世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)未来につながるオンライン

ブカレスト大学
深澤 香

2020年度は新型コロナウイルスの影響で完全にオンライン業務に切り替わり、ルーマニアに派遣される日本語専門家(以下、専門家)の受入機関であるブカレスト大学でもオンライン授業が1年以上続いています。オンライン授業の準備は大変ですし、教室授業や地方出張ができた頃を懐かしく思うこともあります。しかし、オンライン化によって新たな気づきが得られたことも事実です。

教師養成の一助に…

学年によって多少異なりますが、ブカレスト大学で私が主に担当しているのは学部生の会話授業です。普段は Zoomのブレイクアウトルーム機能を使いながら学生同士のインターアクションの機会を維持していますが、授業外で作った発表や会話を録画提出する課題を出すこともあります。ある程度使用ツールを限定し、パターン化することで学生側も新しいツールに慣れていったようです。日本語能力だけでなく、 ICTスキルについても一年前できなかったことが今はできる!ということに自信をもってもらいたいと思います。

学生の発表の様子の写真
学生の発表の様子

また、将来日本語の先生になりたいと考えている学生もいます。授業のオンライン化は現役教師だけでなく、そうした学生たちにとっても新しい経験となっています。私自身は大学の教職課程の授業に関わっていませんが、ある時から ICTのよさを生かした授業実践を心がけることが未来の教師を養成することにもつながると意識するようになりました。また、将来教職につかなくても、オンライン授業を通して身につける ICTスキルはこれからの時代を生きる学生にとってますます重要になるのではないでしょうか。

「100年後の日本とルーマニアの関係」

2019年度はコロナの影響で中止となった日本語プレゼンテーションコンテスト(以下、プレゼンコンテスト)ですが、2020年度は初めてオンラインで開催されました。プレゼンコンテストはルーマニア日本語教師会と日本大使館の共催であり、専門家の役割は運営のお手伝いです。各国のオンラインスピーチコンテストなどを参考にしながら、ルーマニアにあったやり方、そして、実行可能な方法について関係者らと話し合いを重ね、模索しました。折しも2021年はルーマニアと日本の外交樹立100周年でもあることから、A部門「ルーマニアで見つけた日本」、B部門「100年後の日本とルーマニアの関係」というテーマになりました。出場者にとっては自分と日本とのかかわりを見つめ、さらに自分自身や両国の未来を考える機会になったのではないかと思います。

運営に携わった者としては、オンライン開催になったことでブカレスト在住者以外の参加が可能となり、例年の約2倍である36名の応募があったことは嬉しい悲鳴でした。(残念ながら出場者数の定員が決められているので予備審査を行って本選出場者を20名にしぼりました。)また、これは2019年度から予定していたことですが、ルーマニアには独習者も一定数いることが見込まれることから個人で応募できるようにしたことも応募者の増加につながったのかもしれません。後日、コンテストの結果に関わらず出場者のみなさんから今回の開催に感謝しているといったメッセージが複数届いていることを代表の先生が教えてくださいましたが、プレゼンコンテストへの参加が学習者の目標となり、文字通り学習者奨励の活動になっていたとしたら、これ以上の喜びはありません。

今後ルーマニアの教育現場がどのようになるのかわかりませんが、対面授業や会場開催に戻ったとしても、オンラインで経験したことを生かしていってほしいと思います。

ルーマニアに植えられた桜の写真
「ルーマニアで見つけた日本」

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
University of Bucharest
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ブカレスト大学の日本語専攻は、ルーマニア国内の日本語教育、日本文学研究の中心であり、日本語だけでなく日本文学、日本文化について幅広い知識を身につけるための教育が行われている。専門家は日本語専攻での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師へのアドバイス等を行う。
所在地 Strada Pitar Moş nr. 7-13, Sector 1, Bucharest
国際交流基金からの派遣者数 専門家: 1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
ブカレスト大学外国語外国文学部東洋言語学科日本語専攻
日本語講座の概要
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