カンボジア(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

2018年度日本語教育機関調査結果に関する帯グラフ。機関数は51件、教師は307名。初等教育は35名で全体の0.6%、中等教育は1,205名で全体の22.2%、高等教育は931名で全体の17.2%、学校教育以外は3,248名で全体の59.9%。

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 1960年代にクメール王立大学(現在の王立プノンペン大学)において日本政府が派遣した日本語教師によって日本語教育が始まる。しかし内戦のため1974年に中断された。
 その後、1990年頃よりNGOや日本人ボランティアによる日本語教育が始まり、本格的な再開は1993年12月、王立プノンペン大学へのJICA海外協力隊日本語教師派遣より始まった。同大学では1994年1月霊友会による一般向け講座が、4月にJICA海外協力隊による大学生対象の日本語コースが相次いで開講した。
 1995年にはプノンペンで、また1996年にはシェムリアップで民間学校が多数立ち上がり、続いて2001年にはNGOが支援するプノンペンの小学校のひとつでも日本語が教えられ始めた(現在閉校)。この頃、プノンペンの3大学でも日本語コースが開始されている。
 2005年10月には王立プノンペン大学外国語学部にカンボジア初の日本語学科が開設され、国際交流基金からの専門家派遣が開始された。この年カンボジア日本語教師会(CAJALTA)が発足。2007年になるとシェムリアップ地方でアンコールワット日本語教師会も発足し、同年アンコール大学で日本語コースが開講されるなど、特にプノンペンとシェムリアップの2地域の日本語教育が充実し始めた。
 一方、2008年9月には専門日本語教育として王立法律経済大学内に「名古屋大学日本法教育研究センター」が設立され、日本語教育の幅が広がってきた。
 その後、大学での日本語コースが閉鎖されるなど、機関数、教師数、学習者数ともにかなり減少した時期があったが、2011年ごろから日本企業の進出が急増し、日本語人材の需要が急激に高まってきた。カンボジアは英語の話せる人材が多いため、英語のできる日本人の多い大手企業では日本語よりも管理能力や英語が重要視される傾向があるが、中小企業では、日本語が要求されることが多い。カンボジアではまだ高度な日本語能力を有する人材は限られているため、日本語人材の取り合いのような状況も生まれている。
  2010年代からは日本への技能実習生の送り出しも増加傾向で、それに伴った日本語教育の需要も増えつつある。

背景

 都市部とその他の地域で経済格差が大きく、日本語教育は主に都市部で実施されている。大学や日本語学校からの留学生誘致の問い合わせが増えているが、経済的に自力で日本へ留学できる人は非常に少ない。
 カンボジア人にとって、日本は経済大国や友好国としてのイメージが強い。なお、日本企業進出急増の背景には、近隣諸国の人件費高騰、カンボジアのインフラ整備の進展などがある。
 カンボジアは国全体の平均年齢が30歳弱と若い国である。小学校の就学率は比較的高く、卒業率も向上してきているが、学校運営の体制や質はまだ万全とはいえない。
 まだ電気や水道のない地方も多いが、都市部や電気のある地方ではテレビが普及している。携帯電話や都市部のカフェやレストラン等の無料Wi-Fi普及率は非常に高く、特に都市部では会社員や大学生の多くがパソコンやタブレット端末などを所有している。自宅でのインターネット普及率はあまり高くないが、電話カードを使ったインターネットへの接続は安価で容易にできる。
 民主カンプチア(ポル・ポト)時代に教育や文化が根こそぎ破壊され、家庭や学校に本が身近にない期間が長かったことから、読書の習慣は浸透していない。しかし、「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」などのマンガや日本アニメなどが少しずつ知られてきており、2012年、大使館とカンボジア日本人材開発センター(CJCC)が開催した絆フェスティバルでのコスプレショーをきっかけに、コスプレ、コミックショーの参加者が爆発的に増加しており、潜在的なポップカルチャーファンが存在していることが明らかになってきた。音楽やファッションなどは韓国の影響も大きい。

