日本語教育通信 日本語教育ニュース第15回
日本語教育ニュース
このコーナーでは、国際交流基金の行う日本語教育事業の中から、海外の日本語教育関係者から関心の高いことがらについて最新情報を紹介します。
【第15回】WEB版「エリンが挑戦!にほんごできます。」がオープンしました!
http://erin.ne.jp/
日本語国際センター 専任講師 赤澤 幸
ドラマやCMで活躍中の豊田エリーさん・倉科カナさんが出演している、日本語学習のための映像教材「エリンが挑戦!にほんごできます。」(以下、「エリン」)のWEB版が、2010年3月31日にオープンしました。WEB版「エリン」は、日本や日本語に興味のある世界中の人たちが、より気軽に楽しく、現代の日本事情・日本文化や日本語について学べるサイトです。
WEB版「エリン」の特徴やおすすめのコンテンツを、紹介します!
「エリン」の特徴
「エリン」の特徴は、“日本語学習”と“文化理解”を組み合わせた日本語学習教材であることです(1)。「エリン」の“日本語学習”は、日本語の知識を増やすのではなく、「日本語でできること」を増やすことを目標にしています。また、「エリン」の中のたくさんの動画や音声で日本語を学習することによって、異文化や多文化についての視野を広げることも目標としています。
(1)くわしくは、『日本語教育通信』第59号 日本語教育ニュース「『エリンが挑戦!にほんごできます。』-この教材で伝えたい考え方-」(http://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/teach/tsushin/bn/dw_pdfs/nk59_01-03.pdf【PDF:595KB】)をごらんください。
「エリン」の構成とコンテンツ
「エリン」は全部で25課あります。それぞれの課には「基本スキット」、「応用スキット」、「大切な表現」、「ことばをふやそう」、「これは何?」、「見てみよう」、「やってみよう」の7つのコーナーがあります。これらのコーナーには、“日本語学習”をサポートするコーナー、“文化理解”をサポートするコーナー、そして“日本語学習”と“文化理解”をつなぐコーナーという役割があります(図1)。
図1 WEB版「エリン」の構成
(★の印は、WEB版だけのオリジナルコンテンツを表します。)
“日本語学習”と“文化理解”をつなぐコーナー:「基本スキット」「応用スキット」
「基本スキット」と「応用スキット」では、ドラマ風のスキットで、実際に使われている“生”の日本語が学習できるとともに、現代の日本文化や日本事情に触れることができます。
スキットの字幕やスクリプトは、さまざまな学習段階の学習者にとって使いやすいように、漢字かな混じり・かな・ローマ字・英語の4種類を選んで表示することができます。「基本スキット」をマンガにしたページでは、スクリプトと同じように、吹き出しの中のセリフを4種類の表示に切り替えたり、セリフをクリックすると音声が聞けたりする、便利な機能が付いています(図2)。
図2 基本スキット>マンガ
WEB版のために新たに作成したコンテンツは、「マンガで覚えるオノマトペ」、スキットの内容に関する「確認問題」です。「マンガで覚えるオノマトペ」では、スキットのマンガに出てくる「ガタガタ」「キョロキョロ」などの擬声語・擬態語の使い方と例文や、その場面を表現した動画を見ることができます(図3)。スキットの内容に関する「確認問題」は、全部で250問あります。
図3 基本スキット>マンガで覚えるオノマトペ
“日本語学習”をサポートするコーナー:「大切な表現」「ことばをふやそう」
「大切な表現」のコーナーでは、CGキャラクターによる文法解説のアニメーション(図4)や「解説&例文」のページで、日本語の文法・文型のルールや使い方について勉強することができます。「エリン」の“日本語学習”は、日本語の文法・文型を正確に覚えて言えるようになることが目的ではなく、「日本語でできること」を増やすことを目的としていますので、スキットに出てくる文法・文型が実際の生活場面でどのように使われているか、「いろいろな使い方」のページで動画を見ることもできます。学習した文法・文型を定着させるためには、音声やイラスト・写真を使った「練習問題」のページがおすすめです(図5)。全25課1,519問の練習竭閧ヘ、WEB版のために開発されたオリジナルコンテンツです。
語彙をたくさん覚えたい方は、「ことばをふやそう」のコーナーで、各課に関連する場面やトピックの語彙を、豊富なイラストと音声で勉強することができます。
図4 大切な表現>動画の再生
図5 大切な表現>練習問題
