日本語教育ニュース 本物のマンガを日本語で!「アニメ・マンガの日本語B1B2(ブラック・ジャック)自習コース」

日本語教育ニュース
このコーナーでは、国際交流基金の行う日本語教育事業の中から、海外の日本語教育関係者から関心の高いことがらについて最新情報を紹介します。

2025年1月
国際交流基金関西国際センター

日本語学習者の中には、「マンガを日本語で読んでみたい!」という人もいるでしょう。でも、マンガを日本語で読むのはハードルが高い…と思ってしまうことも少なくないかもしれません。今回は、そんな学習者にぴったりなオンラインコース「アニメ・マンガの日本語B1B2(ブラック・ジャック)自習コース」を紹介します。

「アニメ・マンガの日本語」コース

「アニメ・マンガの日本語B1B2(ブラック・ジャック)自習コース」(以下、「BJコース」)は、マンガ『ブラック・ジャック』のうち1話を読んで楽しむコースです。2024年7月に日本語学習プラットフォーム「JFにほんごeラーニング みなと」で開講しました。アニメやマンガが好きなB1・B2レベルの学習者が主な対象で、本物のマンガを読んで楽しむ経験ができるコースです。

「みなと」で開講しているアニメ・マンガを扱ったコースにはこれまでも「アニメ・マンガの日本語A1(あいさつ)自習コース」「アニメ・マンガの日本語A2(学校場面)自習コース」がありました。A1はアニメ・マンガによくあるキャラクターになりきってあいさつや自己紹介をするコース、A2は学校場面の表現を学び、セリフをアフレコするコースです。3つのコースは、いずれも日本語学習への動機づけと、日本語を通してアニメ・マンガを楽しむことを目的としています。

マンガ『ブラック・ジャック』

コース概要の前に、まずはマンガ『ブラック・ジャック』について紹介します。『ブラック・ジャック』は、「マンガの神様」と呼ばれる手塚治虫の作品で、天才的な技術を持つ医者、ブラック・ジャックが主人公のマンガです。医師の免許を持っていた手塚治虫は、自分がもし医者になるならこんな医者になりたいと思って『ブラック・ジャック』を描いたそうです。1974年から1983年まで雑誌で連載されたマンガですが、今でも手塚治虫の作品約700タイトルの中で、最も人気があるもののひとつです。

「BJコース」では、『ブラック・ジャック』全242話の中から「オペの順番」という話を読みます。25ページのドラマをぜひ楽しんでください。

「アニメ・マンガの日本語(ブラック・ジャック)B1B2自習コース」のトップ画像
コースのイメージ
マンガ:(c)手塚プロダクション

「アニメ・マンガの日本語B1B2(ブラック・ジャック)コース」の概要

「BJコース」では、次の3点を目標Can-doとしています。

  1. 1.ごいや表現の説明があれば、本物のマンガを読んで内容をだいたい理解し楽しむことができる。
  2. 2.アニメやマンガで使われる表現を知って、場面をイメージすることができる。
  3. 3.マンガを読んだ感想や自分が考えたことを日本語で表現できる。

コースの流れは以下の通りです。1~8の学習を通して目標Can-doを達成することを目指します。

  1. 1コースについて : コース目標や学習の流れ、作品についての基本的な情報を確認します。
  2. 2マンガを読む : 本物のマンガをスクロール式でそのまま読みます。
  3. 3サポート付きマンガ(Option) : ごいや表現のサポートを見ながらマンガを読みます。
  4. 4内容の確認、表現の確認、マンガをもう一度読む : ストーリーの内容やマンガ表現の理解を確認します。そしてもう一度マンガを読んでみます。
  5. 5自分の考えを書く : 自分の意見を投票したり、グループに書いたりします。
  6. 6テスト : 学習した内容について理解できているか確認します。
  7. 7アニメで見る、ブラック・ジャックを知る(Option) : 同じストーリーをアニメで見たり、『ブラック・ジャック』についてより詳しく知ったりします。
  8. 8ふりかえり : 作品や自分の学習をふりかえり、Can-doチェックをします。
  • 「コースの流れ」の説明画像
    1 コースについて