特徴

 内戦等の理由により、他のASEAN近隣諸国と比較してカンボジアにおける日本語教育の歴史は浅く、日本語教育はいまだ発展途上の段階である。内戦後の1993年、王立プノンペン大学にJICA海外協力隊の日本語コースが開設されたが、当時日本語を学んだ人たちが日本語学習者の先駆けで、現在、機関の中心的役割を担っていることも多い。そうした学習者は2006年にカンボジア国内で日本語能力試験が行われるようになるまで、ベトナムやタイで受験していた。
 学習者は小学生から社会人までと幅広いが、都市部では大学生か社会人、大学進学率の低い地方では若年層が中心で、カンボジア全土ではまだ初級レベルの学習者が多数を占める。しかし、少しずつ教師及び学習者のレベルも上がっており、後述するように、日本語能力試験の受験者総数も増加、受験レベルも高くなっている。学習動機については、日本への好感や興味が基本にあり、「就職・留学」への期待から学習を始めると考えられるが、マンガやアニメなど、ポップカルチャーへの関心をあげる学習者も増えている。ユネスコ世界遺産であるアンコール遺跡群を擁するシェムリアップ州では、ガイドやホテル従業員など観光産業の日本語需要が高く、学習動機の主流となっている。
 教師に関しては、中・上級レベルを教えるカンボジア人日本語教師の育成が遅れていること、人口比から教師の年齢が20代から30代前半に極端に偏っていることも顕著な特徴である。
 学校教育以外の機関についてはNGOの支援や個人の好意に頼る施設も多く、また専任講師の場合、企業の待遇のほうが圧倒的に有利なことから転職する現地教師も多く、教育の継続性が問題となる機関が少なくない。カンボジアでは副業を持つことが一般的で、大学や会社で働きながら終業後や休日に非常勤として教える教師が多いのも特徴と言えよう。

最新動向

 2011年ごろから日本企業の進出が急増し(2020年3月現在、カンボジア日本人商工会(JBAC)の正会員企業は202社)、日本語学習者の採用に向けた問合せが急増している。
 また、2013年12月からシェムリアップ会場でも日本語能力試験が実施されており、カンボジアではプノンペンとシェムリアップの2か所で受験できるようになった。
  2019年4月から特定技能制度が施行されたことを受けて2019年11月からプノンペンにおいて国際交流基金日本語教育基礎テスト(JFT-Basic)が実施されている。
  2020年3月からCovid-19の影響によりカンボジア全土で教育機関の対面授業の禁止が発表された。その影響からか学校や機関の閉鎖が相次いでおり、日本語学習者の減少が懸念される。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 カンボジアにおいて日本語は正式な科目として認定されていないため、公教育においては日本語教育は実施されていない。しかし下記のいくつかの機関では中等教育段階の学生に対して、日本語教育をおこなっている。
1.カンボジア日本友好学園(中高一貫校)
  1999年に日本のNGOとカンボジア人がプレイベン州の農村に立ち上げた。2016年からボランティアベースの日本語教育が行われている。から始まったものの、日本人ボランティアの帰国により、2017年にコース運営は中止となったが、2018年に復活した。
 (途中経過は冗長になるので削除を提案します)
 2019年11月からは日本人教師1名、学生数は7年生~12年生631名である。授業は週1時間(8年生、9年生)、補習授業は週5時間(7年生、8年生、9年生、11年生)と週3時間(12年生)である。テキストは授業では「使おう日本語」、補習授業では「みんなの日本語初級Ⅱ」(12年生)、「学ぼう日本語初級Ⅰ」(8年生、9年生、11年生)、7年生はテキストなしである。
2. カンボジア地方中等学校の日本語教育普及活動
 王立プノンペン大学外国語学部日本語学科の4年生(日本語教育専攻)20数名が、2016年12月から1.の「カンボジア日本友好学園」を含むカンボジア南部の3州にある4校で毎週土曜日の午後に日本語を教えている。テキストは「学ぼうにほんご!」を使用している。2020年度は、Covid19の影響で、2021年2月頃の開講を予定しているが、状況によってはオンラインでの開講もあり得る。20名ほどの大学生が2州にある高校を3、4か所回る予定である。
3.Srenoy高校
  シェムリアップの中心部から5、60キロ離れた町Virenにある。2019年11月から日本語教育がおこなわれている。午前に正規授業を受けた学生は午後に日本語を受け、午後に正規授業を受ける学生は午前に日本語を受けるというようなシステムである。前述したように日本語は高校の科目として認められていないため、位置づけとしては課外授業となる。一日に2時間ずつ、約360名ほどの生徒が日本語を学んでいる。町おこしの一環として生まれた。

