日本語教育ニュース 日本語能力試験(JLPT)の結果にCEFRレベルの参考表示を追加します!
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このコーナーでは、国際交流基金の行う日本語教育事業の中から、海外の日本語教育関係者から関心の高いことがらについて最新情報を紹介します。
2026年1月
国際交流基金日本語試験センター
1.JLPTにおけるCEFRレベル参考表示の導入とその背景
日本語能力試験(以下、JLPT)は、国際交流基金(JF)と日本国際教育支援協会が実施する、日本語を母語としない人の日本語能力を測定し認定する試験です。世界最大規模の日本語の試験で、2024年には日本を含めた96の国・地域で約172万人が応募しました。JLPTには5段階のレベル(N5・N4・N3・N2・N1、N1が最高レベル)があり、学習者は自分の日本語能力に合ったレベルを選んで受験することができます。
ヨーロッパ言語共通参照枠(Common European Framework of Reference for Languages:Learning, teaching, assessment【PDF:10MB】、以下CEFR)は、欧州の言語学習・教育・評価の場で共有するための枠組みとして、2001年に欧州評議会(Council of Europe)により発表されました。CEFRでは、外国語の熟達度を6つのレベル(A1・A2・B1・B2・C1・C2、C2が最高レベル)に分け、各レベルで外国語を使ってどのようなことができるかを、言語能力記述文(「~できる」という文、以下「能力記述文」)で示しています。
CEFRは40もの言語に翻訳されており、言語や国境を越えて、外国語の運用能力を同一の基準で表示することができる国際的な枠組みとして広く活用されています。日本語に関しても、日本の文化庁が「日本語教育の参照枠」(報告)【PDF:6.7MB】(以下、「参照枠」)を、JFが「JF日本語教育スタンダード」を、CEFRを参考とした日本語学習・教授・評価のための枠組みとして発表しています。 「参照枠」では、学習・教育内容の多様化が進む中、各試験が判定する日本語能力についての共通の指標を整備し、利用できるようにすることが必要となってきたとの考えが示されました。これを踏まえ、JLPTの受験者をはじめとした関係者が、JLPTの結果を国際的な枠組み(CEFR)に当てはめて、参考とすることができるように、各種検証作業を経て、JLPTの結果にCEFRレベルの参考表示を追加することにしました。これにより、例えばJLPTのN4合格者の日本語能力はCEFRのどのレベルに相当するかを知ることができるようになります。
2.JLPTのCEFRレベル参考表示
2025年12月試験から、JLPTの成績書類の参考情報のひとつとして、CEFRレベルを通知します(図1の赤い囲みの部分)。合格者には、JLPTの総合得点に対応するCEFRレベルが表示されます。不合格者(総合得点が合格点以上であっても、基準点に達していない得点区分がひとつでもある者を含む)にはCEFRレベルは表示されず、「*」が表示されます。
●N1、N2、N3向け

●N4、N5向け

図1 JLPT合格者への通知例
JLPT各レベルの総合得点とCEFRレベルの対応関係は図2の通りです。

図2 JLPT(N5~N1)総合得点とCEFRレベル(A1~C1)の対応
JLPT各レベルの総合得点に対応したCEFRレベルが参考表示されます。総合得点は、N5とN4は「言語知識(文字・語彙・文法)・読解」と「聴解」の合計点、N3、N2、N1は「言語知識(文字・語彙・文法)」「読解」「聴解」の合計点です。
具体的な参考表示は以下の通りとなります。
- N5では、総合得点80点(合格点)以上はすべてA1レベルと表示されます。
- N4では、総合得点90点(合格点)以上はすべてA2レベルと表示されます。
- N3では、総合得点95点(合格点)以上103点まではA2レベル、104点以上はB1レベルと表示されます。
- N2では、総合得点90点(合格点)以上111点まではB1レベル、112点以上はB2レベルと表示されます。
- N1では、総合得点100点(合格点)以上141点まではB2レベル、142点以上はC1レベルと表示されます。
N3、N2、N1では、一つのレベルの中でも総合得点によって参考表示されるCEFRレベルが異なります。図2の各CEFRレベルの高さ(幅)は得点を示すもので、合格者の割合を示すものではありません。
なお、JLPTのCEFR参考表示は、CEFRの「言語能力」と「受容活動能力」(聞く・読む能力のこと)に対応するもので、「産出活動」(話す・書く能力のこと)や「やりとり」の能力は含まれません。JLPTで測っている「言語知識」「読解」「聴解」は、CEFRの「言語能力」と「受容活動能力」に当たります(図3の赤い囲み部分)。

