世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)ひろがるラオスの日本語教育

ラオス国立大学
小松原 奈保

ラオスは東南アジア内陸に位置し、タイ、ミャンマー、中国、ベトナム、カンボジアと国境を接しています。国土面積は日本の本州より少し大きいぐらいですが、人口は約700万人しかいません。そのためか、首都であるビエンチャンでさえ、町は静かでのんびりした時間が流れています。ここに住む人は穏やかで、車が道を譲り合う光景を目にすることも多いです。

ほかの東南アジアの国と比べ、ラオスの日本語学習者の数はまだまだ少ないですが、近年、その数は増加傾向にあります。国際交流基金の海外日本語教育機関調査によるとラオスの日本語学習者数は2015年に1,046名でしたが、2018年には1,995名にまで増えています。ここでは、筆者が支援する日本語教育機関をご紹介します。

1. ラオス国立大学

ラオス国立大学はラオスで初めて日本語教育を導入した公立の日本語教育機関です。2020-2021年度は入学生が例年の約2倍である74名もいたため、初めて1学年2クラス制を導入しました。また、2019年に作られた新カリキュラムが2020年9月から適用され、日本語教育の質も向上しています。2021年3月に行われた第18回ラオス日本語スピーチ大会では、ラオス国立大学の学生が3分スピーチ部門の1位、2位、3位すべてに入賞を果たすなど、ここで学ぶ学習者は着実に実力をつけています。学習者が増加しても、常勤教師の数は増えないため、1人1人の教師がたくさんの授業を担当していますが、忙しくも充実した毎日を過ごしています。

第18回ラオス日本語スピーチ大会 3分スピーチ部門入賞者3名の写真
第18回ラオス日本語スピーチ大会 3分スピーチ部門入賞者

2. サワンナケート大学

サワンナケート大学は2017 年に日本語学科を開設しました。日本語を主専攻として学べるラオスで2つ目の大学で、2021年には初の卒業生が出る予定です。
こちらも学年が進むにつれて学習者数が増えており、若い教師が中心となって彼らを育てています。筆者は年に3回ほどカリキュラムシラバスや授業のアドバイスをしたり、勉強会を実施したりするためにサワンナケート大学を訪問します。初めて大学を訪問したこの日の体感温度は40℃ぐらい。扇風機が回る教室で、暑さに負けず楽しく日本語を学んでいました。日本語学科初の卒業生は、学んだ日本語を生かしてどんな進路に進むのか、今からその活躍が楽しみです。

サワンナケート大学の授業風景の写真
サワンナケート大学の授業風景

3. 中等教育における日本語教育

ラオスでは2015年から中等教育に日本語が導入されました。現在は、首都ビエンチャンにある4つの学校で日本語が学べます。2020-2021年度は日本の高校にあたるM5(中等教育5年生)まで学年が進んでいます。これからも学年が進むごとに学習者数が増え、地方都市の中等学校で日本語教育が展開されるようになると、さらに日本語を学ぶ中高生は増加するでしょう。その礎を築くために、高校の教科書作成や教師研修などの支援を行っています。

このように、高等教育段階も、中等教育段階も日本語教育が広がりを見せつつあるラオス。今の穏やかでのんびりしたラオスの良さを残しながら、ラオスのペースで少しずつ、でも、確実に日本語教育が発展できるよう支援したいと思っています。

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