高等教育

1.王立プノンペン大学

 公立大学のうち、王立プノンペン大学外国語学部にはカンボジア唯一の日本語学科がある。1994年にJICA海外協力隊員が派遣され、翌年から希望者を対象にした単位取得のない非正規日本語コースが開講されたが、2005年に正規の日本語学科が開設されたことに伴い、2007年8月に非正規コースは閉鎖された。
 日本語学科は2009年より卒業生を輩出している。学科は午前、午後、夜間の三部制をとっており、2020年8月までの卒業生は700名ほど。4年生になると「日本語教育(B.Ed.)」と「ビジネスのための日本語(B.A.)」の二専攻に分かれ、どちらも卒業論文執筆が義務付けられている。2020年10月現在の学生総数は401人。1年生は、COVID19の影響により、入学試験がまだ行われていないため在籍していない。2年生140名、3年生141名、4年生120名(うち日本語教育専攻34名、ビジネスのための日本語専攻82名)。また、上記のほか12名が日本に留学中である。卒業時の学生の日本語能力はN3~N2で、卒業後の進路希望は、1)日系企業への就職、2)日本留学、3)日本語教師となっている。昨今は日本語教育機関で日本語教師として働く卒業生も多く、中には在学中から働く学生もいる。  
 2020年度の学科教師は16名(学科長、副学科長を含む)。内訳は、常勤カンボジア人教師8名(博士号取得者1名、修士号取得者5名、学士号取得者2名)、非常勤カンボジア人講師2名、常勤日本人教師1名(国際交流基金派遣日本語専門家1名。修士号取得者1名。)、非常勤日本人教師5名(修士号取得者1名、学士号取得者4名)。2020年10月現在、過去学科に在職していた教師3名が、日本の大学院の修士課程に在学中である。
 また、同学科は、①カンボジア日本語教師会(CAJALTA)の事務局、②さくらネットワークの中核メンバーにもなっており、カンボジアでの日本語教育の中心的存在である。2020年2月には「さくら日本語・日本文化普及キャラバン」が実施されたが、これは王立プノンペン大学主催、在カンボジア日本国大使館共催の国際交流基金さくら中核事業で、日本語教育機関、社会人(王立プノンペン大学卒業生)、在留邦人がチームを組み地方を回った。日本語教育関係者間のネットワークが強化され、また若い世代に向けた日本語普及事業としての効果が期待される。

2.王立法律経済大学

 王立法律経済大学は2002年11月JICA海外協力隊による非正規日本語コースが開設され、2009年には正規コースに昇格し、希望する受講者に対しては外国語としての単位取得が可能となった。2020年10月現在JICA海外協力隊は派遣されていない。2016年10月から毎年日本語パートナーズが1名派遣されている。全2年間コースで中級前半まで学習する。学生の日本語能力はN4からN3程度。学生数は2018年度117人、2019年11月現在では1回目の1年生が入学し、30人程度である。
 また、同大学内に2008年9月に設立された「名古屋大学日本法教育研究センター(CJL)」では、法律及び行政専攻の学生に対して4年間の日本語及び日本の法律に関する教育を施し、修了時には成績優秀者が名古屋大学大学院法学研究科に留学する。2020年10月現在、日本語教師はカンボジア人1名、日本人3名、専門科目教師1名、学生22名(1年生が約30名程度入学予定)。学生は4年生の時点で日本語能力試験のN2取得を目標としている。

3.カンボジアメコン大学(私立)

 カンボジアメコン大学は、2003年に設立された私立大学で、日本語ビジネス学科は人文・外国語学部に所属する。2020年10月現在、学科の卒業生は120名以上である。教師は3名(日本人2名、カンボジア人1名)のほか、毎年日本の大学からインターン生を受け入れ、日本語教育のアシスタントをしている。1年生から4年生までで、学生数は30名。4年間修了時点でN3~N2レベル。観光学科、会計学科、金融学科などの学生の一部も日本語を学んでいる。

4.アンコール大学(私立・シェムリアップ)

 国際介護福祉学部で日本語授業をおこなっている。一日に3時間半ほどの授業をおこなっている。卒業後、日本の介護分野で就労することを目標としている。

5.カンボジア日本技術大学(私立)

 開校は2018年9月。日本語および介護の専門教科を習う。1年目はカンボジアで勉強し、2年目は日本で実習をおこなう。実習室なども完備している。卒業すると短大相当の学位が付与される。