図3 CEFR CV 言語能力総観図
出典:欧州評議会(2020)『言語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠 随伴版』13 ページ © Council of Europe, 2020 - 英語版、© Goethe-Institute Tokyo, 2023-日本語版(赤い囲みはJFにて追加)
3.JLPTのCEFRへの対応づけの方法
CEFRを発表した欧州評議会では、CEFRを参照する語学試験のために、CEFRとの対応づけのマニュアル(Relating Language Examinations to the Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment (CEFR). A Manual【PDF:3.6MB】)を2009年に公開しています。文化庁の「参照枠」でもこのマニュアルが引用されており、JLPTもそれに基づいてCEFRへの対応づけを行いました。JLPTのCEFRへの対応づけでは、図2のようにJLPTの各レベルの総合得点とCEFRのレベルの対応関係を明らかにしました。たとえばJLPTのN3では、合格者の総合得点103点まではCEFRのA2レベル、104点からはB1レベルとなっていますが、この境界線を引くことを対応づけのための「基準設定」と言います。
国際交流基金日本語試験センターでは、2024年10月に、JLPTの読解試験と聴解試験の「基準設定セッション」を実施しました。日本国内外のCEFR、試験と評価、そして日本語学習者の能力発達段階に詳しい専門家12名がそれぞれ判定者として参加しました。上述のCEFRとの対応づけのマニュアルに基づいて行った基準設定セッションの流れは次の通りです。
- (1)CEFRへの理解を深める (Familiarisation)
対応づけの元となるCEFRのレベル感や能力記述文について、判定者全員の理解をそろえるため、事前課題として各自で能力記述文のレベルチェックを行い、その結果を踏まえて全員で十分に議論する。 - (2)対象となる資格・検定試験を自己点検し、明確化する (Specification)
対応づけの対象となるJLPTについて、試験機関(国際交流基金日本語試験センター)自身がCEFRの観点から分析した結果を判定者に報告する。 - (3)標準化トレーニングを行い、レベルを設定する (Standardisation)
判定者が、JLPTの試験問題を分析し、CEFRとJLPTの対応関係を詳しく検討する。 - (4)基準を設定し、CEFRの段階別表示に位置付ける (Standard setting procedures)
判定者が、易から難の困難度順に並んだJLPTの試験問題群の間にCEFRレベルの境界線を特定する。
また、今回の基準設定では(1)~(4)の他に、2つのプロセスを加えました。 一つ目は予備調査で、JFの附属機関で、CEFRを参考にしたJF日本語教育スタンダードに基づいた教育を行っている日本語教育専門員を対象に、JLPTの試験問題をCEFRレベルで判定する調査を行い、その結果を基準設定セッションでも共有しました。
二つ目はJLPTにCEFRレベルを適用するための工夫で、CEFRの各レベルの能力記述文で大規模試験には適用しづらいものについて、試験機関の分析や考え方を示し、セッションで判定者と意見交換を行いました。
このような手続きを経て、JLPTの読解試験と聴解試験のCEFRレベルの基準設定を行いました。そして、その結果から言語知識の得点を推定して、総合得点とCEFRレベルの対応づけを行った結果が図2になります。なお、JLPTが対応するCEFRレベルはA1からC1まででした。
以上、試験に関する内容のため、詳しく説明できなかった部分もありますが、JLPTサイトのCEFRレベル参考表示に関する情報やFAQもぜひ参考にしてください。
今後JLPTのCEFR参考表示が世界の日本語教育で役立てられることを期待しています。
参考文献:
「日本語能力試験のCEFRレベル参考表示に向けて―対応付けの手続きを中心に」【PDF:806KB】
(国際交流基金日本語試験センター)