モンゴル(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

2018年度日本語教育機関調査結果に関する帯グラフ。機関数は128件、教師は363名。初等教育は2,755名で全体の23.4%、中等教育は3,845名で全体の32.7%、高等教育は2,738名で全体の23.3%、学校教育以外は2,417名で全体の20.6%。

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 1975年モンゴル国立大学文学部に、副専攻として日本語コースが開設された。これがモンゴルにおける公的教育機関での日本語教育の始まりである。以後、民主化運動が始まるまでの15年間、毎年3~6人の学生が3年間、日本語コースを選択し、少数精鋭の教育が行われてきた。民主化・市場経済化への移行が開始された1990年、モンゴル国立大学文学部の日本語コースは日本語学科(主専攻)に昇格した。
 同年、第23学校(10年制学校)で、初等・中等教育レベルとしては初の日本語教育が開始された。この頃から外国語教育を主とする私立大学が設立され、その多くで日本語学科が開設された。
 民主化以降しばらくは、観光業従事や会社を興すことを目的に日本語を学習しようとする学生が主流を占めていたが、近年、他の分野を主専攻とする傍ら日本語学習をする傾向が強くなっている。また、研修生として滞日した人が、帰国後改めて漢字を勉強し始めたり、日本で幼年期を過ごした子どもに帰国後も継続して日本語を学習させたり、相撲を通して日本に興味を持ったり、保育園児の早期外国語教育が行われたりと、日本語学習の裾野が広がっている。さらに、JICA青年海外協力隊による地方での活動が成果を挙げており、地方(ダルハン市、エルデネット市、ウブルハンガイ県、バヤンホンゴル県、中央県等)でも日本語教育が行われており、地域的な広がりも見せている。しかし、ウランバートルに全機関数の90%以上が集中しているのが現状で、更なる地方への日本語教育の普及、そして地方での学習者や、教育者に対する支援が今後の課題となっている。
 2002年6月には、日本政府の無償資金協力により、「モンゴル・日本人材開発センター」(以下、モンゴル日本センター)がモンゴル国立大学に設立され、その後、2012年4月からは同大学の独立採算ユニットとなっている。そして、同じく2012年4月から同センターの日本語課及び図書・情報交流課を国際交流基金が直接運営することとなり、JF講座が開設された。同センターは開所以来、日本語教育機関・日本語教師会等との連携や、日本語及び日本文化に関する情報の提供等、当地の日本語教育において中心的な役割を果たしている。また、2007年からはモンゴル日本語教師会の下に「日本語教育研究会」が設立され、月1回の例会が同センターで行われており、教師間ネットワークが形成されている。
 2005年には、モンゴル教育科学省(以下、教育省)から今後の外国語教育の指針として「外国語教育新スタンダード」が発表された。キーワードは「学習者中心」「実用的」「意味・場面の重視」「帰納的」「コミュニカティブ」の5つである。従来の教育は、教師が生徒に一方的に知識を詰め込む暗記中心の指導法であった。そのため、「子供の自主的な思考を促す」学習者中心の考え方はモンゴル人教師には馴染みが薄いものであったが、ウランバートルでは、市教育局主催の勉強会を通して指導法の改善等が行われていた。
 2008年より上記の研究会の中でスタンダード・ワーキンググループが組織され、教育省のスタンダードに従ったモンゴル版日本語教育スタンダードの研究が始まった。これを受けて2012年からはモンゴル日本語教師会が中心となり、モンゴル日本語教育スタンダード作成・プロジェクトが国際交流基金の助成を受けて実施され、初等・中等教育機関向けの教材開発が行われ、モンゴル日本語教育スタンダードに準拠した『にほんご できるモン』教科書開発が完了した。
 2007年10月にモンゴル日本センター主催の「日本語教育シンポジウム」が開催されたのを機に、その後も毎年「日本語教育シンポジウム」が開催されてきている。シンポジウムには毎回モンゴル全国から日本語教師が集まることから、日本語教師ネットワークの形成・拡充に大きく貢献している。2011年~2014年の同シンポジウムは上記のモンゴル日本語教育スタンダード作成・プロジェクトとの関連で「モンゴル日本語教育スタンダード」をテーマとして開催されており、同スタンダードへの関心が高まっている。2015年には、東京大学准教授宇佐美洋氏を基調講演者として招き、『比較対照』をテーマに、日本語教育の研究者が発表を行った。
 2016年度は、モンゴル人の読解力向上に向けた取り組みを行った。日本語教育において、モンゴル人は読解力が他の能力に比べて劣ると考えられ、読解力を向上させるため、母語の読解力に対しての教育がどの様に行われているかを比較検討し、日本語の読解力向上に向けてどの様なアプローチが取れるのかが研究されてきた。そして記念すべき第10回のシンポジウムは、「モンゴル・日本人材開発センター設立15周年記念行事」、「日本・モンゴル外交関係樹立45周年記念行事」として、「読む力を育てるために ―読解力とは何か―」と題して、2017年3月17日、18日の2日間にわたり実施した。
 2018年度は、『初中等日本語教育スタンダード及び高等教育との連携―『できるモン』教材分析と課題(初中等)及び教養科目としての日本語教育スタンダード(高等教育)―』というテーマで、アクラス日本語教育研究所の嶋田和子代表理事と国際交流基金ジャカルタ日本文化センターの片桐準二上級専門家を基調講演者としてお招きし、基調講演後3つの発表とパネルディスカッションが行われた。
 2019年度は、『日本語教育と研究の繋がり―統計分析を例に―』というテーマで、日本大学大学院総合社会譲歩研究科の島田めぐみ教授を基調講演者としてお招きし、その後のワークショップで統計分析とその実践についての理解を深めた。
 2020年度は、『モンゴルにおける通訳・翻訳の実践と日本語教育への提言』というテーマで、日本通訳翻訳学会会員の新崎隆子氏に基調講演を依頼し、動画による講演とビデオチャットによる質疑応答を行った。その後、通訳と翻訳の2つの分科会に分かれて7つの発表が行われた。