6.王立農業大学

 各学科から希望者を募り、2019年7月下旬に日本語コースが始まった。2クラスで、学生数は50名である。教師はプノンペン大学日本語学科の卒業生1名と他1名である。テキストは「みんなの日本語」「まるごと」で、2年間で修了する予定である。大学の正式なコースではない。特に修了後の進路などは決まっておらず、教養としての日本語授業がおこなわれている。

学校教育以外

1.カンボジア日本人材開発センター(CJCC)は、王立プノンペン大学内にあり、JICAと王立プノンペン大学の共同プロジェクトとして始まった。2004年から国際交流基金より専門家が派遣され、同年11月教師養成コース開講を皮切りに、初級から中級までの「まるごと」コース、短期のビジネス日本語コース、企業委託コースなどを平日昼休みと夜間を中心に開講している。2020年10月現在、常勤講師はカンボジア人教師3名日本人教師4名(常勤3名、国際交流基金派遣専門家1名)である。また非常勤講師も8名ほど抱えている。学習者は毎学期、企業委託コースなども含めて500名前後である。
 去年記載されていた機関には送り出し機関が含まれている。カンボジアで認められている送り出し機関は100ほどあるが、そのうちのいくつかだけを記すのは問題があると思われる。よって削除をした。
また、去年の記述の中には教員の数や学習者の数が詳細に記載されているものが多いが、現在はCovid19の状況下のため一時的に規模を小さくしていたり、先生が帰国していたりしているため、情報を正確に記すのが難しい。そのため、この数字は削除したいと考える(あまり縮小していないところ、はっきりと人数が確定しているところはその限りではない)。
また、ここに載せる情報としてあまり細かいこと(授業時間帯など)は必要でないと報告者は考えるので、削除をした。

2. JLBS日本語学校:2015年7月開校、教師数8名(日本人1名、カンボジア人7名)、学生数160名学習者は学生社会人、テキストはオリジナル教材、「いろどり」など。レベルは初級~中級、日本語能力試験はN5~N3合格者がいる。学習目的は趣味、留学希望など様々である。

3. 国際日本文化学園(シェムリアップ):同敷地内に、123図書館、櫻空塾空手道場、アンコール柔道場などがあり、日本語は一二三日本語教室において初級から上級まで幅広いコースが開かれている。海外からの訪問も多く、国際交流の機関として国内外に知られている。

4. 山本日本語教育センター(シェムリアップ):初級5か月コース(450時間、「みんなの日本語初級Ⅰ」19課まで)と中級1年コース(1,000時間程度、在学中の12月にN4を受験し、卒業後の7月にN3を受験)がある。卒業後の進路は観光業が多い。教師や学生が寝起きするための宿舎もある。

5. たくみ日本語学校(シェムリアップ):設立6年目で、学生から学費は取っていない。学生の年齢層は10代から40代までと幅が広い。テキストは「みんなの日本語」を使っている。学習目的は多様。

そのほかにプノンペン、シェムリアップ地方、コンポンチャム州などで日本語が教えられているが、民間の語学学校、日本への研修生送り出し機関、個人塾など、形態はさまざまである。設置主体は日本及びカンボジアのNGO、日本人またはカンボジア人個人、研修事業関連団体、企業、寺院など様々で、学習目的は就業、研修留学など実利目的、学習者は若年層が中心である。
カンボジアの特徴として、クメール伝統織物研究所、孤児院、養護施設、寺院のような子供や女性の自立支援施設で日本語が教えられていることも多く、教師数、学習者数など流動的で実態がつかみにくいことがあげられる。こうした学校教育以外の機関では、将来の収入手段獲得、自立の支援を目的として掲げるところが多く、レベルは初級を中心に、なかには上級まで学習するところもある。
修了後は母校の教師として教壇に立ったり、シェムリアップではガイドやホテルなど観光業、プノンペンの場合は日系企業やNGOに就職したりすることが多い。
最近の傾向としては、日本への研修生送りだし機関が増えている。カンボジアの送り出し機関の数2020年10月現在96である。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 6-3-3制。
 6歳より就学し、小学校6年間、中学校3年間、高校3年間、大学は一般に4年間。その他、高校レベルの技術高校、職業訓練校もある。義務教育は小学校から中学校までの9年間とされる。カンボジアでは日本と違って、年齢と学年が一致しないことも、よくある。経済的な理由などにより学校を辞めて、また復学するケースも多いため、10代半ばで小学校に通っていたり、30歳を越えて一度は断念した高校に復学したりといった事例も珍しいものではない。年上の兄弟といっしょに6歳以前に就学し、その後、実年齢より数歳高い年齢を使い続けるケースなども見られる。
 小中高校では校舎や教員不足のため一般的に午前・午後の二部制をとっている。大学では午前・午後・夜間・土日コースと三~四部制をとっており、同時に複数の大学や学部に所属したり、働きながら夜間や土日コースで学んだりする者も非常に多い。

