世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)『いろどり』クメール語版が公開されました

王立プノンペン大学
松田朋子

今回の派遣より、王立プノンペン大学派遣の日本語専門家は、「外国人材日本語事業」関連の業務を兼任することになりました。主な業務内容は、「特定技能1号」で来日を希望するカンボジア人が、日本での生活・就労に必要な日本語を円滑かつ効率的に習得できる日本語学習環境の整備を行うことです。そのため、王立プノンペン大学での業務のほかに国際交流基金の新しい教科書である『いろどり 生活の日本語』や国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)の普及のための広報活動を行いました。

『いろどり 生活の日本語』クメール語版が完成

国際交流基金が新しく作った教科書『いろどり 生活日本語(以下、いろどり)』を知っていますか。『まるごと』との大きな違いは、これから日本語で働いたり生活をしたりする人のために作られた教科書という点です。『いろどり』の最大の特徴は、すべて無料でダウンロードができるというところです。また、音声教材が豊富なので、インターネットさえあれば、生活に必要な日本語をたくさん聞くことができます。アジアセンタープノンペン連絡事務所では、『いろどり』が公開されてからすぐにクメール語翻訳に取りかかりました。そのおかげで、入門・初級1,2をすべて2020年度中に公開することができました。また、多くの人々の希望に応え、『いろどり』の製本化も行いました。その結果、たくさんのカンボジアの人に『いろどり』を知ってもらうことができました。

ゆるキャラ「イロオニ」の誕生

『いろどり』をもっと身近に感じてもらいたい!という思いから、3人の鬼のゆるキャラを作りました。3人合わせて「イロオニ」と呼んでいます。『いろどり』の文字の色は、緑、赤、青、むらさきです。日本の鬼は赤と青ですが、カンボジアの鬼は緑なのです。そして、むらさきは国際交流基金のテーマカラーです。『いろどり』をアピールするのに、ぴったりだと思いませんか?

「イロオニ」たちには様々な場面で活躍してもらっていますが、特に大活躍してくれているのが、定期的にFB上で公開しているマンガです。可愛いイロオニたちが、日本の生活TIPSをクメール語で教えてくれます。このマンガはこれからもどんどん公開していく予定です。

『いろどり』という教材のイメージキャラ「イロオニ」の画像
『いろどり』のゆるキャラ「イロオニ」

『いろどり』スキット制作

カンボジアでも若者の多くはYouTubeやアプリなどを使って日本語を勉強しています。そんな彼らに少しでも役に立つ教材を作りたいと思い、『いろどり』のスキットを制作しました。スキットとは、寸劇とも言いますが、ドラマを見るような形で語学を学ぶことができるものです。スキット撮影に参加してくれた役者は、王立プノンペン大学の学生や国際交流基金の関係者です。役者経験はゼロですが、みんな一生懸命セリフを覚えて、役になりきって演じてくれました。このスキットが、多くの日本語学習者の役に立つことを願っています。

『いろどり』スキットに関する撮影の風景の写真
『いろどり』スキット撮影風景

王立プノンペン大学での初めてのオンライン授業の実施

2020年は世界中の大学にとって大変な1年となりましたが、王立プノンペン大学も2020年の3月から閉鎖になり、授業は1年間ほとんどオンラインで行われました。教師にとっても学生にとってもオンライン授業は初めてのことです。そのため、最初はお互いに手探り状態で、バタバタあたふたしながらのスタートとなりました。しかし、学生はとてもたくましく、あっという間にオンライン授業に慣れたようです。ただ、困ったのは、みんなカメラをOFFにしてしまうので反応がわかりにくいことです。そして、大雨が降ると、インターネット回線が不安定になり、時には教師である私もインターネットが切れて、オンラインミーティングから退出してしまうことです。また、以前簡単なアンケートをとってみたところ、ほとんどの学生がスマホで授業を受けていることがわかりました。カンボジアではまだまだPCの所持率は高くはないようです。「小さなスマホの画面でも無理なく授業に参加できること」を念頭に授業を組み立てる必要があると改めて感じました。オンライン授業はまだまだ続きそうですが、できることから着実に進めていきたいと思っています。

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