世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)ウズベキスタンの日本語教育事情3

ウズベキスタン日本センター
山崎紀子

まず、「日本は本当にいい国ですね。」「日本は技術大国です。」と日本についてのコメント。
次に「どうしてウズベキスタンへ来ましたか?」「家族と一緒に住んでいますか?」「どんな仕事をしていますか?」「ウズベキスタンの生活はどうですか?」と矢継ぎ早に質問。
この国では話し出すと止まらないタクシー運転手によく出会います。タクシー運転手のみならず町中で日本に興味を持ってくれるウズベク人に出会います。
最近、日本でもウズベキスタンを特集するテレビ番組が放送されていますし、2019年には日本ウズベキスタン合作映画「旅の終わり世界のはじまり」が上映されました。また、ウズベキスタンを訪れる日本人観光客も大幅に増え、両国はより一層近くなったと感じます。

派遣先であるウズベキスタン日本センター(以下、UJC)は2001年に 開設され、最近まで国内唯一の日本語を学べる語学センターに位置付けられていましたが、それも昔の話。近年、日本語学習熱が高まり、首都のタシケントだけでなく、地方都市のサマルカンドやアンディジャン、ブハラなどにも多くの学校が設立されています。大学では地方のヌクス国立教育大学、カラカルパク国立大学、ブハラ国立大学で日本語の授業が開始されました。ウズベキスタンの日本語教育で一番歴史の古いタシケント国立東洋学大学の日本語講座は従来、言語、歴史、政治、経済、国際経済、哲学などの多くの学部に分かれていましたが、2019年11月に日本学としての学部に統合し、日本学部が設立されました。また、日本語教師の育成だけでなく、言語、文学、政治、経済、歴史など日本に関する専門性を高めることを目的とし、それぞれの分野において修士課程もあります。
このように大学での日本語教育も充実し、学生数も増えていますが、技能実習や特定技能の在留資格で日本を目指す学習者も急増しています。これは近年の大きな特徴だと言えます。

残念ながら新型コロナウィルス感染拡大により、UJCでは2020年3月に通常コースの授業を休止、私も地方都市への出張がキャンセル、そしてウズベキスタン最大のイベントである日本語弁論大会が延期となってしまいました。現在、UJCはオンラインでの授業再開に向けて準備を進めています。

UJCの新コース

2018年夏に開講した子供向け『まるごと』短期コースモジュール1に続き、2019年夏はモジュール2(80分×8回)も開講しました。内容はモジュール1と同様、成人向けの教科書『まるごと入門A1かつどう』を参考に、子供向けにアレンジしたものです。
最終日の発表会、修了式はモジュール1、2の合同で行いましたが、それは互いのグループの子供たちにとってとてもいい刺激になりました。モジュール1の子供たちは来年2に参加すれば、2の子供たちのように話せるようになるとわかり、モジュール2の子供たちは自分たちが前年に行ったモジュール1の発表を見て、自らの成長を実感していました。うれしいことに9月開講の年少者クラス(通常コース)に通い始めた参加者が4名います。

それから、通常コースでは「まるごと初中級」、「まるごと中級」クラスが開講できました。UJCのコースでは珍しく受講生のほとんどが社会人で、日本語の学習意欲が高いことはもちろん、日本文化にも大変興味を持っています。授業では文法や漢字も学習しますが、日本人を招いてのビジターセッションやポスター作り(UJC図書館に掲示)、文化体験などを取り入れ、UJC独自のコースを提供しています。

UJCの教室の写真
UJCの教室

日本語専門家に求められること

私は授業をあまり担当していないのですが、そのことに驚かれることがあります。実際、日本人講師の授業を受けたいという要望は多いですし、日本人講師が少ないのは事実ですが、専門家の仕事は日本語を教えることだけではありません。UJCでは専任講師とコースデザインを考え、定期試験のチェックをし、授業見学し、授業について質問があればそれに対応し...とコース全般を管理しています。日本語能力試験では会場運営や諸手続き。また、時には日本語教育機関に出向き、関係者と面談。要は日本語教育の何でも屋です。しかし何でもするのではなく、現地講師だけでできることは、あえて手伝わないようにしています。
近年、ウズベキスタンでは日本語教育機関も学習者も増え、学習のきっかけも留学、ビジネス、日本文化への興味など多様化しています。このような状況に対応するべく、専門家の業務として学習者にとっていい学習環境を提供できるよう教育機関をサポートし、そして、そこで活躍できる教師を育成することが急務となってきたと感じます。

UJC図書館の受付の写真
UJC図書館の受付

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Uzbekistan-Japan Center
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ウズベキスタン日本センター(UJC)は、国際協力機構(JICA)とウズベキスタン政府との協定に基づき2001年に設立された公益法人である。現在ビジネスコース、日本語教育、相互理解促進事業、聴覚障碍者向けITコースの4事業を活動の柱としている。日本語教育事業では2012年より国際交流基金による事業運営協力が行われており、一般向けの日本語講座を中心に短期特別コースなども開講している。また、教材の現地語化やUJC独自の教師研修、教材制作、日本語能力試験の実施を通じて当国全体の日本語教育の発展に努めている。
所在地 6th Floor, International Business Center, 107-B, Amir Temur str., Tashkent, 100084, UZBEKISTAN
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2001年。2010年度に一度中断し、2012年度に派遣再開。
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