背景

 モンゴルが民主化・市場経済化への道を選択した1990年以降、モンゴルと日本両国の関係が急速に発展したことから、日本語専門家の需要、またその養成の必要性が高まり、一種の日本語ブームが訪れた。多くの大学で日本語科が開設され、中でも新たに設立が認められた私立大学(多くは外国語教育を中心とした単科大学)の多くが日本語学科を設置したことが、数年前までの日本語学習者数の増加に好影響を及ぼした。また、初等・中等教育では、もともと早期専門教育を実施してきたロシア語教育特別学校等が外国語専門学校となることで、日本語教育の受け皿となった。モンゴルは、2010年から2012年の間、資源価格が高騰したことを背景とし、海外からの投資が増え、瞬間的には経済成長率が20%を超える時期があった。その時期に、海外、特に欧米系の会社が好待遇でモンゴル人を雇用したため、日本語を学習するよりは、英語、中国語、韓国語を学習した方がより就職時の待遇が良いという事で、言語学習者は、日本語以外の言語を選択するようになった。
 しかし、2013年より、中国の重工業を中心とした経済の悪化、また、世界的な資源価格の低迷により、2014年から2015年にかけてモンゴルに投資を行っていた外国企業がモンゴルから撤退したこと、また、日本への査証要件が緩和され、日本に渡航するモンゴル人が増加し、日本への好意的な感情が以前より高まったことにより、日本語学習者は2015年を境に、再度増加の傾向を見せている。
 2010年代後半から技能実習生の送り出し機関が増えたこと、2019年4月モンゴルと日本との間で在留資格「特定技能」を有する外国人材に関する制度の適正な実施のための基本的枠組みに関する協力覚書の署名がされたことを受けて、就労を目的とした学習者が増えている。