教育行政

 初等・中等教育は、教育・青年・スポーツ省が管轄している。
 高等教育は、約20校ある国・王・公立大学及び公的研究教育機関のうち、農業大学は農林水産省、保健科学大学は保健省、芸術大学は文化芸術省、カンボジア軍保健科学研究所は防衛省の管轄となっており、王立プノンペン大学、王立法律経済大学、工科大学、高等師範学校、マハリシュ・ベディック大学、スバイリエン大学、経済財政研究所などは教育・青年・スポーツ省の管轄である。技術高校、職業訓練校はカンボジア労働・職業訓練省管轄。

言語事情

 公用語は国民の90%を占めるクメール人のクメール語で、識字率は世界銀行の統計によると2015年現在、81%である。地方の少数民族はそれぞれの言語を使用している場合もある。また、中国系住民の間では中国語、ベトナム系住民の間ではベトナム語も使われている。

外国語教育

 植民地時代はフランス語が主要外国語であった。ポル・ポト政権で教育制度自体が壊滅的打撃を受け、その政権が崩壊した後の外国語教育は政治的要因によりロシア語、ベトナム語が中心となった。1989年ごろ援助国が西側諸国に移ってからは再びフランス語、英語に塗り替えられた。Grade7(中学生)より外国語(英語またはフランス語)が必修。しかし、国内産業に乏しいカンボジアでは、経済活動を外国に頼らざるを得ないため、外国語学校や塾などに通って早期から外国語を学ぶのが一般的で、特に都市部を中心に英語能力はASEAN諸国の中でも特段に高いと思われる。それに加えて、中国語、フランス語、日本語、韓国語など、複数の言語を話す国民が多いのも特徴。私立校の場合は早い所では幼稚園から英語を学ぶ。英語系、中国語系の学校も多く、クメール語、英語、中国語の三か国語教育を行う学校もある。

外国語の中での日本語の人気

 一般的には就職で有利な英語の人気が圧倒的に高い。2019年10月の王立プノンペン大学外国語学部の入学試験で応募者数が多い順は、英語、日本語、中国語、韓国語、フランス語、タイ語であった。
  2020年度の大学入試は実施されていない。今年度は、高校卒業試験の延期に伴い、新入生の受け入れは2021年3月を予定している。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

 『みんなの日本語初級Ⅰ&Ⅱ』についてはカンボジア日本人材開発センターから本冊および翻訳・文法解説のクメール語版がセットで出版されている。

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 教科書は使用されていない。 (但し、王立プノンペン大学外国語学部日本語学科の教育専攻の学生がボランティアで教えている学校では「学ぼうにほんご!」を使用している)

高等教育

『みんなの日本語初級Ⅰ&Ⅱ』スリーエーネットワーク編(スリーエーネットワーク)
Basic Kanji Book Vol.1、2』加納千恵子他著(凡人社)
『中級へ行こう』平井悦子他著(スリーエーネットワーク)
『聞いて覚える話し方 日本語生中継(初中級編1、2)』ボイクマン総子ほか著(くろしお出版)
『大学・大学院留学生の日本語〈4〉論文作成編』アカデミックジャパニーズ研究会(アルク)
『にほんごで働く!ビジネス日本語30時間』宮崎道子著(スリーエーネットワーク)
ほか

学校教育以外

『みんなの日本語初級Ⅰ Ⅱ』(前出)
『まるごと 日本のことばと文化 入門A1 かつどう/りかい』国際交流基金編著(三修社)
『まるごと 日本のことばと文化 初級1A2 かつどう/りかい』国際交流基金編著(三修社)
『まるごと 日本のことばと文化 初級2A2 かつどう/りかい』国際交流基金編著(三修社)
『まるごと 日本のことばと文化 初中級A2B1』国際交流基金編著(三修社)
『まるごと 日本のことばと文化 中級1 B1』国際交流基金編著(三修社)
『まるごと 日本のことばと文化 中級2 B1』国際交流基金編著(三修社)
『職場の日本語』(CJCC)

