世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)サブサハラ・アフリカ(サハラ砂漠以南)における日本語教育拡充の可能性

ケニヤッタ大学
阿部康子

2018年度までは、ケニア派遣専門家の管轄地域はケニアを含む東アフリカだけでしたが、近年の日本語教育の普及に伴い、2019年度の派遣から管轄地域はサブサハラ・アフリカ全域に広がりました。今回は、その地域の日本語学習、日本語教育の動きについてご報告したいと思います。

第一回アフリカ日本語教育会議@エチオピア

2013年にケニア日本語教育会議が始まり、それが東アフリカ日本語教育会議になって、2018年度までに6回の会議が行われてきました。そして遂に、2019年9月にはアフリカ全土から13ヶ国(エチオピア、ケニア、タンザニア、ザンビア、モザンビーク、マダガスカル、南アフリカ、コンゴ民主共和国、カメルーン、ベナン、コートジボワール、ガーナ、エジプト)の参加を得て、第一回アフリカ日本語教育会議がエチオピアのアディスアベバで開かれました。3日間に亘る会議では、日本語教育に関する発表やワークショップのみならず各国の文化発表などもあり、参加者同士の交流も広く行われました。日本語学習者も日本語教師もまだまだ少ない中で孤軍奮闘している各国の教師たちにとっては、一年に一度とはいえ、似たような境遇で頑張っているアフリカの仲間たちと実際に会って経験や課題を共有し話し合えることは大きな励みになります。今後もこのアフリカ全域に広がった日本語教育の繋がりを大切にしていきたいと思います。第二回アフリカ日本語教育会議はケニアのナイロビで開催予定です。

第一回アフリカ日本語教育会議の写真
第一回アフリカ日本語教育会議

サブサハラ・アフリカの日本語教育

サブサハラ地域における日本語教育は、上記のアフリカ会議に参加した国の他に、セネガル、ジンバブエ、モザンビークでも行われていることが報告されています。全体としてまだ日本語教育が根付いておらず不安定な国もありますが、一方で日本語能力試験(JLPT)を実施している国が7ヶ国、日本語教師会が存在する国が4ヶ国あります。一つの例として2018年に教師会が設立されたガーナを紹介させていただくと、ガーナでは、教師会設立以前より毎年スピーチコンテストが行われており、2018年からはJLPTの実施も始まりました。報告者は2019年10月にガーナを訪問し、ガーナ日本語教師会第三回セミナーに講師として出講しました。その後はZoomを使ってオンラインで2ヶ月に一度、定期的にガーナ日本語教師会とセミナーを開いています。最近では、日本の大学生とガーナの大学生のオンライン交流も始まったそうで、ガーナの先生たちは色々とアイディアを出しながら日本語学習者を奨励し、かつ日本語教師としての学びにも貪欲に取り組んでいます。

JLPTの実施はケニア以外の国では全て2010年以降に開始しており、サブサハラ地域の日本語学習への興味と日本語教育の定着がここ10年ほどで進んでいることがよくわかります。赴任国であるケニアは、この地域で最も日本語教育の歴史が長く、日本語教師数、機関数も多い国です。ケニアにおける日本語学習、日本語教育の発展を参考にしながら、報告者個人が各国教師と密に連絡を取りながら支援を継続していくのはもちろんのこと、教師同士の交流、ネットワークを促進させながらサブサハラ地域全体の日本語教育を活性化させていくことが重要なミッションだと考えています。

ガーナ日本語教師会セミナーの様子の写真
ガーナ日本語教師会セミナーの様子

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Kenyatta University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
専門家は多岐にわたる業務を行う。国立ケニヤッタ大学では2004年から日本語の授業が開始、現在は自由選択科目の入門日本語コースと、その上の日本語副専攻コースが開講されており、長期的には主専攻コースの創設も視野に入っている。専門家は同大学における日本語の授業、現地日本語教員に対する助言の他、在ケニア日本国大使館広報文化センターにおいても各種日本語講座を担当する。ケニア日本語教師会を支援し、日本語能力試験、日本語弁論大会、日本語教育会議の運営に携わり、ケニア及びサブサハラ・アフリカ全域におけるネットワーク形成促進、各種調査等に従事する。
所在地 P.O.BOX 43844-00100 Nairobi Kenya
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
ケニヤッタ大学人文社会学部 文学・言語学・外国語学科
日本語講座の概要
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