特徴

 モンゴルにおける日本語教育は、初期においては主に日本語・日本研究者養成が目的であった。1990年以降は、両国間の関係が多面化していくのに伴い、高度な日本語を活用できる人材や日本語教授法を身につけた人材の養成等が新たな目的として加わったといえる。
 現在、初等・中等教育から日本語教育が導入されているところがあり、大学においても日本語を主専攻で学ぶことができることから、様々な教育機関で広く日本語学習の機会が提供されていることが、モンゴルの日本語教育の特徴である。また、モンゴルを代表する大学であるモンゴル国立大学、国立科学技術大学、国立教育大学等においては、日本語・日本学分野で博士号を持つ教授が多数おり、この分野における学術的な発展への貢献も見られる。

最新動向

 初中等及び高等教育における学習者数は、おおむね横ばい傾向である。一方で、学校教育以外(日本語学校や就労を目的とした学習者を対象とした日本語センター)の機関数及び学習者数の増加が顕著である。2019年はJLPTが初めて2回実施されたが、どちらも2000人を超える応募者がいた。2020年10月からJLPTの申し込みがオンライン化された。

教育段階別の状況

初等教育

 (下記【中等教育】を参照のこと)

中等教育

 モンゴルでは、普通教育学校は初等学校(6年)、前期中等学校(3年)、後期中等学校(3年)に分けられるが、初等~後期中等を一貫して教育する学校が大半であり、日本語教育が行われている学校も初等~後期中等教育一貫校が多い。
 2006年度までは基本的に英語もしくはロシア語が必修外国語だったが、2007年度より英語が第一必修外国語、ロシア語が第二必修外国語となった。学校によっては、選択もしくは選択必修の第三外国語として日本語や中国語、韓国語等が教えられている。しかし、条件がそろえば、どの言語を必修外国語としてもよいことになっていることから、必修外国語として日本語を教えている学校もある。首都圏以外で日本語教育が行われているのはダルハン市、エルデネト市、ウブルハンガイ県、バヤンホンゴル県、ドルノゴビ県、中央県等である(2020年)。
 その他の流れとして、日本式の制度を取り入れた教育を行っている新モンゴル小中高一貫学校(ウランバートル市)、新モンゴル日馬富士学校(ウランバートル市)や、モンゴル語と日本語によるイマージョン教育を行っていたナラン学校(ダルハン市からウランバートル市に移転。移転を機に『ノムトナラン学校』と名称変更)等がある。
 2010年代中頃からは、初中等向けの教科書『できるモン』1~3各上下巻(モンゴル日本語教師会作成)の協働制作や「漢字ナーダム(学校対抗チーム戦による漢字クイズ大会)」、初中等勉強会等によって初中等教師間ネットワークが強化されつつある。2019年3月にウランバートル市教育局が日本語教員を対象にした研修会を行った。このような研修会では英語やロシア語教師と同じ内容の研修を行っていたが、日本語教師会の協力もあり日本語教師に対して別の内容の研修が行われた。