IT・視聴覚機材

 カンボジアでは携帯電話や無料Wi-Fi施設(カフェやレストラン)が普及しているので、町ではスマートフォンやタブレット端末などでインターネットを利用する学習者が増えてきているが、シンプルな携帯電話しか持っておらず、メールやインターネットが使えない学習者もまだまだ多い。
 個別の機関の状況については、以下のとおり。

  • プノンペンでは大学でのコンピュータールームの設置も一般的になってきており、名古屋日本法教育研究センターではスライドのほかテレビ会議システムを利用。王立プノンペン大学、カンボジア日本人材開発センターでは授業でスライド等を使用。
  • カンボジアメコン大学では3つのコンピュータールームに加え、日本語の事務所を学生にも開放し、視聴覚教材を使えるように準備を進めている。
  • オンラインの授業については、機関側では可能だが学習者の方の環境が整備されておらず、断念することが多い。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 ボランティアの日本人教師と王立プノンペン大学外国語学部日本語学科の教育専攻の学生のみであり、特に資格要件はない。

高等教育

(1)日本人教師:

 カンボジアでは修士号以上の学位を有する人材を確保することは困難で、大卒が必須条件となっている。日本語教育に関する専門知識(大学で主専攻または副専攻、420時間以上の研修、日本語教育能力検定試験等)または3年以上の経験などを求める場合が多い。法律やビジネスなど、日本語以外の専門分野を専攻する場合は、日本語教育の専門知識に加えて、日本史や公民など日本語教育以外の科目も教えられることが望ましいとするところもある。大学によっては日本語教育の資格は問わず、日本語以外の専門の教師にも門戸を広げ、幅広い社会経験がもたらす実学的なものをより重視しているところもある。
 なお、急増する企業の要望に応えるため、日本から会計などの専門分野の教師を派遣してもらい、日本企業に勤務した場合の経理、会計処理の能力向上や、ビジネスマナーや日本の企業文化等について日本の専門家、中小企業の経営者に定期的に特別講義を行ってもらっている大学もある。

(2)カンボジア人教師:

 正規職員(公務員資格保有者)は修士号以上の学位を有する者、非公務員資格(契約)教員は、基本的に学士の学位を有する者以上となっている(専門は問わない)。日本語能力や日本語教授知識に関する規定はない。大学のカンボジア人講師の日本語能力はN2程度が主流。
 大学によっては、英語やビジネスなど日本語以外の専門スキル能力向上に力を注いでいるため、必ずしも日本語教育能力に主眼を置いているとはいえない傾向もある。技術系あるいは社会科学系の大学では、日本語以外の専攻で留学し、帰国してから教師として籍を置くカンボジア人教師もおり、日本語能力試験は受験していなくとも、高度な日本語能力を有している場合がある。しかし、こうした人材は企業に引き抜かれることが多く、高度な日本語能力を有するカンボジア人教師が慢性的に不足している。

学校教育以外

 カンボジア日本人材開発センターでは高等教育機関とほぼ同じ条件で教師を採用しているが、一般の民間学校では明確な規定がない。カンボジア人教師の日本語能力はN4程度からN1までと差が大きく、大学生や会社員が非常勤として教えているケースも多い。
 シェムリアップの山本日本語教育センターでは、日本人教師には日本語教師養成講座修了か日本語教育能力検定試験合格を条件としており、カンボジア人教師は日本人教師が指導している。
 民間の日本語学校、特に子供や女性の自立支援機関などでは日本人ボランティアに頼る機関も多いがボランティアを確保できない機関もある。

日本語教師養成機関(プログラム)

  • 王立プノンペン大学外国語学部日本語学科では、日本語教育専攻の学生に対し、理論と実習を課している。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 正規日本語コースを実施する大学・機関では、日本人教師は正規雇用あるいは契約の形を取ることが多い。カンボジア人教師の場合、大学ではごく少数の公務員資格を持った教師以外は契約であり、学生数の増減によって次年度の契約が決まる。給与も非常勤と同様、担当授業数に応じて増減するのが一般的であるが、日本人は給与が契約で一定額に決められていることが多い。日本人教師は、初級~中級の授業全般、会話授業や中上級レベル中心に担当、専門科目の担当、カンボジア人教師とのチームティーチング、カンボジア人教師の教授法や教務の指導など、機関によってさまざまな役割がある。
 大学の非正規コースや民間日本語学校においては、短期・長期滞在の日本人にボランティアとして授業を担当してもらう機関も多い。

