日本語教育通信 授業のヒント
時差について日本語で学ぼう!
―他教科とつなげる授業の例―

授業のヒント
このコーナーでは、海外の日本語教育の現場で、すぐに応用できる具体的な教え方のアイデア、ヒントを紹介します。

概要
目標
  • 世界の中で自分の国がどのタイムゾーンにあるかわかる。
  • 日本やほかの国にいる友人とのビデオチャットで、時間にあっている基本的なあいさつをすることができる。
  • 短い簡単な文のメールのやり取りでビデオチャットの時間を決めることができる。
対象とするレベル
  • JF日本語教育スタンダードのA1~A2レベル
    (地理で時差について勉強する、小学校高学年から中学校ぐらいの学習者のための活動です。)
クラスの人数
  • 何人でも
準備するもの
  • インターネット接続のできるスマートフォンやパソコン、プロジェクター、ワークシート

教科といっしょに言語も教える

 最近ヨーロッパやオーストラリアの学校を中心に、教科内容と言語を結びつけた教え方が広がってきています。さまざまな教科の中でも、地理は、日本やほかの国について学ぶことで自分の国についてもっとよく知ることができるという点で、外国語学習と組み合わせやすい教科です。そこで今回は、小学校高学年から中学校ぐらいの学習者が地理で時差について学ぶときに、簡単な日本語もいっしょに教える授業方法を紹介します。

授業のねらい

 この授業では、国の位置や地球の自転など、時差について学ぶとともに、その知識を自分の生活と結びつけて使います。具体的には、海外の友人とのビデオチャットのために時差を調べて、日本語でコミュニケーションを行います。次の「授業の進め方」には、活動を[日本語]か[母語]かどちらの言語で行うかを書きました。また、授業の前提として、学習者は、日本語の朝、昼、夜のあいさつと、かんたんな数字のことばを学習しています。

授業の進め方

1. 導入 [母語]

 時差について知っていることと、どんなときに気づいたかを確認します。例:スポーツの試合が夜中にあった、海外の友だちにメッセージを送ったら友だちは寝ていた、など

2. 自転と昼・夜の関係についての確認 [母語]

 地球の自転によって昼と夜ができることがわかる動画を見て、学習者の理解を確認します。

3. 時差についての理解の確認 [日本語]

 海外の友だち同士のビデオチャットの会話で、時間とあいさつのことばを聞いて、ワークシート1(図1)に時間を書きます。

ワークシート1の画像 (ロンドン(0°)12:00PM 「こんにちは」/とうきょう(135°E)PM「こんばんは」/ニューヨーク(75°W)AM「おはようございます」) イラスト出典リンク(別サイト)へ移動します
図1 ワークシート1

ワークシート1の会話の例(「L」ロンドン、「T」東京、「N」ニューヨークの学習者)

L:
こんにちは。(TとN:こんにちは。)
ロンドンのLです。ロンドンは今、昼の12時です。とうきょうのTさん?
T:
はい。こんばんは。(LとN:こんばんは。)
とうきょうのTです。とうきょうは今、夜の9時です。ニューヨークのNさん?
N:
はい。おはようございます。(LとT:おはようございます。)
ニューヨークのNです。ニューヨークは今、朝の7時です。

4. 時間の言い方の練習 [日本語]

時刻の言い方練習用時計 0:30画像
図2 Tetchanさんの
「時刻の言い方練習用時計」
(みんなの素材・アイデア)

時計を使って、いろいろな時間を聞いたり言ったりする練習をします。「みんなの教材サイト」には、図2のような便利な教材があります。

5. 時差の計算 [日本語]

 経度(longitude)を元に、それぞれの都市が何時か計算して、ワークシート2(図3)に書きます。イラストや計算式を見て、できるだけ学習者に推測させてから、教師はUTC(協定世界時)について母語で説明します。また、夏時間(Daylight Saving Time)について考えなくていいように、北半球の都市と冬時間の日を選びましょう。