高等教育

 2014年頃に機関数、教師数、学習者数とも減少傾向にあった。これは、モンゴルの教育制度が11年制から12年制に切り替わったことによる新卒者数の減少もあり、私立大学での減少が影響した。機関によって教師の質、授業内容にばらつきが多く、高い能力を身に付けることができる機関もあれば、主専攻で4年間勉強しても初級日本語でのやり取りが行えない学生も見られる。またトップクラスの大学を除くと、大学が研究機関になりえておらず、語学専門学校のような機関も散見される。首都圏以外では、モンゴル国立大学(エルデネト市の分校)、ホブド県ホブド大学で希望選択科目として人数が集まれば日本語が学べる。
 日本語を学ぶ学生の多くは留学や日本関連企業への就職を希望し、日本語を専攻している。優秀な学生が文部科学省の日本語・日本文化研修留学生として渡日するほか、私費留学をする学生が増加している。日本学生支援機構(以下、JASSO)の日本留学試験がモンゴルでも実施されるようになったことから、私費留学への挑戦が容易になっている。
 大学卒業後は、公的機関、教育機関及びモンゴルの日系企業等に就職したり、大学院に進学したりする者も多い。日本語を主専攻とする学生の中には、卒業後、日本の大学の別の学部へ進学し、複数の専門を持とうとする傾向も見られる。これは、日本語話者が増えたことから、日本語に加え、別の専門が要求されるようになってきたこともひとつの要因だと考えられる。国立科学技術大学日本語学科では科学技術翻訳に特化した教育を実施し、国立教育大学では日本語教師および通訳・翻訳という2つの専門分野を掲げている。
 2006年にモンゴル国立大学法学部内には名古屋大学日本法教育研究センターが設置され、同学部生に対する日本語講座で日本語と日本法の教育が行われている。また、2008年9月から国立健康科学大学看護学部にて日本語教育が開始された。 また、工学士や技術者の養成ニーズが社会において高まったことを受け、2014年にはモンゴル政府と国際協力機構との間で工業系高等教育プロジェクトが締結され、モンゴルにおける高度な知識や能力を有する技術者の養成、工業系教育の競争力の向上、教育人材の強化、教育環境の改善、質の向上を目的として、留学前の日本語教育が国立科学技術大学内で行われている(高専留学プログラム、ツイニング留学プログラム)。またこのプログラムとは別に複数の高等専門学校・工科大学が創設され学校内で日本語教育が行われている。

学校教育以外

 ほとんどが小規模な日本語学習センターである。やや学習者募集が安定していないところもあり、日本語を始めても数年で辞めてしまう教育機関もある。開講時間が自由で、授業料も比較的手ごろであることから、夜間等に学ぶ社会人が増加している。授業のスタイルも、学習者の希望に柔軟に対応し、クラス授業以外にもプライベートレッスン、オンラインレッスン、企業委託(IT技術者のための日本語)、研修生派遣のための日本語等がある。一般にネイティブの日本語教師がいるところが好まれる傾向があるが、ネイティブ教師がいることイコール質が高い教育機関であるとは一概には言えないのが現状である。
 2015年以降の傾向として、日本から技能実習生として招聘するため、日本側の受入機関がモンゴルを訪問する機会が増えてきている。モンゴル政府は、労働大臣をはじめとし、今後、技能実習生として、日本に渡航するモンゴル人を増加させることに対して積極的な姿勢を見せている。日本人と外見も近く、語学習得能力が高いモンゴル人は、日本の介護関係者から注目を浴びている。今後も日本での就労を目的とした日本語学習者が増えていくことが予想されるが、その反面、基礎的な教授法知識を身に付けた日本語教育者が需要に追いついていかないことが予想され、教育者の育成や研修機会の確保が課題となってきている。

複数段階

 中等教育の項で述べたとおり、モンゴルでは、初等~後期中等を一貫して教育する学校が大半である。これらの機関では、小学校低学年から日本語を教え始め、高校卒業時には日本語能力試験のN4程度を目標としていることが多い。前述の高等専門学校にも複数段階にまたがる教育を行っているところがある。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 6-3-3制。小学校が6年間、中学校が3年間、高校が3年間で、小・中学校の9年間が義務教育となっている。基本的に小・中・高一貫教育である。高等教育では、大学の学部が4年間、大学院修士課程が1.5~2年間、博士課程が3年間となっている。
 (※2007年までは5-4-2制の11年制だったが、2008年より順次12年制へ移行した)

