日本語教育通信 日本語教育ニュース 話す力を測るテストを取り入れてみませんか?-JF日本語教育スタンダード準拠 ロールプレイテスト公開!

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このコーナーでは、国際交流基金の行う日本語教育事業の中から、海外の日本語教育関係者から関心の高いことがらについて最新情報を紹介します。

日本語国際センター 教材開発チーム 専任講師 長坂水晶

ロールプレイテストを行っているイラスト

「会話の試験をするのは大変」「話す力を測るテストはどのようにすればいいのかわからない」・・・このような声を受けて、国際交流基金では、日本語の先生方が学習者や教育現場に合わせて、できるだけ簡単に実施できるテストの方法を提案したいと考えました。そこで開発されたのが、JF日本語教育スタンダード準拠ロールプレイテストです(以下、JFロールプレイテスト)。ロールプレイを何回か行うことで、口頭でのやりとりの能力を、短時間で大まかに把握することができ、コースの最初のプレースメントなどに使うことができます。
 このテストの方法や流れは、「JF日本語教育スタンダードサイト内のJFロールプレイテストページ」に公開された動画で確認することができ、また、テストに必要なマニュアルなどの資料は全て同サイトよりダウンロードできます。
 今回はJFロールプレイテストの特徴と、テストの実施方法をご紹介します。

1. JFロールプレイテストの特徴

特徴1:レベル基準はJF日本語教育スタンダード

 JFロールプレイテストでは、学習者の話す力を、JF日本語教育スタンダード(以下、JFスタンダード)のレベル基準を使って大まかに把握します。JFスタンダードのレベル基準はCEFR※1と共通です。
 テストでは「口頭でのやりとり」の力、つまり、聞き手との対話における口頭能力を測ります。表1は、「口頭でのやりとり」でどのぐらいのことができるのかレベル別に示したものです。

  • ※1CEFRとは「ヨーロッパ言語共通参照枠(Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment)」の略称。A1(Breakthrough/入門)~C2(Mastery/熟達)の6段階のレベルが設定されています。

表1 「口頭でのやりとり」に関する全般的な記述
表1 「口頭でのやりとり」に関する全般的な記述の画像

特徴2:ロールプレイで測る

 「口頭でのやりとり」の能力を測るために、テストでは、受験者はテスターを相手にロールプレイを行います。ロールカードに書かれた課題は、JF Can-do※2を元に作っているため、その課題が達成できるかどうかを見ることによって、そのレベルに達しているかどうかを判定することができるのです。テスター用マニュアルには、A1、A2、B1、B2の各レベル3種類ずつ、ロールカードの例が載っています。

  • ※2JF Can-doとは、各レベルで日本語を使ってどんな課題がどれぐらいできるかを「~できる」という形式で表した文です。

B1のロールカードの例
B1のロールカードの例の画像

元になったJF Can-do

近所の歯医者について、対応の仕方や技術などの詳しい評判を友人に質問したり、答えたりすることができる。
<B1 口頭でのやりとり 情報交換する>

特徴3:約15分でできる

 ロールプレイは「課題が達成できたか、できなかったか」という観点に絞って判定します。例えば、先に挙げたB1のロールプレイの場合、「店を紹介して、その店の説明と、お勧めの理由が言えるか」を判定します。「話す力を測るテストは実施や判定に時間がかかるから現場に取り入れにくい」という声を耳にしますが、このように、JFロールプレイテストでは評価の観点を絞って、少ない時間で多くの受験者を対象に実施できるようにしています。

特徴4:マニュアルを読んで理解しておけばテスターになれる

 テストの実施前にテスター用マニュアルを読んで、進め方や判定の仕方、ロールプレイの内容などをよく理解しておけば、特別なトレーニングを受けなくてもテスターになって、テストを実施できます。
 「ロールカード(A1~B2)」「判定記入用紙」「ガイドライン(A1~B2)」も、ダウンロードして、そのまま使うことができます。また、ウェブ上に動画やサンプル音声も公開しているので、テスト実施の手順を理解したり、レベルイメージを持ったりするのに活用できます。

  • 判定記入用紙の画像
  • ロールプレイテスト(テスター用マニュアル)の画像
  • ロールカードの画像
  • ガイドラインの画像

2.JFロールプレイテストの実施方法

  1. (1)テストの進め方
    受験者に一番近いと思われるレベル、または複数の受験者がいる場合は一番多くの受験者がいそうなレベルから始めます。図1は、B1レベルからスタートする例です。
    最初のレベル(B1)ができたら、次に一つ上のレベル(B2)へ、できなかったら一つ下のレベル(A2)へ進みます。
    図1 テストの流れ
    図1 テストの流れの画像
  2. (2)ロールプレイの判定
    表2は、ロールプレイの判定基準です。
    特徴3で述べたように、各ロールプレイは、「課題が達成できたか、できなかったか」という観点で、達成度により四段階で判定します。
    表2 ロールプレイの判定の基準(レベル共通)
    表2 ロールプレイの判定の基準(レベル共通)の画像

    マニュアルやガイドラインに、レベル別の「判定の指標」を載せてあります。これは、◎○△×それぞれの特徴を説明したもので、判定に迷った場合、参考にすることができます。表3はA2の「判定の指標」です。

    表3 A2の「判定の指標」
    表3 A2の「判定の指標」の画像
  3. (3)レベルごとの判定
    JFロールプレイテストでは、一つのレベルで最大三回までロールプレイを行います。判定のルールは①~④の通りです。
    • ロールプレイの結果が一回でも◎になった時点で、そのレベルの課題は「達成できた」とする。
    • 一回でも×になった時点で、そのレベルの課題は「達成できなかった」とする。
    • ○あるいは△が一回だけの時は、証拠不十分のため「判定を保留」して、同じレベルのロールプレイをもう一度する。
    • ○が二回になった時点で、そのレベルのタスクは「達成できた」とする。△が二回になった時点で、そのレベルのタスクは「達成できなかった」とする。
  4. (4)最終的な判定
    (1)で述べたように、このテストは一つのレベルのロールプレイを実施しただけでは終わりにしません。(3)のルールに従って、最初のレベル判定を確定したら、できた場合は一つ上、できなかった場合は一つ下のレベルに進みます。B1から始めた場合、最終判定は「B2以上」「B1」「A2」「A2未満」の四通りになります(図1)。

    JFロールプレイテストは、学習者に近い(または一番多い)と思われる二つのレベルに絞って実施することにより、簡便にレベルが把握できる設計になっていますが、教育現場の状況に応じて、A1から順番にレベルを上げていくという進め方にしたり、特定のレベルだけを実施したりすることも可能です。
    またロールプレイのタスク内容も、必要に応じて変更できます。マニュアルではその手順も解説してあります。
    このように、現場に合わせたカスタマイズが可能なのも、JFロールプレイテストの特徴です。JFロールプレイテストを活用して、教育環境に合ったテストを実施してみてくださいね!

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