世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)地方でも日本語頑張っています!(4)

バリアブンタウ大学
笹村 はるか

ベトナム南部のバリアブンタウ大学での活動も最後の1年となりました。

大学内での日本語学習の広がり

2016年末にバリアブンタウ大学に着任した時、学内で日本語を学習していたのは日本語専攻の学生と、第二外国語として学ぶ英語学科の学生たちだけでした。その後、英語学科以外の学生も日本語が選択できるようになり、理系の学科からも日本語を選択する学生が出てきました。そして現在、不定期ですがホテル学科の学生たち向けの日本語コースも開かれるようになりました。ベトナムの日本語学習者は増加傾向にありますが、この地方の大学にいるだけでも日本語の広がりが実感できます。

学内での広がりの背景には日本でのインターンシッププログラムがあります。ここ3年ほどの間に、60名以上の学生が半年から1年のインターンシップに参加し、日本のホテルで働きながら様々な体験をしてベトナムに戻ってきています。2017年から日本語専攻の学生たちが参加し始め、2019年にはホテル学科向けのプログラムも始まり、それに合わせホテル学科学生向け日本語コースも開講となりました。

日本側からすると学生たちは必要な「マンパワー」なのだと思います。しかし学生たちにとっては、マンパワーとして働くだけでなく、学生時代の貴重な時間を使って日本で暮らし、日本の働き方や日本人の生活習慣を知り、そして教科書にはない生きた日本語を身に付け使う有益な体験となります。

インターンシップへの参加が大学での日本語学習のゴールとなるのではなく、学生たちにはインターンシップを終えたその先をぜひ考えてほしいと思うとともに、考えてもらうきっかけ作りを大学側もしていかなければなりません。インターンシップを終えて戻ってきた学生たちが次のステップとしてバリアブンタウで、それぞれの故郷で、または日本で、日本語を生かして活躍し続けてくれたら、後輩たちにはいい刺激になり、インターンシップが本当に学生たちにとって意味のあるものとなるでしょう。

ベトナム人教師の頑張り

上記のように大学では日本語専攻の授業、第二外国語の授業、ホテル学科の授業と3つのコースがあり、ベトナム人教師たちが分担してこの日本語の広がりを支えています。ベトナム人教師たちは授業も多く、学生たちのケアや学校行事への参加等様々な業務がある中、日本語力アップや授業改善のために2017年から週に1度の勉強会を行っています。できないときは中断する、無理してまで参加しない、「参加する人にとってストレスにならないように」をモットーに続けてきました。2019年度からは初級終了後の授業で使用できる教材作成に取りかかり、作成したものを現在ベトナム人教師が実際に授業で使い始めています。

先生も勉強会をやっています!の写真
先生も勉強会をやっています!

教材作成はベトナム人教師自身にとっては復習ともなり、またすぐに授業で使えることもあるため、続けることができています。週に1度ですが日本語を教える教師たちが集い、情報交換や雑談もできる勉強会の場はお互いの関係構築にも大きく役立っています。

日本語事務室は学生の溜り場!の写真
日本語事務室は学生の溜り場!

学生に対してもベトナム人教師に対しても「場を作ること」「きっかけを作ること」を意識して活動してきました。学生が日本語を使う場、学生が日本語で発信する場、教師が勉強する場、教師同士がつながる場、いくつかの場は作れたかなと思います。地方ということもあるためか、学生も教師も「おとなしい」印象のあるバリアブンタウ大学ですが、場やきっかけさえあれば、あとはベトナム人教師と学生たちで形にしてくれる大学です。これまで作ってきた場を今後もバリアブンタウ大学に合わせながら改善、継続し、新たな日本語の広がりにも対応していければと思います。

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