教育行政

 モンゴル教育文化科学スポーツ省の管轄下にある。

言語事情

 公用語はモンゴル語。
 人口の大半がカザフ民族で構成されるバヤンウルギー県では、カザフ語での教育が認められている。

外国語教育

 初等・中等教育段階では2007年度より4年生から英語が第一必修外国語として、また7~9年生の3年間はロシア語が第二必修外国語として教えられている。学校によってはそれ以外に選択もしくは選択必修の外国語として、日本語や中国語、韓国語、ロシア語、フランス語、ドイツ語等が教えられている。外国語専門学校(特に外国語教育に力を入れている学校)では、低学年時より第一外国語として選択した外国語を必修として教え、通常校と同様に4年生より英語を、7年生から3年間はロシア語を必修として教えている。したがって、外国語専門学校で日本語を第一外国語として選択した場合は卒業までに日本語・英語・ロシア語の3言語を学習することになる。

外国語の中での日本語の人気

 初等・中等教育機関では英語とロシア語が必修のため学習者数が最も多く、それに中国語、日本語、韓国語等が続いている。近年、中国の孔子学院が進出してきたため、中国語を学ぶ学生が増えている。また、私立の小中学校で、中国語イマ-ジョン教育を行う学校が増えており、中国語の隆盛につながっている。
 富裕層の増大と共に、子供を海外の学校で学ばせるケースも増えている。1990年以前の留学先はソ連ほか社会主義国に限られていたが、近年は政府間協定による中国への留学が増えており、日本はそれに次ぐ。その他の留学先として、米国、トルコ、インド、イギリス、オーストラリア、韓国等が挙げられる。

大学入試での日本語の扱い

 2006年度より導入された大学入試一般試験制度(日本の大学入試センター試験に相当)では、日本語は試験科目に含まれていないが、外国語教育者会議において、中国語、韓国語、日本語、フランス語、ドイツ語等の教師から、それぞれの外国語を選択科目として取り入れてほしいという意見が出された。

学習環境

教材

初等教育

 (下記【中等教育】を参照のこと)

中等教育

 以前は、『ひろこさんのたのしいにほんご』根本牧ほか(凡人社)、『みんなの日本語初級』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)、『日本語初歩』国際交流基金日本語国際センター(凡人社)等、日本で出版された教材のほかに自主制作教科書(『できるよ(1)~(4)』モンゴル日本語教師会、『わくわく日本語1~7』青年海外協力隊等)を使用していた。
 2010年代後半以降では『できるモン』1~3各上下巻(モンゴル日本語教師会作成)の使用率が上がっている。2020年の調査では初中等教育機関30校のうち15校で使用されていた。

高等教育

 『現地出版されていることもあり初級段階では、『みんなの日本語初級』(前出)の使用率が高いが、『できる日本語』嶋田和子監修(アルク)やモンゴル国立大学で作成された『モンゴル人のための日本語教科書』を使用しているところもある。初中級レベル以上になると『日本語中級Ⅰ、Ⅱ』国際交流基金日本語国際センター(凡人社)、『日本語中級J301―基礎から中級へ』土岐 哲ほか(スリーエーネットワーク)等、日本で出版された様々な教材が使用されている。他には、大学の教員が教材を開発し、当該大学の授業で使用している例も見られる。

学校教育以外

 現地出版されていることもあり初級段階では、『みんなの日本語初級』(前出)の使用率が非常に高い。『翻訳・文法解説 モンゴル語版』もウランバートル市内の書店で買うことが出来る。モンゴル日本センターでは、『まるごと』(前出)入門~中級が使われているが、現地出版されていないことから他の教育機関での使用は限定的である。一部機関で『いろどり』(国際交流基金)モンゴル語版を使用して教えていることも確認された。
 その他、過去の調査では『日本語Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ』東京外国語大学、『日本語初歩』(前出)、『日本語中級Ⅰ、Ⅱ』国際交流基金日本語国際センター(凡人社)、『中級へ行こう』平井悦子ほか(スリーエーネットワーク)、『中級を学ぼう』平井悦子(スリーエーネットワーク)、『ニューアプローチ中級日本語』小柳昇(語文研究社))、『漢字マスター』アークアカデミー(三修社)、『毎日の聞き取り』宮城幸枝ほか(凡人社)等が使用されていた。
 また、初級終了後の学習のために一般的な初中級レベルの教科書は使わず、日本語能力試験N3対策の問題集等を使って教えている機関もある。