  • パソコンとスマートフォンそれぞれで見るマンガの画面
    2 マンガを読む

  • マウスオーバーなどサポート付きのマンガの画面
    3 サポート付きマンガ
    (マウスオーバー表示/横に表示)

  • 内容を確認する画面
    4 内容の確認
     

  • 「自分の考えを書く」画面
    5 自分の考えを書く

  • もっと知りたい『ブラック・ジャック』の画面
    7 ブラック・ジャックについて知る

コースの特徴

このコースは、日本語でマンガを読んで楽しむことを目的としていることが特徴です。ごいや文型などを学ぶために加工されたマンガではなく、本物のマンガを1話まるまるそのまま読めることが最大の魅力でしょう(2 マンガを読む)。画面をたてにスクロールして読んでいく形で、PCやスマートフォンでマンガを読むのに慣れた学習者がマンガの世界に入り込んで読むことができます。また、日本語部分を拡大して見るなど表示サイズの調整も可能です。

マンガをそのまま読むのが難しい場合には、ごいや表現のサポートを確認しながらマンガを読むことができます。(3 サポート付きマンガ)。学習者の日本語レベルやそれぞれのマンガの読み方に対応できるよう、(1)マウスオーバーで表示、(2)画面の横に表示、(3)ダウンロード用リストの3つの形式があります。スピード感を持ってマンガを読みたい、あるいはわからない所をひとつずつ確認しながら読みたいなどそれぞれのニーズにあったものを使ってください。

ストーリーの内容やマンガ表現は、インタラクティブな教材を使って確認します(4 内容の確認)。話のあらすじを順に並べたり、吹き出しの中に適切なセリフをドラッグして入れたりして、紙のマンガではできない体験を通して楽しみながら学習することができます。

コースでは、「自分の考えを書く」活動で投票を取り入れていることも特徴のひとつです(5 自分の考えを書く)。オンラインの自習コースの場合、アウトプットの活動は設定されていても見るだけでさっと通り過ぎてしまいがちです。自分だったらどうするか考え投票すること、その投票結果をすぐに見て自分の考えと同じ人が多いのかどうか知ることで、自分自身の考えを改めて確認したりその理由を実際に書いたりすることにつながっていきます。

コースの最後にはぜひ同じストーリーをアニメで見てほしいと思います(7 アニメで見る)。コースでの学習に、アニメを見る体験が加わることで、より満足感や達成感が得られるはずです。

受講者の声

実際にコースを受講した方の反応を、いくつか紹介します。学習者がマンガを楽しんでいること、『ブラック・ジャック』という作品が普遍的な面白さを持ち学習者をひきつけていることがうかがえます。

  • 古いマンガだと思っていたが、読んでみると面白かった。このあとアニメも見るつもりです。
  • サポートリソースのおかげで楽しめたし、勉強にもなった。
  • 主人公のキャラクターとストーリーのメッセージが印象に残った。
  • これまでマンガはあまり価値がないと思っていたが、この作品を読んで興味深いマンガもあると知った。
  • マンガを読みながら、新しい言葉と文化を習って、うれしかった。

また、「BJコース」は、マンガを通して日本語を学ぶことが主目的ではありませんが、マンガを楽しみ作品を味わうことが日本語を使った実践的な活動になっていて、結果的に日本語力の定着・向上にもつながっているようです。

おわりに

みなさんのアニメ・マンガが好きな学習者もきっとコースを楽しめるのではないかと思います。そしてコースでの学びが、学習者が日本語で本物のマンガを読み、マンガの世界をもっと知っていくきっかけとなればうれしいです。

(石井容子・三宅直子・北口信幸/関西国際センター日本語教育専門員)

What We Do事業内容を知る