世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)オンライン化の先に

カンボジア日本人材開発センター
佐久間司郎

カンボジア日本人材開発センター(以下CJCC)は、「日本語」「日本文化」「ビジネス」の3本の柱を中心に運営される、カンボジア教育青年スポーツ省傘下の独立した組織です。

カンボジアにおける日本語教育の中核機関として、日本語コースの運営やセミナーの開催などをはじめとする各種イベントをおこなってきましたが、2020年度は少し変化がありました。Covid19の影響を受け、ほぼすべての事業をオンラインでおこなったのです。

オンライン化の取り組み

まずは日本語の授業です。対面授業が全面的に禁止になったこともあり、すべての授業をオンラインでおこないました。当初は学習者の側に戸惑いも見られましたが、講師陣の入念な準備と研究の成果もあり、終わってみれば普段の対面授業の時よりも出席率・修了率が上がるという良い結果を得ることができました。日本語専門家(以下、専門家)はオンラインの仕組みづくりの一端を担いました。一回の授業をオンラインに転換するだけでも一苦労ですが、事務手続きやコース全体のオンライン化はなかなか骨の折れる作業です。

※この取り組みは海外日本語教育学会のYouTubeページでご覧になることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=CKrNKquQAP4&t=54s

また、日本語教育従事者向けの研修会、セミナーもすべてオンラインでおこないました。研修会では、時勢に合わせてオンラインツールの使い方の習得を主題に据えました。

4月 「Zoomを使って授業ができるようになろう」
6月 「Googleフォームでテストをつくろう」
11月「Googleスライドで教材をつくろう」

専門家はこのコンテンツ作成から、運営までをほぼ一人でこなします。しかし6月の研修会では他国の専門家から知恵を拝借しました。そういった横のつながりも自分の業務を助けることにつながります。

日本語教師研修会で使用したプラットフォームの画像
研修会で使用したプラットフォームの様子

日本語教育普及・活性化のためのイベントも全部オンラインでおこないました。ハイライトは2月のKIZUNAフェスティバル(カンボジアにおける最大の日本関連イベント)です。日本語チームとしては日本語教育機関対抗の「日本カンボジアクイズ大会」、CJCCで日本語を学ぶ人を対象にした学習促進イベント「まるごとマッチ」を開催しました。Facebookページにおいて配信がなされ、共に数千回の再生数を記録しました。

これらのイベントはCJCCの講師陣が主に担当をしたのですが、要所要所で運営にアドバイスをするのも専門家の仕事です。これらの様子は以下のページでご覧になることができます。

「日本カンボジアクイズ大会」Facebook配信の様子の写真
クイズ大会Facebook配信の様子

日本カンボジアクイズ大会
https://fb.watch/4PHlUeY6VW/

まるごとマッチ
https://fb.watch/4PHoULRZVk/

オンライン化の先に

というわけで、2020年度の事業はほとんどすべてオンラインでおこないました。今まで対面でやっていたことをオンライン化するのはなかなか大変な作業でしたが、一つだけラッキーだったことがあります。それは私たちはその前年度までの間に少しずつ事業のオンライン化を進めていたことです。

例えば、日本語コースは対面だけで提供していましたが、付随するテストの一部はすでにオンライン化していました。またセミナーも対面での開催が主でしたが、試験的にインターネット配信などもおこなっていました。つまり、それまでに撒いていたオンライン化という種が今回のCovid19の状況でうまく回収されたのです。その教訓もあり、私たちは期せずして訪れたこの状況からも、今後少しでも多くのものを回収しようと考えています。

2020年度は「オンラインで日本語授業を提供せざるを得ない」という状況でしたが、後々は「対面でもオンラインでも日本語授業を提供できる」という学習選択肢の増加につなげていこうと思っています。2020年度に対面授業ができなかったのは一見不幸なことでしたが、長い目で見れば、この年の経験がこれからのカンボジアの日本語教育の幅を広げることへの種撒きになるのではないかと思われます。

門家としては微力ながらその結実のための一助にでもなれれば、という気持ちで毎日業務にあたっています。

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