ワークシート2の画像(なんじですか。 UTC+/-? (3月1日) ニューヨーク/ロンドン/ベルリン/ペキン/とうきょう)
イラスト出典リンク(別サイト)へ移動します
図3 ワークシート2

6. グループでビデオチャットの時間を決める [日本語]・[母語]

 日本や、ほかの国にいる日本語を話す友だちとビデオチャットをするための準備をします。まず、どの都市(国)の友だちと話すかグループで決めます。次にWorld Time Buddy(図4)で、都市の名前と日(例:3月1日)を選んで、時差を調べます。UTCJST(日本標準時)の説明も書いてあります。また、相手の都合がいい時間を推測して、ビデオチャットの時間を決めます。

World Time Buddy サイトイメージ画像(London/NewYork/Tokyo)
図4 World Time Buddy

7. メッセージを書く [日本語]

 ビデオチャットをする都市(国)の友だちに、時間を相談するメッセージを書きます。教師は図5のようなテキストを準備しておいて、学習者がコピー&ペーストできるようにします。

3月1日に ビデオチャットをしましょう。なんじが いいですか。

  1. (1)15:00JST
  2. (2)16:00JST
  3. (3)17:00JST

図5 メッセージに使うテキスト(JSTの部分は相手の国によって変えます)

8. クラスでの共有 [日本語]・[母語]

 グループで決めた、相手の都市(国)、時間、書いたメッセージを、日本語でクラスの人と共有します。その時間に決めた理由は母語で話します。

発展:夏時間について考える

 地理の授業では、ESD(Education for Sustainable Development、持続可能な開発のための教育)の活動がよく行われます。例えばエネルギー節約のために、夏時間(Daylight Saving Time)が役立つかどうか話し合う活動ができます。

1. 導入 [日本語]

 日本の夏のすごし方についてビデオや写真を見ます(例:MARUGOTO Plus 初級1 A2 トピック2)。

2. 夏時間のある生活を紹介する(夏時間のある国だけ) [日本語]

 日本には夏時間がないので、日本人に夏時間について何を教えたいか、少し考えます。次に、学習者は夏時間についての質問と答えを日本語で作ります。答えをまとめてブログやSNSに書き、日本人にコメントをもらうといいでしょう。

質問の例 答えの例
夏時間はいつ始まりますか。 3月の最後の日曜日です。
前の夜、何をしますか。 時計の時間を変えます。早く寝ます。
夏時間が好きですか?
どうしてですか?
夏時間が好きです。夜たくさん時間があります。
でも、朝とてもねむいです。

3. 夏時間のメリットとデメリット [母語]

 夏時間のメリットとデメリットについて、資料を見て話し合います。教科内容を深く理解して、意味のある話し合いにするために、母語を使います。B1以上の日本語力があったら、日本語のグラフを読むタスクもできます。また、時差の学習では経度(longitude)だけ使いましたが、夏時間のディスカッションには、緯度(latitude)の知識も必要です。

 ESDについては「アジア太平洋地域 持続可能な開発のための教育(ESD)推進サイト」に情報があります。また、教科内容と言語のバランスについては、CLIL(Content and Language Integrated Learning、内容言語統合型学習)やILTL(Intercultural Language Teaching and Learning、異文化間言語教育)の考え方が参考になります。

地理のほかのテーマとつなぐアイデア

 このように教科内容を教えるときに日本語を使うアイデアは、日本語のクラスがない学校でも、いろいろな教科の授業や学校の文化イベントでできます。地理の授業なら、時差のほかに、面積(国の広さ)、火山と地震、季節など、いろいろな学習内容で日本語とつなぐことができます。みなさんもぜひ、教科学習を利用して、たくさんの人に日本語を紹介してみてください。

参考文献:

  • 金 玄辰(2012)「地理教育の世界的動向:カリキュラム分析を通して」E-journal GEO 7(1), 82-89,日本地理学会

(根津 誠/日本語国際センター専任講師)

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