の支援はできなくなりましたが、オンラインでできるだけ繋がりを作るための工夫をしています。

中東・北アフリカは世界的に見ても日本語学習者が最も少ない地域の一つです。しかし、日本語熱は負けていません! カイロ日本文化センターでは、学習者と教師双方へのサポートを積極的に行っています。

1. 中東・北アフリカ日本語ショートビデオコンテスト

コロナ禍で移動が制限される中、中東・北アフリカの魅力を知ってもらうために、中東・北アフリカ日本語ショートビデオコンテストを開催しました。「私の街」をテーマに8か国から47チーム、97名が参加。砂漠の風景や透明度の高い海、緑豊かな村、大都会や遺跡などを日本語で紹介してくれました。
https://bit.ly/2021jpshortvideomena_YOUTUBE
ぜひご覧ください! 中東・北アフリカの多様さに驚きますよ!

2. 中東・北アフリカ日本語教育シンポジウム

これまで毎年、中東・北アフリカ日本語教育セミナーがカイロで行われ、2021年で20回を迎えるはずでしたが、コロナ禍の中、対面でのセミナーは中止を余儀なくされました。その代わりにオンラインにより2021年3月に中東・北アフリカ日本語教育シンポジウムを実施しました。「中東・北アフリカにおける日本語教育を考える」のテーマの下、ビデオ視聴による非同期セッションとZoomによる同期セッションにより、オンラインの専門家による基調講演・ワークショップ、オンライン日本語教育アイデアShowcase、一般発表、中東・北アフリカの日本語教育事情・座談会が行われ、中東・北アフリカ及び日本をはじめとする世界中の国々から約250名が参加しました。
内容はアーカイブ化され、
https://bit.ly/2021jpsympomena
から視聴可能です。

3. JF×パレスチナ オンライン日本語

センター講師によるパレスチナの学習者へのオンライン授業の様子の写真
当センター講師によるパレスチナの学習者へのオンライン授業

カイロ日本文化センターと対パレスチナ日本政府代表事務所との協力により、パレスチナでの初めての日本語講座がオンラインで実施されました。JFにほんごeラーニング みなとでの自習とZoomのライブセッションを組み合わせたコースが行われ、アニメに興味を持つ大学生を中心に約90名が参加しました。担当はオンラインコースに熟達した当センターのベテランエジプト人講師。アラビア語でコミュニケーションがとれることもあり、初めてのオンライン日本語講座でも、学習者は安心して授業を受けることができました。全くの初心者も3ヶ月に渡るコースが終わると、流暢な日本語の発音で自分のことを話すことができるようになり、上達の速さには驚かされました。カイロ日本文化センターが管轄する中東・北アフリカ地域は、日本語を学習したくてもできない人たちがたくさんいます。広い地域ですが、今後ともオンライン技術を生かして少しでも日本語に触れられるようにスタッフ一同頑張っています。

4. 日本語教師養成講座

エジプトでは、日本語学習者が増加していますが、日本語教育について専門的に勉強できる機関がありません。そのため、カイロ日本文化センターでは毎年日本語教師養成講座を行っています。2020年度は教師養成講座実習をオンラインで行いました。非日本語母語話者及び日本語母語話者4名が、予習や宿題などの非同期の課題とZoomの同期の授業を組み合わせ、オンラインで募集した日本語学習者に日本語を教えました。現在当地域でもオンライン授業が一般化していますが、まさに時代の要請にあった養成講座となりました。2021年3月末からこれまでの教師養成講座の知見を元に、カイロ日本文化センターの協力の下、カイロ大学で教師養成ディプロマコースが開始しました。

5. 中東・北アフリカにおける日本のポップカルチャー

レバノンで、センターの助成のもと発行された漫画雑誌の写真
『未来へジャンプ レバノン No.1』

意外に思われるかもしれませんが、中東・北アフリカではアニメやマンガなどのポップカルチャーが人気で、日本語学習の大きな動機になっています。上記のパレスチナでも日本語学習者の多くがアニメファンで、初級者とは思えない発音の上手さには驚かされました。また、ポップカルチャーへの憧れが創作に繋がることも多いのも特徴です。例えば、レバノンでは日本の少年マンガ雑誌をモデルにした『未来へジャンプ レバノン No.1』が当センターの助成で発行されました。中東・北アフリカのクリエイターが日本語で世界に発信してくれる未来はもうそこにあります。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Cairo
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
国際交流基金カイロ日本文化センターは、エジプト及び中東・北アフリカ地域における文化交流事業の拠点として幅広い活動を展開している。日本語教育支援事業はその重要な柱の一つであり、エジプトを中心に中東及び北アフリカの近隣地域まで視野に入れた様々な支援を行っている。日本語教育アドバイザーは、国内2か所の日本語講座の運営をはじめ、エジプト及び近隣諸国の日本語教師に対する情報提供やコンサルティングなどを行う。また、セミナー等を開催し、日本語教師のスキルアップを図るとともに、地域連携の強化、相互交流の活性化にも努めている。
所在地 5th Floor, 106 Qasr Al-Aini Street, Garden City, Cairo, Egypt
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1998年
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