世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)「光り輝く島」へ思いを馳せて

ケラニア大学
宗像みなみ

スリランカは、南アジアに位置する小さな島国です。私は現在、日本から遠隔で業務を行っており、まだスリランカに渡航することができていません。しかし、スリランカの景色をインターネットで検索すると、美しく豊かな自然に圧倒されます。「スリランカ」という国名の意味は「光り輝く島」だとも言われていますが、いかにもと納得してしまいます。

そんな美しい島国、スリランカで日本語を学習している人の数は、約8000人です(国際交流基金2018年度海外日本語教育機関調査)。そのうちの約8割が中等教育機関に所属しています。身近にある日本企業の製品や、日本のドラマから日本に親しみを持ち、日本語を学び始めるケースが多いようです。

ケラニア大学での授業

私の配属先であるケラニア大学は、スリランカの日本語教育の中心機関として広く認知されています。2014年には、一般コースに加えて日本語専科が設立されました。日本語専科では言語学や音声学など、より専門的な内容を学びます。卒業時は日本語で、日本語教育関連分野の論文を提出しなければならず、日本語専科の学生には非常に高いレベルが求められます。

2020年度はすべての授業がオンライン化されたことにより、教員・学生ともに大きな変化を余儀なくされました。スマートフォンからしか授業にアクセスできない、電波状況が悪いなどの不便な学習環境にある学生も少なくありません。しかしそんな中でも、多くの学生が積極的に授業に参加してくれました。

パソコンのスクリーンを通してのみ学生と接するという状況は私にとっても新鮮で、不思議な感覚でした。それでも、この学生は料理が得意なのかとか、あの学生はいつも面白いところに気が付くなといったちょっとした発見が楽しく、授業期間はあっという間に過ぎていきました。

2020年最後の授業の日、小さなサプライズがありました。授業が終わろうというとき、専科2年生の学生たちが一斉にカメラをオンにし、手書きのメッセージを見せてくれたのです。いつの間に示し合わせていたのでしょうか、本当にうれしい驚きでした。各国厳しい状況の中でも、このように遠隔で学習者とつながれることに、感謝の気持ちでいっぱいです。

教師会

スリランカ日本語教師会では、毎月定例会を実施しています。例会では毎回、日本語教師のための発表が行われています。2020年末からは、活動がオンライン化しました。当初はオンラインで例会を行うことに、戸惑いや不安の声も少なくありませんでした。しかし、いざ挑戦してみると、外出のリスクがなくなること、全国各地の先生が参加しやすくなることなど、オンラインならではの便利さにも気が付きました。

また、教師会メンバーの希望者を対象に、Zoomを用いた日本語の勉強会も始まりました。月に3回、日本の最新状況や、日本語の豆知識を共有しています。

もちろん、電波状況をはじめとした不便な面もありますが、教師会は現在メンバーの安全を最重視し、遠隔でできることの可能性を探り続けています。

今後の展望

2020年度、オンライン活動の急速な普及は、スリランカにおける日本語教育に大きな変化をもたらしました。その変化は私を含めて、誰もが初めて経験するものです。多くの人々にとって辛く苦しい状況でもありますが、この環境下で何ができるかを模索することが、日本語教育のさらなる可能性につながる気がしてなりません。まだ見ぬ「光り輝く島」へ、そしてその未来へ思いを馳せて、筆を擱きたいと思います。

オンラインで、サプライズで先生に生徒からお礼の言葉が送られている様子の写真
学生からの遠隔サプライズ

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
University of Kelaniya
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ケラニア大学日本語科はスリランカの高等教育機関の中で最も長い日本語教育の歴史を持ち、中級レベル以上のカリキュラムを持つ数少ない講座の一つである。そのため、教育省の依頼で、中学、高校における日本語教育のシラバス・教科書作成などにも大学講師が参画しており、中等教育においても多大な影響力を持つ。2014年には日本語専科コース(4年制)が開講、2016年には日本学研究センターが設立された。日本語専門家は大学での講義、コース運営の支援、講師の指導、各種試験のネイティブチェックを行う。
所在地 Dalugama, Kelaniya, Sri Lanka
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
人文学部 現代語学科 日本語科
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