「樂-茶碗の中の宇宙」展
7月より、ロシアの2大美術館・エルミタージュ美術館、プーシキン美術館で開催
国際交流基金(ジャパンファウンデーション)と樂美術館は、本年3月から6月にかけて、米国ロサンゼルス・カウンティ美術館で開催され、好評を得た「樂-茶碗の中の宇宙」展を、ロシアが世界に誇る、エルミタージュ美術館並びにプーシキン美術館において、7月より順次開催します。
この度のロシア展では、重要文化財である初代長次郎「二彩獅子」(樂美術館蔵)、「黒樂茶碗 銘ムキ栗」(文化庁蔵)、「赤樂茶碗 銘無一物」(頴川美術館蔵)などの名品が一堂に展示されます。また、樂歴代の作品、本阿弥光悦の作品に加え、当代(十五代)樂吉左衞門の多様な作家活動のほか、次世代(十六代)の作品を紹介することにより、それぞれの時代感覚を反映させながら、独自の美を追求してきた樂焼の美的精神世界を通観いたします。あわせて、樂焼成立の時代背景を紹介するため、「洛中洛外図」に代表される装飾性豊かな絵画作品も同時に展示されます。
千利休による「わび」茶の思想の最も直接的な反映とされる長次郎のモノトーンの静けさに沈む茶碗、当代吉左衞門の個性的で革新的な作品、同時代の絵画作品を合わせて総点数約170点の本展は、ロシアで初めて本格的に樂焼を紹介する展覧会として大きな注目を集めるものと期待されます。
ロサンゼルス展の詳細は事業ページをご覧ください。
なお、ロシア展開催にあわせ、エルミタージュ美術館で樂吉左衞門による特別講演を行います。また、エルミタージュ美術館とプーシキン美術館の両方で、裏千家による茶道講演会およびデモンストレーション、金剛流 ロシア能楽公演を開催します。詳細はそれぞれ講演会のページ、能楽公演のページ、茶道講演会のページをご覧ください。
「をちこちMagazine」に、本展に自身の作品を出品し、サンクトペテルブルク、モスクワを訪れた樂篤人氏の寄稿を掲載しました。
NHK WORLD公式YouTubeに、「樂-茶碗の中の宇宙」展がエルミタージュ美術館で開幕した際の報道(英語)が掲載されています。
https://www.youtube.com/watch?v=tg5g9vyh304
長次郎 黒樂茶碗 銘 ムキ栗(重要文化財)
文化庁蔵
吉左衞門 焼貫黒樂茶碗
個人蔵
photo:Takashi Hatakeyama
展覧会概要
主催 | 独立行政法人国際交流基金、公益財団法人樂美術館、エルミタージュ美術館、プーシキン美術館 |
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共催 | 在ロシア日本国大使館、在サンクトペテルブルク日本国総領事館 |
企画協力 | 京都国立近代美術館 |
協力 | フィンエアー、フィンエアーカーゴ、日本航空株式会社 |
展覧会専門委員会 | 林屋晴三(頴川美術館理事長) 赤沼多佳(三井記念美術館参事) 伊藤嘉章(京都国立博物館副館長) 樂吉左衞門(樂家15代当主、樂美術館理事長・館長) |
キュレーター | 松原龍一(京都国立近代美術館学芸課長) タチアナ アラポヴァ(エルミタージュ美術館学芸員) アイヌーラ ユスポヴァ(プーシキン美術館学芸員) |
会期 | 2015年7月11日(土曜日)~9月6日(日曜日) 開館時間 火曜日、木曜日~日曜日 10時30分~18時 水曜日 10時30分~21時 月曜日は休館 |
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会場 | エルミタージュ美術館 |
会期 |
2015年9月22日(火曜日)~11月15日(日曜日) 開館時間
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会場 | プーシキン美術館 |
ステートメント
樂焼は16世紀創設以来450年の歴史を経て、今日に伝えられてきた日本独自な陶芸文化です。初代長次郎から15代にわたる樂歴代の伝えた伝統の精神は、それぞれの時代を生きる創造的な営みそのものでもあります。小さな手のひらに収まる茶碗という限られた造形世界の中に、自然との深い関わりを探求し、意識あるいは人為と自然、偶然性と必然、部分と全体、完と未完、充足と不足、など哲学的な思索、宇宙観と言うべき造形を追求してきました。それはブラックホールのような無窮の宇宙から、谷川の幽かなせせらぎに至るまで、茶碗の内側は将に手のひらに広がる「茶碗の中の宇宙」と言えましょう。それは古い価値の継承ではなく、まさに現在進行形の現在性を生きるアヴァンギャルドな取り組みと言えます。樂茶碗の中に秘められた思想性は、将に現代思潮とも響き合うものであり、ロシアはじめ世界におおきな意味をなげかけるものでしょう。
今回の展覧会は重要文化財、重要美術品を含み、樂歴代作品を中心に、現代を生きる「樂」として、私こと十五代吉左衞門、さらに「受け継がれる未来」として、近い将来十六代を継承することとなる樂篤人の仕事を含め展観いたします。出品作品の多くは京都、樂美術館から出品されています。樂美術館は昭和53年、十四代樂覚入によって設立、450年にわたって樂焼の伝統を伝えてきた樂家に伝来した歴代作品や資料、関係茶道美術品が寄贈されました。樂美術館のコレクションは永き歴史の中、樂歴代と共に今日に伝えられ、また歴代の制作の糧とされてきた作品でもあります。歴代はこれらの名品から学び、伝統の本質を理解し、また新たな挑戦を通じて自らの造形世界を作り上げてきました。まさに樂美術館は樂焼450年のエッセンスが詰まっている美術館と言えます。
本展はこれら樂美術館のコレクションを中心に、重要作品を所蔵する他美術館、また、茶の湯の創始者の千利休の子孫であり茶の湯文化を今日に伝える表千家、裏千家からも出品されるという日本国内でも滅多に見られない充実した展観内容となっています。今回の展覧会を通して、ロシアの皆様には樂焼世界を堪能戴き、深い理解と共感を戴く機会を得ましたことに心から喜びを感じるものであります。
樂吉左衞門
長次郎 赤樂茶碗 銘 無一物(重要文化財)
頴川美術館蔵
photo:Masayuki Miyahara
長次郎 二彩獅子(重要文化財)
樂美術館蔵
photo:Takashi Hatakeyama
[お問い合わせ]
国際交流基金(ジャパンファウンデーション)
文化事業部 事業第2チーム
担当:大平、森
電話:03-5369-6063 ファックス:03-5369-6038
Eメール:arts2@jpf.go.jp
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