教師研修

(一覧参照のこと)

現職教師研修プログラム(一覧)

  • カンボジア日本人材開発センターにおける日本語教育関連セミナー(半日) 年4回
  • シェムリアップのアンコールワット日本語教師会におけるセミナー(1日間)年3回
  • アンコールワット日本語教師会による国際日本語教育セミナー(隔年1回)
  • 国際交流基金アジアセンタープノンペン連絡事務所による生活日本語セミナー(不定期)
  • 訪日研修として、国際交流基金の日本語教師研修(長期・短期)

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

1.カンボジア日本語教師会(CAJALTA

 2005年11月発足。前身は「カンボジア日本語教師の会」。カンボジア人・日本人双方の教師で構成されており王立プノンペン大学日本語学科が事務局となっている。ここ数年、目立った活動をしていなかったが、2019年度には2回例会が持たれた。今後は定期的な活動が見込まれている。専用のメーリングリストを有しており、日本語教育上の情報交換・共有ツールとして機能している。

2.アンコールワット日本語教師会

 シェムリアップの日本人教師が中心となって2007年1月に立ち上げた教師会で、月例会及び定期的な日本語教育セミナーを実施している。会員数は2020年10月現在19名(日本人12名、カンボジア人7名)である。2010年度からは毎年1回アンコールワット日本語コンクールを、2012年からは隔年でアンコールワット国際日本語教育セミナーを実施している。

3.カンボジア・日本語教師(Facebookグループ)

 2019年12月より運営が始まったFacebookグループ。国際交流基金の専門家を中心に運営がなされている。FACEBOOKのグループ機能を利用しており、CAJALTAのメーリングリストよりもカジュアルな情報共有・意見交換の場として機能している。「日本語教育に関心があるか」という設問に「はい」と答えれば誰でも参加できる仕組みであるため、日本語教育関係者ではない参加者も多く見られる。

最新動向

 特になし。

日本語教師等派遣情報

国際交流基金からの派遣

日本語上級専門家

 国際交流基金アジアセンタープノンペン連絡事務所 1名

日本語専門家

 カンボジア日本人材開発センター 1名
 王立プノンペン大学       1名

生活日本語コーディネーター

 国際交流基金アジアセンタープノンペン連絡事務所 2名

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし

その他からの派遣

 過去には以下のようなNGO支援を受けた派遣があった。

《霊友会》
王立プノンペン大学一般社会人コース:日本語教師派遣(1994年1月~1997年)
JHP学校をつくる会》
王立プノンペン大学一般社会人コース:日本語教師への資金援助(1997年~1999年4月)
《国際親善文化交流協会(IFCA)》
商業省:日本語教師1名派遣(1996年9月~1999年3月)

シラバス・ガイドライン

 日本語教育に関する統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

評価・試験

 日本語能力試験をプノンペンにおいて年2回実施。2013年12月からはプノンペン会場に加え、シェムリアップ会場でも実施。2019年度の応募者数は年間でN1が 175名、N2が 637名、N3が 871名、N4が 1421名、N5が 480名、総計3584名で、2018年度より944名増加。JLPT実施以来、増加の傾向がある。初級レベルの受験者が多いが、N1、N2受験者も少しずつ増え、日本語学習者の底上げ、全体的なレベルアップ傾向も伺える。
 また、「特定技能」に関連しているN4では、2019年の応募者は前年と比べほぼ2倍の数を得ている。今後JFT-basicの普及によりこの数字がどのように推移するか興味深い。

