世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)チームが一丸となって行ったオンライン支援

ジャカルタ日本文化センター(中部ジャワ・ジョグジャカルタ特別州)
村上奈未

インドネシア中部ジャワ州とジョグジャカルタ特別州(以下、ジョグジャ)の日本語専門家(以下、専門家)として支援を行なっています。2020年は世界が大きく変わり、現場の日本語教師や専門家の支援も変化が求められた1年でした。私自身も残念ながら現地で活動ができず、日本からオンラインでの支援になりました。今回はそのような中でも日本語を学ぶ学習者に可能な限り日本語学習の成果の場を作ろうと、チームが一丸となって行ったプロジェクトを紹介したいと思います。

オンラインで文化祭?!

中部ジャワ州とジョグジャの日本語教師会が主催する高校文化祭が2021年1月にオンラインで開催されました。例年は学校内で文化祭が行われていましたが、2021年はオンラインで行うことに決め、教師会の先生たちが力を合わせて準備を行いました。この文化祭は高校生が日頃の日本語学習の成果や自分の持っているスキルを披露する場となっています。今回はマンガ・ビデオ・年賀状コンテストとプレゼンテーション大会の4つのカテゴリーで高校生に参加してもらうことにしました。各コンテストではテーマがあり、例えばビデオコンテストでは「家の活動」というテーマで日本語力、創造性(知識を応用して新しい価値を生み出す力)、メッセージ性、ビデオの編集スキルが審査されます。文化祭が開催されたのは2021年1月ですが、開催の何ヶ月も前から何度もオンライン会議を重ね、文化祭の構成、コンテストの要項作り、審査員の選定、当日の役割分担など決めていきます。また当日は日本語パートナーズOG(https://asiawa.jpf.go.jp/partners/)をゲストに呼び、日本文化紹介を行ってもらいました。これは一人の先生から「文化祭ですから日本文化紹介もしたいです」という意見から決定しました。オンラインの開催であっても妥協せずに、できる限りのことをするという先生たちの強い意志だったようにも思います。文化祭当日は参加した高校生から日本文化に関する質問が飛び交い、このセッションは大成功でした。

これまで誰も経験したことのない状況の中で準備を行い、開催したオンライン文化祭は、この先も記憶に残るイベントになったと感じています。

教師会会長のYuni先生が司会をしている様子の写真
教師会会長のYuni先生が司会をしている様子

第1回全国プレゼンテーション大会の開催

ジャカルタ日本文化センター(以下、JFJA)では日本語学習奨励事業として従来行っていた弁論大会を改めプレゼンテーション大会を2020年度から実施することになりました。全国大会では地域予選を勝ち抜いた14名の高校生がテーマに基づいた発表を行いました。2020年のテーマは「夢の学校」。これはCOVID-19の影響により大きく変化した学校や学習のあり方について高校生に考えてもらい、改めて学校にどんな意味があるのか、自分が考える理想の学校をテーマに決定しました。

今回は初めてのオンライン開催ということでJFJAチーム一丸となってどんなトラブルにも対応できるように入念にリハーサルを行い大会運営に挑みました。大会ではインターネット環境を考慮して、事前に収録した発表ビデオを流し、その後ライブで質疑応答をするという方法で行いました。さらに、多くの人に高校生の活躍を見てほしいということで大会の様子はYouTubeで配信されました(https://www.youtube.com/watch?v=u38NDqj0ZlA)。プレゼンテーションではうまく発表することではなく、目の前の人に「伝える」ことが重要になります。オンラインであっても、参加した高校生が一生懸命に「伝える」姿は印象的でした。大会に参加した経験を生かし、これからも日本語学習に励んでほしいと思います。

プレゼンテーション大会のトロフィーの画像
大会のトロフィー

今後に向けて

今回のレポートではオンライン支援を中心に紹介しました。オンラインではどんなことが起きるのか予想できないことも少なくありません。そんな時こそコミュニケーションをよく取ることやチームワークを大切にすることが重要になってくるのだと思います。今後インドネシアの教育現場では対面授業に戻る学校やオンライン授業を継続する学校、または違う形式で授業をする学校など多様な教育現場が生まれてくると思います。教育現場の変化に対応できるよう私もチームと協力しながら支援に取り組んでいきたいと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Jakarta
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ジャカルタ日本文化センター派遣の日本語専門家として中部ジャワ州およびジョグジャカルタ特別州の中等教育を担当。COVID-19の影響によりオンライン支援に切り替え、次の業務を主に行っている。(1)高校日本語教師会の活動支援、(2)現地日本語教員への日本語・教授力向上を目的としたワークショップの実施、(3)担当地域にある大学への支援(4)ジャカルタ日本文化センターが実施する事業への協力
所在地 Semarang, Indonesia
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2008年
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