IT・視聴覚機材

 初等・中等教育機関の日本語教育においてもコンピューターの利用が見られるようになってきた。教室内にテレビがある場合、ノートPCを繋いで映像を見せたり、音声を聞かせたりしている。高等教育機関でも同様でこれらは教師が使用できるかではなく教室環境として整備されているかによるところが大きい。
 2020年2月から同年9月まで、新型コロナウイルスの影響で全ての学校機関が閉鎖されたことから、多くの初中等・高等教育機関でインターネットを介した授業が行われた。もともと学習管理システム(Learning Management System)が導入されていた機関ではそれらを使い、そうでない場合はGoogleクラスルームやフェイスブックのグループページなどを使用して遠隔での教授活動が行われた(9月以降は対面授業に戻った)。
  日本語学校の中でもオンラインレッスンを始めた学校があるが、マネタイズや学習継続の面などから一般化されていないようだ。

教師

資格要件

初等教育

(【中等教育】参照)

中等教育

 日本語教育の学士号を取得していること。

高等教育

 日本語教育の学士号を取得していること。修士号を取得していればなお望ましい。

学校教育以外

 特になし。

日本語教師養成機関(プログラム)

 初等・中等教育課程における日本語教員の資格に関しては、2006年度よりモンゴル国立教育大学外国語学部東洋言語学科日本語コースに日本語教員養成コースが設置され、同コースに対しては、教育省が積極的な支援を行っている。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 初等・中等教育機関において日本語ネイティブ教師が在籍する学校の割合は3分の1程度である。高等教育機関においては、常勤講師を雇用できる大学は少数であり、モンゴル在留邦人を非常勤講師として活用するケースが多い。日本語ネイティブ教師の担当は会話や作文、漢字、日本事情の授業が多い。

教師研修

 国内研修としては、モンゴル日本センターが現職教師及び教師を目指す人を対象とした「日本語教育講座」を実施している。同センターでは、2019年以降、受託事業の1つとして、就労を目的とした日本語学習者に教える教師を対象とした『いろどり』(前述)に関する研修を行っている。
 訪日研修としては従来の国際交流基金「海外日本語教師研修」プログラムに加え、2008年より博報児童教育振興会の「海外教師日本研修プログラム」が実施されている。

現職教師研修プログラム(一覧)

 日本語教育講座(モンゴル日本センター)
 海外日本語教師研修(国際交流基金)
 海外教師日本研修プログラム(博報児童教育振興会)

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 1993年に「モンゴル日本語教師会」が設立され、1998年12月に法務省に登録された。大学24校、小・中学校31校、民間日本語学校73校の日本語教師が加入しており、会員数は約250名。本会はモンゴルにおける日本語教育の支援及び日本語教育スタンダードの研究・教材開発を行っている組織である。日本国大使館、国際交流基金及びモンゴル日本センターとの共催、在モンゴル日本人会、モンゴル日本商工会(モンゴルにおける唯一の公的日系企業交流会)の協賛で日本語スピーチコンテストを開催している。日本語シンポジウムに関しても、毎回主催者ないしは共催者として役割を担っている。
 2000年より日本語能力試験実施機関となり、2002年からは日本留学試験(私費留学試験)の実施協力機関となった。2007年には下部組織として日本語教育研究会を発足させ、月一回の例会を実施している。
 2012年より初等・中等教育機関向けモンゴル日本語教育スタンダードの作成を行い、2014年より開発を進めていた同スタンダード準拠の教科書『できるモン』は、1~3各上下巻が揃った。2013年度日本国外務大臣表彰を受賞した。また、2013年、当時会長であったスレン・ドルゴル氏は日本国より旭日中綬章を受勲している。2013年より日本語教育研究会で研究論文を公募し、『モンゴル日本語教育紀要』を取りまとめている。2020年に第4号が発行された。

