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無料で使える新教材
『いろどり 生活の日本語』

日本語教育ニュース
このコーナーでは、国際交流基金の行う日本語教育事業の中から、海外の日本語教育関係者から関心の高いことがらについて最新情報を紹介します。

2021年4月
国際交流基金日本語国際センター

 『いろどり 生活の日本語』(以下、『いろどり』)は、国際交流基金が新たに制作した日本語教材です。2020年3月に「初級1」と「初級2」が、2020年11月に「入門」が公開され、現在では全3部がそろって公開されています。

『いろどり』サイトトップページ画像 クリックするといろどりサイトにリンクします。
『いろどり』サイト(www.irodori.jpf.go.jp

全て無料で使えます!

 『いろどり』の特徴は、なんと言っても全てが無料で使えること。世界のどこからでも、ウェブサイトからPDFファイルを無料でダウンロードできますので、タブレットやスマホに入れて見たり、印刷して使ったりすることができます。3部合計で全1,433ページ!これだけの教材が全て無料で自由に入手できます。

『いろどり』サイトで「初級」ダウンロードページを開けたところ(画像)クリックするといろどりサイトにリンクします。

『いろどり』はこんな学習者にぴったりです!

 『いろどり』は、「生活の日本語」というサブタイトルが示すとおり、日本で生活する人のための教材です。JF日本語教育スタンダードで言うと、「入門」はA1、「初級1」「初級2」はA2レベル。はじめて日本語を学ぶ人が、日本でなんとか生活できるぐらいの基礎的な日本語を身につけることが目標です。自己紹介をしたり、飲食店で注文したり、交通機関を利用したりという初歩的なレベルから始めて、病院に行ったり、旅行をしたり、地域のイベントに参加したり、地震や台風に備えたり、職場の人に将来の夢を語ったりします。

各課のトピック一覧
  入門 初級1 初級2
第1-2課 はじめての日本語 今の私 私の周りの人たち
第3-4課 私のこと 季節と天気 レストランで
第5-6課 好きな食べ物 私の町 旅行に行こう
第7-8課 家と職場 いっしょに出かける 地域のイベント
第9-10課 毎日の生活 日本語学習 年中行事とマナー
第11-12課 私の好きなこと おいしい料理 上手な買い物
第13-14課 街を歩く 仕事の連絡 さまざまなサービス
第15-16課 店で 健康な生活 自然と環境
第17-18課 休みの日に 交際 私の人生

 「これから日本に行きたい」という人にも、いま日本に住んでいるけれど、日本語がまだあまり上手ではない人にも、ぴったりの教材です。また、日本の生活場面での基礎的な日本語能力があるかどうかを判定するテスト、「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」の準備にも役立てることができます。

JFT-Basicのサイトトップページ画像 クリックするとJFT-Basicサイトにリンクします。

日本での生活の中で「できる」ことを増やします!

 『いろどり』では、日本の生活場面において、日本語を使って何が「できる」ようになるかを「Can-do」で表し、これを学習の目標としています。例えば、「入門」なら「名前や出身などを言って、簡単な自己紹介をすることができる」「外出先で、トイレやATMなどの場所を質問することができる」など、「初級」なら「職場に、電話で休みや遅刻の連絡をすることができる」「飲食店についてのネットの口コミを読んで、味や値段などの情報を読み取ることができる」「電気製品を買うとき、店の人に商品について質問したり、安くしてもらうよう頼んだりすることができる」などのように、日本での実際の生活の中で必要になるさまざまなことが、学習の目標になっています。

Can-doに関係したシチュエーションイラスト(電気製品店で店員に商品について質問している様子)

「できる」を達成するためのさまざまな活動!