日本語教育略史

1960年代 クメール王立大学(現在の王立プノンペン大学)にて日本語講座開講(1974年に閉鎖)
1991年ごろ 現地在住の日本人によるボランティアベースでの日本語教育再開
1993年 12月 プノンペン大学(1996年王立プノンペン大学と改称)にJICA海外協力隊隊員派遣開始
1994年 1月 プノンペン大学にて一般社会人対象の日本語講座が開講(霊友会)
4月 プノンペン大学にてJICA海外協力隊による当大学生対象の非正規日本語講座が開講
プノンペンの観光省にもJICA海外協力隊隊員が2代に亘って派遣(~1998年)。またシェムリアップの観光庁にもJICA海外協力隊隊員が派遣(3代で終了)
シェムリアップに日本人による民間日本語学校一二三日本語教室開校(図書館も併設)
1995年 カンボジア人による民間語学学校の日本語講座が数多く開講
1996年 9月 商業省に国際親善文化交流協会(IFCA)から日本語教師1名派遣開始(~1999年3月)
商科大学(1998年に国立経営大学と改称)にJICA海外協力隊隊員派遣開始
1998年 シェムリアップで日本の民間旅行会社の支援を得た日本語学校開校
プノンペン日本語教師の会主催で第1回日本語スピーチコンテスト開催(この年はプノンペンの日本語教育機関のみ)
1999年 プノンペン日本語教師の会主催で第2回日本語スピーチコンテスト開催(この回よりシェムリアップの日本語教育機関も参加)
プレイベーン州のカンボジア日本友好学園(中高一貫校)で日本語教育開始
2000年 日本語スピーチコンテスト実行委員会主催で第3回日本語スピーチコンテスト開催
2001年 シェムリアップの民間日本語学校一二三日本語教室を秋篠宮殿下同妃殿下がご訪問
2002年 王立法律経済大学にJICAシニア隊員の派遣開始
2003年 10月カンボジアメコン大学開学
2004年 JICAのカンボジア日本人材開発センタープロジェクトに国際交流基金より日本語専門家派遣開始。同準備室にて日本語教師養成講座開始
2005年 3月 王立プノンペン大学の一般社会人対象日本語講座が閉講
10月 王立プノンペン大学に正規の日本語学科設置
11月 カンボジア日本語教師会(CAJALTA)発足
王立プノンペン大学に国際交流基金より日本語専門家派遣開始
日本語スピーチコンテストと同時に川柳コンクール開催
2006年 2月 王立プノンペン大学内にカンボジア日本人材開発センター完成
3月 一般向け日本語講座開始
カンボジアにおける日本語能力試験実施開始
2007年 2月 アンコールワット日本語教師会発足
8月 王立プノンペン大学の学生対象非正規日本語講座が閉鎖
10月 アンコール大学日本語コースが開講
2008年 ミエンチェイ大学へのJICA海外協力隊隊員派遣開始
王立法律経済大学内に名古屋大学日本法教育研究センター開所。日本語講座開講
2009年 国立経営大学日本語コース閉鎖
王立法律経済大学日本語講座が正規講座に昇格
2010年 日本語能力試験 年2回実施開始
5月 バッタンバン大学で日本語ショートコース開講
2011年 カンボジア日本語学習者による第1回「のどじまん大会」開催(大使館、CJCC、カンボジア元日本留学生同窓会(JAC, JAPAN ALUMNI OF CAMBODIA共催)
第1回アンコールワット日本語コンクール開催(アンコールワット日本語教師会主催)
王立プノンペン大学日本語学科を皇太子殿下がご訪問
「さくら日本語・日本文化普及キャラバン」開始
2012年 第1回アンコールワット国際日本語教育セミナー開催(アンコールワット日本語教師会主催)
第15回カンボジア日本語スピーチコンテスト開催(王立プノンペン大学外国語学部日本語学科・カンボジア日本人材開発センター主催)
10月 メコン大学付属Mekong International Schoolで日本語教育開始。しかし、現在は終了している。
2013年 3月 最後のJICA海外協力隊隊員(ミエンチェイ大学)が帰国。
12月 日本語能力試験 シェムリアップでの実施開始
2014年 第17回カンボジア日本語スピーチコンテスト開催(在カンボジア日本大使館・王立プノンペン大学外国語学部日本語学科・カンボジア日本人材開発センター主催)
2015年 第18回カンボジア日本語スピーチコンテスト開催(在カンボジア日本大使館・カンボジア日本人材開発センター主催)
2016年 第19回カンボジア日本語スピーチコンテスト開催(在カンボジア日本大使館・カンボジア日本人材開発センター主催)
2017年 第20回カンボジア日本語スピーチコンテスト開催(在カンボジア日本大使館・王立プノンペン大学・カンボジア日本人材開発センター共催)
2018年 第21回カンボジア日本語スピーチコンテスト開催(在カンボジア日本大使館・王立プノンペン大学・カンボジア日本人材開発センター共催)
2019年 3月 国立国語研究所「日本語学講習会」(主催:国立国語研究所、共催:王立プノンペン大学)
第22回カンボジア日本語スピーチコンテスト開催(在カンボジア日本大使館・王立プノンペン大学・カンボジア日本人材開発センター共催)

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