世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)オンラインでできることを試行錯誤中

カザフスタン日本人材開発センター・ヌルスルタン分室
齊藤智子

オンラインでコース続行!!!

新型コロナウイルス感染症の影響で、カザフスタンでも2020年3月から教育機関はオンラインで行われるようになった。カザフスタン日本人材開発センター(以下、KJC)もオンラインで『まるごと』講座を継続した

2021年は、文字コース1クラス、春コース(2021年2月~6月)9レベル16クラスが開講した。オンラインでは、南部の旧首都アルマティからでも、現首都ヌルスルタンからでも、また、地方都市からでも参加できるので、今まで通学できなかった学習者も参加できる。リモートワークで実家に戻り、そこから参加している受講者もいる。今後、日本学習の機会が増えて、遠隔地からの参加がもっと増えていくことが期待される。また、対面授業形式にもどった後も、遠隔地教育のためのオンライン講座を継続したい。

以上のようなことは、世界中の日本語教師が直面している問題であり、今後グローバルな視野で対応していくべきだと考える。世界中の日本語学習者が、コースデザイン、学習方法、学習目的が明確なKJCで実施しているような講座をどこからでも受けられるようにするには、もっと国際間で交流し、情報交換することが必要になるだろう。

「ビジターセッション」という交流会イベントについて

KJCでは、コースの中間テスト後、日本人をお呼びして、学習者からの学習発表、日本人との会話を楽しむイベントを設けている。カザフスタン日本商工会、日本人会、大使館、知人に協力を依頼している。2021 年3月から5月にかけて12回、日本人30人ほどの協力を得てオンラインで開催される予定である。

途中経過であるが、ご協力いただいた日本人の方々の感想を紹介したい。

「グループに分かれてお話した受講者の皆さんは、日本語を勉強し始めて半年から1年ぐらいの人たちでしたが皆すごいですね。「話したい!」という気持ちが溢れんばかりでした。」
「私は習っていない言い回しや言葉を使ったと思いますが、こちらも言い方を変える勉強になりますし、学習者の方も「伝えたい!」という気持ちになって、その後の勉強に繋がると思うんですよね。」
「どうやって会話を引き出すかを考え、学生が話しやすいポイントがどこなのかを探りながらのレッスンはとても勉強になりました。みなさん語学が堪能で、楽しみながら学習する方法を知っているような印象がありました。私自身学ぶ事が多かったです。」

このように、学習者の視点に立って対応してくださり、支援してくださっている。

また、担当講師からのお礼状も紹介したい。
「お忙しい中いらっしゃってくださりありがとうございました。学生が言っている通りに非常に感謝の気持ちを伝えたいのです。皆様とテクノロジーのおかげで、学生も私もこんな大変な時期にネイティブスピーカーの話を聞くことができて、話す能力を確かめる機会をいただきました。もしかすると、学生は話すのが少し難しかったかもしれませんが、一所懸命頑張っていましたから、このようなイベントで段々上手くなると思っております。皆様、お時間を割いていただき深くお礼申し上げます。」

学習者からも、貴重な体験だった、楽しかったという感想が多い。今後も続けていきたい。

イベントへのお礼状に添えられた受講生作成のイラスト
お礼状に添えられた受講生作成のイラスト

中級を教えるための研修

アルマティ、ヌルスルタンの常勤講師と非常勤講師でA1,2(初級)レベルのコースを数回繰り返し担当した講師を対象に中級の教え方の研修を計画している。中級のレベルを理解し、模擬授業、実際に学習者を相手に教える実習を通して、次のコースではA2/B1(初中級)以上を担当できることを目標としている。また、講師同士で悩みや問題点を話し合うことで、今後も仲間として互いに助け合っていく存在になることも大きい目標である。

「人の夢を叶えるために働くのは光栄です」これは、その講師の一人が言ったことだが、講師全員に共通する思いだと思う。自信を持ってキャリアを積み重ねていく手伝いができるよう努力したい。

課題

現状では、一つのクラスの受講者の年齢が10代から50代までと幅が広いクラスもある。ある程度まとまった年齢層でクラス編成ができると講師の負担も減ると考える。さらに、子供(12歳未満)が楽しく、ゲーム・歌などを通し学べるコースがあるといいのではないかと考える。

また、初級から中級へ進むにつれ学習をやめてしまう人が多くなることが問題としてあげられる。初中級のあたりで、ゆっくり進むカリキュラムのクラスが作れたら、気長に学習していきたいと考える人が学習を続けるのではないかと思う。

『まるごと』コースのサポートコースとして「漢字コース」「会話コース」「日本文化コース」などがあれば、一層受講者の選択肢が広がり、日本語学習に取り組みやすいだろう。

コースを増設するためには準備に6か月から1年はかかると思うが、是非可能性を探りたい課題である。  

日本語に親しめるインスタグラム紹介

最後に、こうした課題を考えるうえでも参考になるインスタグラムを紹介したい。KJCの非常勤講師が作成したもので、日本の伝統行事、流行語(バズる、別腹、ぴえん)、漢字のコーナーがあり、楽しみながら、日本に触れることができる(https://instagram.com/dinchansensei?igshid=kuaoca99bbti)。ぜひ訪問していただきたい。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Kazakhstan-Japan Center for Human Development, Nur-Sultan
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
国際協力機構(JICA)とカザフスタン政府との協定により設立された機関で、日本語コース、相互理解の事業を行っている。2011年10月から、日本語コースはJF講座となり、2012年の2月から、アルマティ本室でJF日本語教育スタンダード準拠の日本語教育が始まる。同年9月からは首都ヌルスルタンのアスタナ分室(2019年3月20日よりヌルスルタン分室)でもJF講座が始まる。日本語専門家は、JF講座をはじめカザフスタンの日本語教育支援を行う。『まるごと 日本のことばと文化』講座の授業を担当するとともに、日本語教師支援、日本語学習支援、学習者増のためのイベント開催などを主な目的とした活動をしている。
所在地 8, Korgalzhyn ave., Nursultan, Rep. of Kazakhstan
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2019年
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