日本語教育通信 授業のヒント 漢字を楽しく学ぶ10分活動

授業のヒント
このコーナーでは、海外の日本語教育の現場で、すぐに応用できる具体的な教え方のアイデア、ヒントを紹介します。

漢字を楽しく学ぶ10分活動

概要
目的
  • 楽しい活動を通して漢字学習の方法を知る。
  • 短い時間で漢字を楽しく学ぶ。
学習者のタイプ
  • 初級~中級半ば
クラスの人数
  • 何人でも
準備するもの
  • バラバラ漢字カードや漢字カード

10分間でできる楽しく漢字を学ぶ活動を紹介します。

バラバラ漢字カード

教室全体で行う活動です。1つの漢字を2つの部分に分けたカードを組み合わせて、漢字を作ります。漢字が部分の組み合わせでできていることや、組み合わせ方で大きさやバランスが違ってくることに注目します。

準備

教師はこれまでに指導した漢字を5~10字選びます。それぞれの漢字を左右・上下・外中のように2つに分けて、バラバラ漢字カードを作ります。

バラバラ漢字カード 例
バラバラ漢字カード1

活動方法

  1. 1.バラバラ漢字カードを黒板に貼ります。
  2. 2.教師は学習者1人を指名します。
  3. 3.指名された学習者は黒板に貼ってあるバラバラ漢字カード2枚を取り、1つの漢字を作ります。
  4. 4.学習者は「この漢字は青(あお)です」「この漢字は通る(とおる)です」のように説明します。
  5. 5.学習者が存在しない漢字を作ったり、説明を間違えたりしたら、カードを黒板に戻します。
  6. 6.黒板のカードがなくなったら終わりです。もし最後に組み合わせられないカードが残ってしまったら、そのカードを使って、学習者は別の漢字を考えます。例えば、囗(くにがまえ)が残った場合、「囗」を使って「囗+玉=国」のように学習者が考えた漢字を説明します。

    * 教室全体でこの活動をすることもできますし、2~4人のグループに分かれて、黒板の代わりに机を使って活動することもできます。

→サンプル 【PDF:362.4KB】
バラバラ漢字カード2

意味の仲間はどれ?

チーム対抗で正確さと速さを競う活動です。2~4人のチームで、漢字を意味のグループに分けます。漢字1字1字の持つ意味に注目します。

準備

教師はこれまでに指導した漢字を9~12字選びます。選ぶとき、意味のまとまりができるようにします。例えば[足・手・耳・目]が体のグループ、[犬・牛・魚・鳥]が動物のグループ、[青・赤・黒・白]が色のグループのように作ります。チームの数だけ同じ漢字カードを用意します。

活動方法

  1. 1.机の上に漢字カードをばらばらに置きます。
  2. 2.同じチームの人と協力して、漢字カードをどのような意味グループに分けられるか考えます。
  3. 3.分け終わったら手を挙げて教師に知らせます。
  4. 4.教師は最初に活動が終わったチームを指します。
  5. 5.そのチームの人は「この漢字は青・赤・黒・白です。そして色グループです。」のように説明します。
    他のチームの人たちは、その説明が正しいかどうか言います。(○×カードを挙げるのもいいでしょう。)
  6. 6.説明に間違いがあったら、教師は次のチームを指します。

* 活動中、わからない漢字があったら教科書や辞書で調べてもいいことにします。

送り仮名はなに?

教室全体で行う活動です。動詞の送り仮名によってグループを作ります。漢字1字1字の意味や送り仮名の付け方に注目します。

準備

教師はこれまでに指導した漢字から動詞で使う漢字を9~12字選びます。例えば[歩・行・書]が[~く]グループ、[住・飲・読]が[~む]グループ、[帰・切・走]が[~る]グループのように、送り仮名が同じものでグループが作れるようにします。

活動方法

  1. 1.黒板の左側に漢字カードをばらばらに置きます。動詞にしたときに同じ送り仮名になる漢字を集めて、グループを作るように指示します。
  2. 2.1人ずつ学習者が黒板の前に出て、好きな漢字カードを1枚選びます。そして「これは読むです」のように動詞の形で言って、黒板の右側に貼ります。
  3. 3.順番に学習者が前に出て、説明して、同じ送り仮名が付く漢字が集まるように貼っていきます。
  4. 4.漢字の読み方や送り仮名に間違いがあったら、カードを元の場所に戻します。
  5. 5.最後にそれぞれのグループに共通する送り仮名をクラス全体で確認します。
  • * わからない漢字が残っていたら、教科書や辞書で調べてもいいことにします。
  • * 2~4人のグループで机を使って活動することもできます。

バラバラ漢字カード3

その他の活動例

 その他、①漢字を画数順に並べる、②反対の意味の漢字でペアを作る、③同じ読み方(音読み)の漢字をグループにする、④同じ品詞の漢字をグループにするなど、カードを使ったさまざまな活動が考えられます。意味や品詞に注目したグループは、漢字1字1字のコアミーニング(中心的な意味)を確認する機会になります。コアミーニングは、中級以降の漢字・語彙理解に役立つ知識になっていきますから、漢字のコアミーニングに注目した活動を授業に取り入れていきましょう。

活動メモ

  • 教師は活動の中で、知らない漢字があったら、ノートに書いたり、リストに加えたりするなど、自分で工夫するように促しましょう。
  • 時間制限を設けると楽しさが増すでしょう。
  • 学習者が知っている漢字だけでなく、これから学習する漢字を少し入れておくと、ゲームを通して楽しく漢字を学ぶこともできます。
  • 学習者が活動方法に慣れてきたら、学習者同士で問題を作り、お互いに答え合う活動もできるでしょう。

 授業を「コミュニケーションをとりながら楽しく学ぶ時間」と考えると、漢字指導にも「だれかと一緒に楽しみながら学ぶ活動」が必要ですね。漢字を友だちと楽しみながら学ぶことは、学習意欲を高めたり維持したりすることにもつながっていくでしょう。また、漢字をたくさん書いて覚えるだけではなく、漢字を意味や形で整理することは、理解や記憶の助けにもなります。学習者が漢字も「だれかと楽しみながら学べる」「自分たちで工夫しながら覚えていける」と思えるように、さまざまな活動を考えていきましょう。

(濱川祐紀代・中村雅子/日本語国際センター専任講師)

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