 各課の活動では、このCan-doを達成するために、いろいろなタスクを順番に行っていきます。まず、音声をたくさん聞きます。『いろどり』の音声は、ファイル数にして1,129個、時間にすると全部で9時間18分もあります。もちろん音声も全て無料。ダウンロードして聞くこともできますし、サイトから直接ストリーミング再生することもできます。音声をたくさん聞くことで耳を慣らし、日本での生活に備えます。また、初めに日本語を大量にインプットすることで、続くアウトプットのための活動につなげていきます。音声を聞いたあとは、おおまかな内容を理解したり、シャドーイングしたり、ロールプレイをしたりと、日本語を実際に使えるようになるための練習が続きます。
 練習の流れは最新の教授法や第二言語習得理論の成果を取り入れていますので、授業は教科書通りに進めればOK。経験の浅い先生でも、あまり苦労しないでスムーズに進めることができます。

吹き出し会話のツリー画像(食べ物の好き嫌いを言う)クリックすると拡大画像が表示されます。

日本で使われているレアリアを再現!

 読んだり書いたりする練習には、店のメニューや広告、街の看板、SNSやメッセージツールの画面など、実際に使われているもの(レアリア)や、これをできるだけ本物に近く再現した素材を使います。日本での生活の中で目にする物を使いながら、実際の場面に近い状況で、「できる」ことを増やしていきます。
 また、レアリアのほかにもカラーの写真やイラストをたくさん使っています。きれいで楽しい紙面は、学習者のモチベーションを高めます。

ハンバーガー店のメニュー、営業時間(ランチ・ディナー)の看板、入れ墨タトゥーお断りの張り紙、猫ラインスタンプの画像 クリックすると拡大画像が表示されます。

生きた表現がたくさん!

 日本で生活できることを目標とした『いろどり』では、日本の日常生活で実際によく聞く日本語がたくさん使われています。例えば動詞の否定形は、ほとんどの初級教科書では「Vません」だけを習いますが、『いろどり』では最初から「Vないです」もいっしょに習います。これは、日常会話では「Vません」よりも「Vないです」のほうが多く使われているからです。また「入門」の初めのころから、「です・ます」を使わないで普通体で話す人の会話もたくさん聞きます。そのほか、「すいません」「見れる」などのような、口語体やカジュアルな言い方も多く使われています。日本の生活では、このような日本語を聞くことが多いので、早い段階からこれらを聞いて理解できるようにします。こうしたことは、『いろどり』ならではの特徴で、日本での生きたコミュニケーションを学ぶのに役立ちます。

文法などの言語知識もしっかり学びます!

 Can-doを目標にした教科書だと、文法がきちんと扱われていないのでは?という誤解がときどきありますが、『いろどり』では文法もしっかり学びます。各課の活動では、Can-doを達成するためにどんな文型や表現が使われていたかに注目します。それから、その意味や使い方を自分自身で考え、日本語のルールを発見します。教師が一方的に説明するのではなく、学習者が考えて、形や使い方のルールに気付くことで、より深く文法を学べる仕組みになっています。

文法ノートページ画像 クリックすると拡大画像が表示されます。

 文法だけでなく、漢字を勉強するコーナーもあります。『いろどり』では、「入門」「初級1」「初級2」を通じて全部で429字の漢字を習います。全て会話や読解文の中で出てきたことばに使われている漢字ですので、文脈の中で、意味を考えながら学ぶことができます。

漢字のことばページ画像 クリックすると拡大画像が表示されます。

日本の生活や文化についてのコラムも充実!

 各課の最後には、「日本の生活TIPS」というコラムもあります。そこでは、たくさんの写真を使いながら、日本のさまざまなことを紹介しています。日本の食べ物、観光地、年中行事などの説明はもちろん、マンガ、アニメ、文学、スポーツ、J-POPなどについての解説もありますし、バスの乗り方、トイレの使い方、カラオケボックスの利用のし方などもあります。日本文化や日本事情を知るだけでなく、日本で生活する上で便利な知識も身につけることができます。授業中に、日本語の活動と関連づけて読むこともできますし、何か日本紹介の記事を書くときなどに、このコラムの記事をそのまま使ったりすることもできるでしょう。

写真の多いTIPSのページ画像(英語と日本語で解説)クリックすると拡大画像が表示されます。

『まるごと』といっしょに使えます!