“文化理解”をサポートするコーナー:「これは何?」「見てみよう」「やってみよう」
「これは何?」のコーナーでは、日本の普段の生活では当たり前に使われているものですが、外国の人には何かよくわからない不思議なものについて、クイズと使い方解説の動画で学ぶことができます。
「見てみよう」のコーナーでは、25課分の場面やトピックに関係する現代の日本事情について、動画や633枚もの解説付きの写真で勉強することができます。日本文化について知識を深めることのできる「文化クイズ」は、WEB版のために独自に開発したおすすめコンテンツです(図6)。25のトピックのクイズに、ぜひ挑戦してみてください。クイズに20問連続して正解すると「黒帯」、30問連続正解すると「師範」の認定を受けることができます。
「やってみよう」のコーナーは、「書道」、「生け花」、「そろばん」といった日本の伝統的な文化や、「携帯メール」、「プリントシール」のような現代の若者文化を、外国人が実際に体験してみる動画が見られるコーナーです。このコーナーには、WEB版用に新たに開発した「ゲーム」のページがあります。「バーチャル生け花ゲーム」、「エリンのプリントスタジオゲーム」、「江ノ電すごろくゲーム」(図7)など、日本文化や日本の生活が擬似体験できるゲームが満載です。
図6 見てみよう>文化クイズ
図7 やってみよう>ゲーム
ユーザー登録すれば使える、便利で楽しい機能:「学習の記録」「アバター」「にほんごクエスト」
WEB版「エリン」は、ユーザー登録をしなくてもすべてのコンテンツを見ることができますが、ユーザー登録をした人だけが使える、便利で楽しい機能もあります。
「学習の記録」は、いつ、何を学習したか、自動的に記録する機能です。ログインしてからWEB版「エリン」を使って学習すると、学習したページがすべて「学習の記録」に記録されますので、この記録を確認しながら、自律的に日本語の学習を進めることができます。
「アバター」は、WEB版「エリン」の中だけの自分のキャラクターを作ることができる機能です(図8)。顔のパーツや髪型を選んで、ぜひあなたにそっくりなアバターを作ってみてください。選べる洋服は、ユーザー登録したばかりの時は限られていますが、サイトで勉強すればするほどポイントが増えて、アイテムを増やすことができます。
図8 「アバター」
「にほんごクエスト」は、WEB版「エリン」で勉強した日本語を使って日本語のコミュニケーションに挑戦することができる、サイト上の仮想の街です(図9)。サイトで勉強して「日本語でできること」が増えれば増えるほど、街で出会う人たちといろいろな日本語のコミュニケーションができるようになります。また、学習した課が増えていくと、「ファッションタウン」や「温泉」など、行ける場所も広がっていきます。
図9 「にほんごクエスト」
WEB版「エリン」オープン後の利用状況
2010年3月31日のサイトオープンから6月15日までの約2ヵ月半の間に、WEB版「エリン」には140の国・地域から39,907人のユーザー(2)が訪れました。セッション(3)の多い国・地域は、順に、日本(16.7%)、中国(13.5%)、アメリカ(9.6%)、韓国(6.9%)、オーストラリア(6.4%)です(図10)。国際交流基金が実施している「海外日本語教育機関調査」の2006年調査によると、海外で日本語教育が行われているのは133の国・地域ですから、わずか2ヵ月半の間に、それを上回る広範囲の国・地域の人にアクセスしていただけたことがわかります。サイトへのセッションは81,451件で、ページビュー(4)は679,168件でした。
- (2)これは「ユニークユーザー」の数です。「ユニークユーザー」とは、1度以上サイトを訪れたことのある人を表します。同じユーザーが何度訪れてもユニークユーザーの数は1と数えます。
- (3)「セッション」とは、ユーザーがサイトを訪れてからほかのサイトへ移動するまでの一連のアクセスのことです。サイトに入ってから別のサイトへ移動するまでに、サイト内のページをいろいろ見たとしても「1セッション」と数えます。
- (4)「ページビュー」とは、サイト内のページが表示された回数のことです。あるユーザーがサイトを訪れていくつかのページを見た時、それぞれのページごとに「1ページビュー」と数えます。
図10 セッションの国・地域別割合
WEB版「エリン」の今後
現在、WEB版「エリン」は日本語版と英語版のみの公開ですが、今後、他の言語についても公開していこうと考えています。これからも、日本や日本語に興味のある世界中の人たちにとって、より使いやすく楽しいサイトにしていきますので、ぜひたくさんのページをご覧になって感想やご意見を送ってください!