日本語教育通信 授業のヒント “待ちの姿勢”の情報収集~ネットの力であなたも今日からスペシャリスト!《動画情報収集・情報発信編》

授業のヒント
このコーナーでは、海外の日本語教育の現場で、すぐに応用できる具体的な教え方のアイデア、ヒントを紹介します。

 前回は自分から情報を取りに行かずに、「待ちの姿勢」で新刊情報や学術論文に関する情報を収集する方法をご紹介しました。これらは文字中心の情報ですが、今や写真や動画による情報もネット上にはあふれています。特にYouTube自身で発表している統計によると毎分300時間分を超える動画がアップロードされており(2015年5月現在)、海外からでも日本のリアルな状況が目に入るようになりました。第2回になる今回はYouTubeでの動画収集の方法と、前回ご紹介した文字情報も含めて、それらをどのように学生や同僚に発信するかについてもご紹介したいと思います。

YouTubeで日本語教育や日本事情の動画をキャッチしよう!

 特定の内容の動画の情報を定期的に受信するようにするには、二段階を踏む必要があります。最初にキーワードを登録してその検索結果を送ってもらう設定をし、次に、その動画の作成者の発信を定期購読するように設定します。

図8「Googleアラート」の画像

(図8)

図9「Googleアラート」オプション設定の画像

(図9)

  • 1)Googleアラート」(https://www.google.co.jp/alerts)という無料のサービスで「日本語教育」「自律学習」などのキーワードを登録する。
    ※ 前回ご紹介した「Googleスコラアラート」とは別のサービスですので、お気をつけ下さい(図8)。
  • 2)検索窓に「日本語教育」などのキーワードを打ち込む。
  • 3)検索結果が表示されたらその画面にある「オプションを表示」をクリック。
  • 4)「ソース」を「ビデオ」にしておく。(図9)
    ※ハンガリー語の動画のみ受信するなど、言語の設定もこの画面で行うことができます。

 これだけで、キーワードに関連のある動画がウェブに公開され次第、メールでお知らせがとどくようになります。その多くはYouTubeにアップされた動画です。
 さて、第二段階として、これらの動画の作成者の発信を定期に受け取るには、YouTubeの場合、「チャンネル登録」を行います。登録の手続きは以下のとおりです。

図10「チャンネル名」の画像

(図10)

図11「チャンネル設定」の画像

(図11)

  • 1)いい動画があったら、その動画の下にあるチャンネル名をクリック。(図10の「Japan Foundation, Los Angeles」の部分)
  • 2)その動画制作者がこれまでに公開してきた動画から、そのチャンネルの方向性を確認する。
  • 3)これからも新しい動画を見たいと思ったら、チャンネル名の下の「チャンネル登録」という赤いボタンをクリック。
  • 4)クリックすると同じボタンの右側に出てくる設定ボタン(歯車のアイコン)をクリック。
  • 5)「アップデート通知を受け取る」にチェックを入れる(図11)。

 これで「待ちの姿勢」のまま、さまざまな最新情報を受け取る体制ができました。もしメールが多すぎて邪魔な場合は、各メールソフトなどでフィルタリングを設定して、必要なときにだけ着信をチェックできるようにしておきましょう。
 さて、これらの動画をどう使うかですが、私の職場では反転授業のためのオリジナル動画を作成していることもあり、それ以外にこうして集めた動画を授業中に見せることは基本的にしていません。それではどうするのかというと、facebookのクラス運営用のグループで共有するのです。そして、その際もなるべく、共有された動画を見ておしまいにするのではなく、面白い動画があったら自分でチャンネル登録するようにと言っています。
 学生に喜ばれるのは、日本語を勉強するための動画よりも、日本に住んでいる外国人が自分の目で見た日本を紹介するものが多く、この種のチャンネルとしては「Gimmeaflakeman」、「Rachel & Jun」、「Japanagos(ジャパナゴス)」、「Micaela ミカエラ」、「kanadajin3」、「KemushiChan」、「Sharla in Japan」、「unrested」などが有名です。

一人でためこまずに、世界と、仲間とシェアしよう!

 さて、こうして収集した情報は自分で見て終わりにするのではなく、世界と、仲間とシェアしましょう。私は2段階に分けて情報発信を行っています。
 まず、情報がやってくるそばから、シェアする価値があると思ったらすぐにTwitter(ツイッター)にポスト(投稿)します。この時に注意するのは、後で分類できるようにハッシュタグという目印を入れておくことです。たとえば新刊情報なら「#新刊」、論文なら「#ronbun」としています。ツイッターは「Twilog」というサービスを使うと自分の過去の書き込みが全て保存されてデータベースとして使えますので、ここで「#新刊」などと検索すると新刊情報の一覧が表示されるのです。たとえば「#新刊」のハッシュタグ付きの私の投稿は以下のリンクで一覧を見ることができます。
 http://twilog.org/Midogonpapa/search?word=%23%E6%96%B0%E5%88%8A
 第2段階では、一ヶ月に一度、この一覧をまとめてメーリングリストやFacebookのコミュニティに投稿します。実は上記のTwilogによるまとめは、この第2段階の情報発信のための準備という意味もあります。ですから、月に一度の情報発信だけしたい方は、YouTubeからのメールをOutlookなどで自動振り分けできる場合は、設定さえしてしまえば第1段階を経由しないで、第2段階のまとめ作業に入ることができます。
 みなさんの中にも、LINEなどのメッセンジャーアプリやFacebookなどのSNSで、クラスの学習者や同僚のみなさんと情報交換をしている方も多いと思います。勇気が必要な場合は少しずつでも結構ですので、ぜひこうして自分の学びを仲間とシェアしてください。お金と違って情報はいくらシェアしても減りませんし、シェアすることでちょっぴり幸せを感じることもできますよ。

(村上 吉文 / ブダペスト日本文化センター日本語上級専門家)

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