日本語教育通信 授業のヒント
読んでわかったことを伝えてみよう!
−「ペアによる再話活動」のススメ−

授業のヒント
このコーナーでは、海外の日本語教育の現場で、すぐに応用できる具体的な教え方のアイデア、ヒントを紹介します。
概要
目的
読んでわかったことを他の人と伝え合うことによって、読む力と話す力を伸ばす
対象とするレベル
初級を終えたばかりの初中級レベル(日本語能力試験N3程度、またはJFスタンダードA2程度から)
クラスの人数
理想的には20人程度で対面授業を想定。ただし、オンラインでの授業も可能。
準備するもの
学習者が読むまとまった文章素材

はじめに

 みなさんはいつもどのような読解授業をしていますか。以下のような流れの授業が多いのではないでしょうか。

①プリタスク → ②新出語彙の確認 → ③一斉に読解 → ④内容理解問題

 でも、このような授業で、学習者は本当に内容を理解できているのでしょうか。内容理解を確認する質問をしても、いつも同じ学習者が答えるだけで、答えない学習者が本当にわかっているのか、不安に思うことはないでしょうか。読解の授業というとこのように教科書の質問をこなしているだけで、そもそも学習者はどのように読んでいるのか、本当に読む力がついているのかよくわからないことがあります。
 では、どうしたらいいでしょうか。読んでわかったことを学習者に直接話してもらえばいいのです。わかっていなければ話せませんから、どこがわかっていないのかがすぐにわかります。でも、一人ひとりの学習者に「読んでわかったことを話してください」と言うだけではうまくいきません。話すためには聞いてくれる相手が必要です。そこで考えたのが、今回紹介する「ペアによる再話活動」です。

「ペアによる再話活動」とは

 「ペアによる再話活動」は、①読んで理解した内容を相手に伝えるという目的を持って、同じ素材を個別に読み、②二人の学習者が理解した内容を相手に伝え合う活動です。図1を見てください。

ペアによる再話活動イメージ画像(①ペアが向かい合って座り、それぞれに素材を読んでいる様子②何も見ないで、相手に読んだ内容を伝える男性「うん、そうですね。・・・ええっと、そこは・・・。」とそれに反応する女性)クリックすると拡大画像が表示されます
図1 ペアによる再話活動 (『初中級からの読解』凡人社 p.24より)

 まず、一人ひとりが素材を3分で読みます。素材は、2、3段落、200〜400字程度の短い文章で、辞書を使わなくても大まかな理解ができるレベルのものを使います。そして、ペアになって、その内容を知らない人に話すように、読んだ内容を伝え合います。その際、素材を見ないようにします。時間は、5分程度です。二人で内容を伝え合った後、内容が理解できているか確認する問題に取り組みます。この問題は、素材の内容と合っているものを4つの選択肢から一つ選ぶような簡単なものがいいでしょう。最後にクラス全員で問題の解答を確認し、内容や形式(単語や文法など)について質問があれば、全員で確認します。所要時間は一つの素材について、15~20分程度です。1回の授業の時間にもよりますが、50分の授業であれば、3つの素材を使って、ペアによる再話活動を3回繰り返すことができます。

「ペアによる再話活動」を3段階化

 実際に、「ペアによる再話活動」をやってみると、二人の対話がうまく進むペアもある一方、中にはこのような活動に慣れていないからか、指示通りに進めず、素材を見ながら話す、母語を使って話す、自分の好きなことを話すなど、いろいろな問題が起こり、ペアで伝え合う作業がうまく進められないペアもあるかもしれません。そのような場合には、学習者が活動への負担や不安をあまり感じることなく、少しずつ活動に慣れていけるように、「ペアによる再話活動」を3段階に設定しましょう。こうすることで学習者は無理なくスムーズに活動に慣れ、楽しんで活動ができるようになります。以下に3段階の「ペアによる再話活動」の内容と方法を説明します。

第1段階

 まず、第1段階では、学習者がこの活動に慣れることを第一の目的とします。そのため、学習者を「再話者X(読んで理解したことを話す人)」と「支援者Y(パートナーの再話をサポートする人)」に分け、再話者が集中して話ができるようにします(図2)。再話者Xは素材を読んで、この後、支援者Yに何を話せばいいか、キーワードをメモします。そして、そのメモを見ながら理解できたことを自分の言葉で話します。支援者Yは素材文を見ながら、再話者Xの再話の足りない部分や間違っている部分について、必要なサポートをします。

第1段階の再話活動イメージ画像(X,Yとも素材を読む。→Xはキーワードをメモする。→Xはメモだけを見て再話。Yは素材を見ながら聞き、Xの再話を支援する。)クリックすると拡大画像が表示されます。
図2 第1段階の「ペアによる再話活動」

第2段階

 第2段階では、二人の学習者が素材を見ないで協力して再話することに慣れることを目的とします。二人の学習者は素材を読んだ後、それぞれ素材を見ないでキーワードを書き出します(図3)。再話者Xは自分のメモを見ながら再話を始め、支援者Yは自分のメモを見ながら、再話者Xの発話を聞き、必要なサポートをします。そして、二人で補い合いながら、再話を完成します。