最新動向

 前述の初中等向け教科書『できるモン』は2019年より国立大学図書館内の書店で販売されるようになった。また2020年には1の上下巻分の内容をスライド教材(パワーポイント)として作成し、教師用に共有している。
 2020年10月から日本語能力試験の申し込みをオンライン化した。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

日本語専門家

 モンゴル日本人材開発センター 1名

国際協力機構(JICA)からの派遣(2019年10月現在)

JICA海外協力隊

 エルデミーンウンダラー統合学校 1名
 第18統合学校 1名

その他からの派遣

 (情報なし)

シラバス・ガイドライン

初等・中等教育

 2005年に制定されたモンゴル国外国語教育新スタンダードに準じており、国レベルもしくは県レベルで統一された日本語教育のシラバスやガイドラインはない。

高等教育

 統一された日本語教育のシラバスやガイドラインはない。

学校教育以外

 統一された日本語教育のシラバスやガイドラインはない。

評価・試験

 日本語能力試験が最も信頼性の高い評価基準として評価されているほか、日本留学試験、J.TEST(国立科学技術大学が事務局となっている)、Nat-Testが実施されている。 2019年11月より国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-basic)が行われるようになった。特定技能「介護」の技能試験の一部として介護日本語評価試験も行われるようになった。

日本語教育略史

1975年 モンゴル国立大学文学部にて日本語コース(副専攻)開設
(公的教育機関での日本語教育の開始)
1990年 モンゴル国立大学文学部の日本語コースが日本語学科(主専攻)に昇格
第23学校(10年制学校)にて初等・中等教育としては初の日本語教育開始
(当初は大阪外国語大学の学生、個人ボランティア等が日本語を指導)
1992年 モンゴルで初めてのJOCV日本語教師隊員が第23学校に派遣
1992年ごろ~ 外国語教育を主とする私立大学が設立され始め、その多くで日本語学科が設立(モンゴルと日本両国の関係が急速に発展したことから、日本語話者の必要性が高まる)
1993年 モンゴル日本語教師会設立
1998年 JOCV隊員が地方にも派遣(ダルハン市・オユーニーイレードュイ統合学校)
2001年 日本語能力試験をウランバートルで実施開始
2002年 モンゴル・日本人材開発センター開所(日本語コース講座開始)
日本留学試験をウランバートルで実施開始
2003年 JICAシニアボランティアの日本語教師派遣開始
2004年 地方の大学へのJOCV隊員派遣開始
2005年 ウランバートル市教育局にJICAシニア隊員配置開始
大学の入試科目から日本語が外れる(語学はロシア語か英語から選択)
モンゴル教育科学省から今後の外国語教育の指針として「外国語教育新スタンダード」発表
2006年 モンゴル国立大学法学部内に名古屋大学日本法教育研究センターが開設(日本語・日本法コース開始)
2007年 JICAが中学校巡回指導の開始
モンゴル日本語教師会に日本語教育研究会が発足
10月「日本語教育シンポジウム」開催
2008年 6月「日本語教育シンポジウム」開催
2009年 10月「日本語教育シンポジウム」開催
2010年 10月「日本語教育シンポジウム」開催
2011年 9月「日本語教育シンポジウム」開催
2012年 4月 モンゴル・日本人材開発センターに国際交流基金のJF講座が開設
2013年 3月「日本語教育シンポジウム」開催
2014年 3月「日本語教育シンポジウム」開催、モンゴル日本語教育スタンダード準初中等教材の開発開始
2015年 3月「日本語教育シンポジウム」開催
2016年 3月国際交流基金主催で「日本語教育シンポジウム」開催
2017年 3月国際交流基金主催で「日本語教育シンポジウム」開催
2018年 10月国際交流基金主催で「日本語教育シンポジウム」開催
2019年 10月「日本語教育シンポジウム」開催、11月JFTBasicを実施開始
2020年 10月「日本語教育シンポジウム」開催

参考文献一覧

ページトップへ戻る