世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)コロナ禍で広がった海外と結ぶオンライン交流学習

国際交流基金ソウル日本文化センター(嶺南地域担当)The Japan Foundation, Seoul

2020年度は新型コロナウィルスの感染拡大で、韓国の中学・高校、大学でも大混乱の幕開けとなりました。始業の日をずらして大慌てで遠隔授業の教師研修を実施し、3月中には全国一斉に導入されました。不慣れな中、教師は動画を作成・アップロードし、学習者はその動画を見て課題を提出したり、リアルタイム双方向の授業を受けたりしました。その後、ある程度コロナが収束すると分散登校が始まり、オンラインとオフラインによる授業が並行されるなど、教師も学習者もみな初めての経験の連続でした。そうしたオンライン授業の急速な普及は、教室の中と外を結ぶことを容易にし、しかも海外ともつながりやすくしてくれました。

元々、韓国の日本語学習者の多くは日本語ネイティブと直接コミュニケーションすることを望んでおり、多くの教師も学習者にそうした機会を提供したいと考えていました。そこで、オンラインによる交流学習の支援をしようと考えましたが、学校間交流学習をしようとした際に、最初に立ちはだかる大きな問題は相手校探しでした。日本に姉妹校がある学校は比較的スムーズに始められますが、そうした学校がない場合は、教師の個人的な人脈に頼るところが大きく、また、知り合いの教師がいたとしても、時間割の調整やそれぞれのニーズが一致しないと実現しません。そのため、交流学習を希望する教師のマッチングをする仕組みの必要性に気づき、「交流学習マッチングシステム」を2020年10月に立ち上げ、稼働させました。

交流学習を希望する教師同士のマッチングをする「交流学習マッチングシステム」の募集ポスターのイラスト
交流学習マッチングシステムの募集告知

この仕組みを利用すると、交流学習を希望する教師が、登録された学校の一覧や担当教師とその連絡先を含む詳細情報を見ることができ、自分の教え子と合いそうな学校の教師に直接連絡することができるようになります。当初は韓国の学校と日本の学校とを結ぶのを念頭に作ったものでしたが、日韓以外の国の日本語教師からも反響があり、2020年の秋学期の間に日本、韓国、カンボジア、ブラジル、ニューカレドニアから合計30校が登録、少なくとも5組10校のマッチングが成立しました。日本の学校には韓国語学習者のいるクラスもあって、お互いに母語を教え合うという活動も行っていましたし、動画を作成してオンラインの掲示板にアップロードし、コメントし合う、時間割の調整が不要な活動をしている学校もありました。

今後は日本語教師を目指す日本語ネイティブと日本語学習者、あるいは韓国国内の日本語学習者同士、韓国やタイ・ベトナム等の日本語学習者による日本語での交流を進めたいと思います。日本語を学び、世界とつながることで異文化に触れ、新たな価値観を学び、母国の文化についても世界中の人に紹介できるような活動が広がってくれればと期待しています。

2021年度に「交流学習マッチングシステム」に登録している日本の学校の一覧表の画像
2021年度 日本の登録校の一覧

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Seoul
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
1988年以来、在釜山日本国総領事館に日本語専門家が派遣され、嶺南地域の日本語教育を支援してきた。2005年8月より、派遣先はソウル日本文化センター、勤務地は釜山(釜山日本語教育室)という派遣形態に変更された。日本語専門家の担当業務は、当地域の中学・高等学校などの韓国人日本語教師を対象とした中等日本語教師職務研修、嶺南地域教育庁及び各中等日本語教師会への出講、学校からの依頼に応じて行う出張授業等である。
所在地 YMCA Bldg. 15F, 319 Jungang-daero, Dong-gu, Busan 48792, Korea
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名(嶺南地域担当)
国際交流基金からの派遣開始年 2005年
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