世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)節目の年、そして新たな挑戦

ケルン日本文化会館
吉岡千里

ドイツの「第5の季節」とも呼ばれるカーニバルで有名なケルンに降り立ってから、はや半年が過ぎました。まだわかること半分、わからないこと半分、早く慣れたいと思う反面、フレッシュな気持ちも持ち続けたいという思いもあったり…。そんな気持ちを心に秘めつつ働く職場は、大きな公園の一角にあります。デスクからは外の公園の様子がよく見え、緑あふれる公園の四季折々の表情を楽しめるという最高の職場環境です。

ケルン日本文化会館の春の写真

ケルン日本文化会館の夏の写真

ケルン日本文化会館の秋の写真

ケルン日本文化会館の冬の写真

そんな素敵な職場「ケルン日本文化会館」の2019年度キーワードは「開館50周年」と「オンライン日本語講座」です。

開館50周年

ケルン日本文化会館は、2019年9月で開館から半世紀を迎えます。ドイツ語圏における国際交流基金の拠点として、開館以来、文化芸術、日本語教育、日本研究を3つの柱としてさまざま事業を行ってきています。日本語教育の一端を担う日本語講座は、開館の翌年に開講されたので、日本語講座も来年が開講50周年という節目の年になります。

時代の流れとともに日本語講座の学習者を見守ってきた会館ですが、ここ10数年の講座の特徴と言えるのが「多様性」です。(詳しくは、2008, 2018)。そして、文化背景や価値観の異なる学習者が、対話や協働の中で日本語を学び、使い、楽しみ、ともに喜び、つながれる場を提供したいという思いから生まれたのが、学習者と日本人ボランティアが集う「日本語しゃべりーれん」であり、文化体験講座です(詳しくは、201220142017など)。

オンライン日本語講座

2019年、ケルン日本文化会館の日本語講座に新たに加わるのは、「オンライン」の日本語講座です。国際交流基金が開発、運用している日本語学習のためのプラットフォーム「JFにほんご eラーニング みなと」(以下、「みなと」)を使って実施運営しています。受講者にはオンライン上の日本語コースを進めてもらいつつ、教師がときどき作文の添削をしたり、オンラインでミニレッスンをしたりします。

今までにも、何度か講座改革が行われましたが(詳しくは、2004,2009)、今回は地理的、時間的制約を越えた講座の実施にチャレンジです。日本語を勉強したいけど近くに勉強できるところがない、会館は通うには遠いといった人たちなど、より多くの人に日本・日本文化・日本語を知ってもらえる機会になれば嬉しいです。

古きをたずね新しきを知る、いわゆる「温故知新」の精神。ドイツに来てから、いろいろな場面で感じることの一つです。先人の行ってきたことを受け継ぎ、さらに発展させ、これから先の未来を目指す。ドイツと日本の古いものと新しいものが織りなす今があるのがケルン日本文化会館です。

ドイツにお越しの際は、ケルンまで足を延ばしてみませんか。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Cultural Institute in Cologne (The Japan Foundation)
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ケルン日本文化会館は1969年開館。ドイツ語圏における国際交流基金の拠点として、文化芸術交流、海外における日本語教育、日本研究・知的交流を3つの柱として様々な事業を実施している。
日本語講座は1970年に開講され、一般社会人対象の日本語講座を開講しており、ゼロ初級から上級まで年間のべ約500名が日本語を学んでいる。通常の日本語コースだけでなく、文化体験コース、テーマ別コース、2019年からはオンライン講座も開講し、様々なニーズに対応している。日本語講座運営の他に、研修会の企画・開催を通した教師支援、日本語能力試験などによる日本語学習者の支援、日本語教育に関する情報収集と提供なども行っている。
所在地
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1985年
What We Do事業内容を知る