第2段階の再話活動イメージ画像(X,Yとも素材を読む。→X、Yがそれぞれにキーワードをメモする。→Xはメモだけを見て再話。Yもメモを見ながら聞き、Xの再話を支援し、2人で協力して再構築する。)クリックすると拡大画像が表示されます。
図3 第2段階の「ペアによる再話活動」

第3段階

 第3段階では、二人で協力して再話を完成できるようになることを目的とします。第3段階では、それまでの第1、第2段階と違って、素材を見ることも、自分が書いたメモを見ることもしません(図4)。素材を読んだら、どのように再話を行うか、一人ひとりが考え、何も見ないで再話を始め、二人で協力して再話を完成させます。

第3段階の再話活動イメージ画像(X,Yとも素材を読む。→各自でどう伝えるか考える。→Xは何も見ずに再話。Yも何も見ずに聞き、2人で協力して再構築する。)クリックすると拡大画像が表示されます。
図4 第3段階の「ペアによる再話活動」

 このように3段階の手順に沿って着実に進めていくことによって、読んで話す活動に慣れていない学習者も、自ら活動の意義やおもしろさを感じ、二人で協力して自分の理解を確認したり、自分の理解と合わない部分を質問したり、自分がしっかり理解できなかった部分を明確にしたりすることができるようになっていきます。

「ペアによる再話活動」の授業への取り入れ方

 ペアによる再話活動を授業に取り入れるためには、どんな点に注意しなければならないでしょうか。いくつかのポイントについて考えてみましょう。

  • 質問:読む前に漢字や語彙、表現などを教えるプリタスクが必要ですか。
  • 回答:必要ありません。この活動の大切なポイントは、読んで理解したことを自分の言葉で他の人に伝えることですから、辞書で調べなくてもわかるレベルの素材を使います。読んで理解するのが難しい、あるいはできない素材は、この活動には適切ではありません。
  • 質問:どうして同じ素材を読みますか。違う素材を読んだ方がいいのではないでしょうか。
  • 回答:最終的には、二人の学習者がそれぞれ違う素材を読んで理解したことを相手に伝える活動に進めていくのが理想的です。しかし、初中級レベルの場合、読んだ内容を、日本語で他の人に伝えることは簡単ではありません。そこで、この活動では、学習者が負担を感じることなく少しずつ活動に慣れていけるように、同じ素材を使いながら、読み方と話し方を変えて、少しずつ活動の難度を上げていきます。
  • 質問:学習者間にレベル差があるペアでも大丈夫でしょうか。
  • 回答:大丈夫です。読んだ内容を話す再話者の役割と、それをサポートする支援者の役割は、読む文章素材を変えるごとに交代します。レベルの高い学習者も低い学習者も必ず両方の役割を担うので、繰り返すうちにお互いに助け合いながら活動に慣れていきます。
  • 質問:学習者が読む文章素材はどうしますか。
  • 回答:語彙、文法、文章の長さなどの観点から、みなさんの学習者のレベルに合った文章素材を選んで使ってください。拙著『「再話」を取り入れた日本語授業―初中級からの読解』には、読みの素材例集が付いています。参考にしてください。

 この「ペアによる再話活動」は、コロナ禍の今、例えばZoomなどのブレイクアウト機能を使ってオンラインでも実施することができると思います。ぜひ、みなさんも「ペアによる再話活動」をやってみてください。

参考文献:

  • 小河原義朗・木谷直之・熊谷智子(2012)「学習者ペアによる読解後の再話活動に見られる相互行為」『日本語教育方法研究会誌』19(1)、6-7頁
  • 小河原義朗・木谷直之・熊谷智子(2015)「読解授業における再話―学習者ペア活動の相互行為分析―」『小出記念日本語教育研究会論文集』23、5-17頁
  • 小河原義朗・木谷直之(2016)「再話活動のデータを用いた読解素材の分析 -読解授業の改善に向けて-」『言語教育実践イマ×ココ』4、114-127頁、ココ出版
  • 小河原義朗・木谷直之(2020)『「再話」を取り入れた日本語授業―初中級からの読解』凡人社

追加情報:もっと知りたい人のために

 「ペアによる再話活動」の紹介、いかがでしたでしょうか。実際に授業の中で活動をやってみると、「評価はどのようにすればいいのかわからない」など、上記のQ&A以外にもいろいろな問題が出てきます。

『「再話」を取り入れた日本語授業―初中級からの読解』表紙画像

 私たちは、そのような問題にどう対応すればいいか、自分たちの実践をふり返り、いろいろな工夫をしてきました。文章素材の選び方や配列の仕方、活動の導入の方法、ペアの組み方、フィードバックや評価の方法などのポイントについては、『「再話」を取り入れた日本語授業―初中級からの読解』(凡人社)にわかりやすくまとめましたので、ぜひこの本を読んで参考にしてください。この本には段階に応じてすぐに使える素材を、別冊付録に40編収載しています。この別冊付録の素材は著者による書き下ろしで、各素材に内容理解確認問題が付けてあります。自由にコピーしたり、切り貼りしたりして使えます。また、私たち自身が行った「ペアによる再話活動」の授業の実践例と、学習者がそれぞれの段階ごとにどのように「読む力」と「話す力」を伸ばしていったかの分析も載せています。

(木谷 直之/元日本語国際センター専任講師・
小河原 義朗/東北大学大学院文学研究科教授)

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