世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)講師の教授能力向上のために

カンボジア日本人材開発センター
佐久間司郎

カンボジア日本人材開発センター(以下CJCC)は、「日本語」「日本文化」「ビジネス」の3本の柱を中心に運営される教育青年スポーツ省傘下の独立運営組織です。国際交流基金はここで2004年から日本語関連の活動サポートを始め、2014年からは日本語講座の運営を支援してきました。

しかし、求められるのは講座の運営だけではありません。カンボジアにおける日本語教育全体の活性化、底上げについても考えていかなければなりません。今回は、微力ながらも私たちがおこなっているセミナーや教師研修会についてご紹介します。

日本語教育セミナー

CJCCでは毎年一度、日本語教育セミナーを開催しています。海外から講師の先生を招聘し、日本語教育に関係のあるさまざまな主題の講義をおこなっています。

日本語教育セミナーの様子の写真
日本語教育セミナーの様子

2020年度は「介護の日本語」と題したセミナーをおこないました。講師の先生のお話ももちろんありますが、カンボジアで介護の日本語教育をおこなっている関係機関の方々にも登壇を依頼し、さまざまな知見を共有していただきました。一日がかりのセミナーでしたが、最新の動向・教育方法などについても知ることができ、地域の関係者同士の交流も深まるという非常に意義深いセミナーになりました。

専門家は完全に裏方に回りましたが、数ヶ月前からさまざまな調整や打ち合わせに奔走しました。当日は全体の雰囲気の調整や参加者との交流促進に注力し、セミナー後はへとへとになり寝込んでしまうほどでした。

日本語教師研修会

毎年3回ほど、カンボジアの日本語教育関係者を対象に研修会をおこなっています。研修会は専門家主導でおこなわれるのですが、2020年度には他の機関に所属する日本語教師の方々に講義を依頼し、専門家はファシリテーターに徹するという試みをおこないました。

いつも同じ専門家が講義をしていると、やはり色が出てきてしまいますし、広がりのある日本語教育のさまざまなニーズに応えるのは難しいと判断したからです。

結果として、幾人かの方に登壇していただいたことで話題に広がりも出て、学びのある研修会を開くことができたと思っています。

また、2020年度に挑戦したのは研修会のオンライン配信です。良い研修会が開かれても、「プノンペンまで行くのは大変」「子どもの世話がある」などの理由で参加したくてもできない人もいます。一人でも多くの人に参加してもらうため、オンラインで研修会の様子を中継しました。

なかなか難しい試みでしたが、CJCCのスタッフの方々の尽力のおかげで2回の配信を無事終えることができました。参加してくださった方からも感謝の声をいただき、この試みは今後も続けていきたいと思いました。

日本語教師研修会の様子の写真
日本語教師研修会の様子

以上、CJCCでおこなった「日本語教育セミナー」「日本語教師研修会」についてご報告しました。以前は専門家というと「知識を教授する」役割が大きかったと思いますが、簡単にさまざまな知見を得られるようになった今、求められているのは全体を調整する能力ではないかと思います。

大事なことは自分が中心になることではなく、いかにしてみんなで全体の底上げをはかっていくかです。カンボジアには能力の高い教師があふれています。これからも周りを活かし、日本語教育全体の活性化をはかるような催しをおこなっていきたいと思います。

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