 『いろどり』は、同じく国際交流基金の制作した日本語教材『まるごと 日本のことばと文化』(以下、『まるごと』)の姉妹編とも言えます。『まるごと』は、主に海外で、日本語や日本文化への興味・関心から日本語を学ぶ人たちを対象にした教材で、レベルも中級(B1)まであります。一方、『いろどり』は、日本で生活する人たちを対象に、初級レベル(A2)までの基礎的な日本語を身につけることを目標にした教材です。『いろどり』と『まるごと』は、各課のトピックや文法が、ゆるやかに関係づけられているので、相互の利用が可能です。
 例えば、『いろどり』の補助として、「まるごと+(まるごとプラス)」や「JFにほんごeラーニング みなと」のまるごとコースなどのウェブサイトを使うこともできます。逆に、『まるごと』を教えるときに、『いろどり』の活動を使ったり、「文法ノート」や「日本生活TIPS」を読ませたりすることもできます。
 また、『いろどり』での勉強を「初級2」まで終えたあと、もっと勉強を続けたいときには、『まるごと』の「初中級」や「中級」に進むと、スムーズに学習を継続することができます。『いろどり』と『まるごと』から、使いたい部分をうまく使えば、教え方の可能性が大きく広がるでしょう。

  • 『いろどり』シリーズ(3部)を並べた画像
  • 『まるごと』シリーズ(9冊)を並べた画像

これからも広がる『いろどり』の世界!

 『いろどり』本冊は、「入門」「初級1」「初級2」の3部で完結ですが、今もサイト上では、「文型リスト」「漢字リスト」などの関連資料が続々と公開されています。今後も、「語彙リスト」や「教え方授業動画」などの公開が予定されています。また、国際交流基金の海外事務所等によって、各国語版の制作も進められており、このうちのいくつかは、すでに完成して入手することができます。

各国語版 | いろどり 生活の日本語

『いろどり』別言語バージョン画像 クリックすると拡大画像が表示されます。

 これに加えて、『いろどり』は著作権的に、教材に自由に加工したり、それをシェアしたりしてもよいことになっています注1ので、『いろどり』の公開直後から、世界各国の先生が、さまざまな自主制作教材を作り、ネット上でシェアしてくださっています。例えば、PDFと音声を貼った授業用のパワーポイントのスライドや、本文にローマ字を振ったPDF、「日本生活TIPS」の別言語の翻訳などが、現在Twitterや「みんなの教材サイト注2の「みんなの広場」などで公開されています。またTwitterでは、「#irodorijp」「#いろどり」のタグで、『いろどり』の授業報告や使った感想などもシェアされています。世界の先生たちと『いろどり』を通じて繋がり、教材や教え方を共有することができるのです。

各国の先生が作った『いろどり』教材の一覧 クリックすると拡大画像が表示されます。
「みんなの教材サイト」に投稿された「いろどり」関連教材

u-z-(@UjiieYuta)さんのTwitter画面(『いろどり』各課のパワーポイントのリンクが並ぶ) クリックするとu-z-(@UjiieYuta)さんのTwitterにリンクします。
u-z-(@UjiieYuta)さんによるPowerPointのスライド

 現在、国際交流基金関西国際センターによって、『いろどり』をオンラインで学べるeラーニングサイト「いろどり日本語オンラインコース」の制作が進められており、2021年の5月には初級1(A2)コースを開講する予定です。どんどん広がる『いろどり』の世界。みなさんも、まずはぜひ教材をダウンロードして、その世界を見てみてください!

注:

  1. 1.著作権の詳細は「このサイトについて」の「著作権・利用指針」を見てください。
  2. 2.みんなの教材サイト」は登録制ですので、初めての方はユーザー登録が必要です。

(磯村一弘・藤長かおる/日本語国際センター専任講師)

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