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関西国際センターは設立20周年を迎えました。
日本語教育ニュース
このコーナーでは、国際交流基金の行う日本語教育事業の中から、海外の日本語教育関係者から関心の高いことがらについて最新情報を紹介します。
国際交流基金関西国際センター
関西国際センターと研修参加者
国際交流基金関西国際センターは、1997年5月、大阪府の南にある泉南郡田尻町に日本語研修施設として設立され、2017年に20周年を迎えました。開設以来、「ひらく・つなぐ・つくる」を合言葉に、ことばのとびらを開いて、日本と世界をつなぎ、あたたかいコミュニティをつくることを目指して事業を行ってきました。
具体的には、海外の外交官、公務員、研究者、大学院生、司書、学芸員の方を対象にそれぞれの仕事や研究に役立つ専門日本語の研修や、海外の日本語学習者を対象に体験型の研修を実施してきました。これまで世界各地から1万人以上の方が研修に参加し、研修終了後は、在日大使館の外交官として赴任したり、日本研究の研究者になるなど、多くの方が多方面で活躍しています。
また、当センターでは、研修のノウハウを活かして、いろいろな日本語教材を開発しています。特に近年、情報通信技術(ICT)の発展により、学習環境が変化し、日本語学習者のニーズも多様化してきました。それに応えるため、日本語オンラインコース、日本語学習サイトやアプリなどのeラーニング教材の開発を行っています。
こちらの動画では、日本語研修の様子や研修参加者の声を紹介しています。
動画でみる関西国際センター
当センターで開発した教材やeラーニングの情報は、こちらからご覧ください。
eラーニング・開発教材
20周年を記念して、シンポジウムや講演会を行いました。
設立20周年を記念して、2017年度に下記の事業を行いました。
- (1)eラーニングシンポジウム
- (2)研修修了生による講演会
- (3)研修修了生の著作リスト『国際交流基金関西国際センター研修参加者の著作400冊』の作成
- (4)研修修了生からのお祝いメッセージ発信のためのFacebookページ開設
- (5)事業協力者の方との感謝の集い
その中から、「(1)eラーニングシンポジウム」と「(2)研修修了生による講演会」の様子を紹介します。
◆eラーニングシンポジウム
外部専門家を交えたパネルディスカッション
2017年8月に「日本語学習者のためのeラーニングとは‐関西国際センターにおける開発と運用‐」と題したシンポジウムを開催し、日本国内外から日本語教育関係者約130名に参加していただきました。
セッション1では、当センターがどのように日本語学習のためのウェブサイトやアプリを開発してきたのかを紹介しました。次のセッション2では、2016年に公開した学習管理システム(LMS)を備えた日本語学習プラットフォーム「JFにほんごeラーニング みなと」の紹介と、そこで開講している日本語オンラインコースの制作と運用について報告しました。最後に、セッション3では、eラーニングに詳しい大学教授のお二人を交えてパネルディスカッションを行いました。お二人からは、eラーニングの最新動向を踏まえた事例や、日本語教育におけるICTの変遷とeラーニングの現代的な役割と意義等についてお話しいただきました。
このシンポジウムを通して、参加者の方からeラーニング事業への期待の声が多く寄せられました。今後も日本語教育におけるeラーニングの可能性を皆様と共に考え続けていきたいと思います。
当日のプログラム、投影したスライドを含む詳細は、こちらからご覧ください。
20周年記念シンポジウム報告
◆研修修了生による講演会
当センターでは1997年の開設以来、日本を研究対象とした研究者や大学院生、日本関連資料を扱う司書、学芸員を対象とした専門日本語研修を行っています。研究や業務に必要な日本語能力の向上を目標に、実際の専門活動に即して日本語が学べる研修となっています。2017年度は、研修後の成果を多くの方々に理解していただくため、研修修了生の研修成果を披露する講演会を行いました。
先輩と後輩が意見交換
講演会は、6月と12月、そして2月の計3回行いました。12月に行われた2回目の講演会には、これまで当センターで学んだ7つの国・地域からの25名の研修修了生や、現役の研修参加者、そして研修参加者をいつもサポートしてくださっている近隣の方々など、合わせて約60名の参加がありました。研修修了生の著作物の紹介の後、2016年度文化・学術専門家日本語研修(6ヶ月コース)の参加者で韓国のマンガ評論家でもある趙益常(ジョ・イクサン)氏が、「漫画の森で出会った『奈良の森には』」というタイトルで代表講演を行いました。関西地方への旅行をテーマにしたマンガと自分の研修での経験を重ね合わせて紹介し、文化や国、専門が異なる人々との交流の意味について語りかけました。聴衆にとって、研修の意義、成果を理解する時間となりました。講演会後に行われた交流会では、現役の研修参加者が研修修了生に日本語でインタビューし、その後当センターの講師らも加わってグループに分かれ、日本語研修の歴史や意義を振り返るとともに、未来に向かっての課題について話しました。
今回紹介した文化・学術専門家日本語研修(2ヶ月コース、6ヶ月コース)の応募方法や研修期間等の詳細は、こちらからご確認ください。
文化・学術専門家日本語研修【公募プログラム】
これからも「ひらく・つなぐ・つくる」センターへ
研修修了生からは、「日本語の授業や会話の練習を重ねることで日本語能力に自信を持つことができた」「日本語をもっと勉強して日本に留学したい」「日本の人々の温かいもてなしに感動した」「生涯の友達ができた」といった感想が寄せられています。また、開発、運用しているeラーニングサイトやアプリも世界中の方々が利用してくださっています。
開設から20年、多くの方に「ひらく・つなぐ・つくる」の想いを届けてきました。これからも、ことばのとびらを開いて、日本と世界をつなぎ、あたたかいコミュニティをつくる、そんな日本語研修施設であり続けたいと考えています。今後とも、関西国際センターをどうぞよろしくお願いいたします!
日本語授業の様子
浴衣の着付け体験の様子
関西国際センターでは、海外の日本語教育機関等の委託を受け、ご要望に沿った日本語研修プログラムを実施する「受託研修」を行っています。費用や研修日程等の詳細は、こちらからご確認ください。
受託研修案内
注
関西国際センターFacebookページ
公式SNS(Facebook 、Twitter )では、関西国際センターが開発、運用している日本語学習ウェブサイトやアプリ、日本語オンラインコース情報を中心に投稿していますので、ぜひご覧ください。
(田中哲哉・和栗夏海/関西国際センター日本語教育専門員)