サウジアラビア(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数※
1 4 60
※学習者数の内訳
教育機関の種別 人数 割合
初等教育 0 0.0%
中等教育 0 0.0%
高等教育 60 100.0%
学校教育以外 0 0.0%
合計 60 100%

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 サウジアラビアの日本語教育は、1994年にキング・サウード大学に日本語学科が開設されたことに始まった。キング・サウード大学では2000年6月に初めての卒業生を輩出。日本企業への就職が実現している。また、同大学からは日本政府国費留学生も出ている。同大学は湾岸諸国内で唯一、学士号学位を授与する公的教育機関であることから、サウジアラビアのみならず湾岸諸国においても日本語教育の中核を担う役割を期待されている。
 キング・サウード大学以外への広がりとしては、2012年度日本語教育機関調査において、アルファイサル大学、キング・アブドルアジーズ大学女子部での日本語教育への取り組みが確認された。
 サウジアラビアの文化事情から、日本語教育の対象者はかつて男性のみであったが、近年は女性への日本語教育も広がってきている。2010年から2011年まで、ジッダにあるダール・アルヘクマ女子大学にて日本語講座が開講、2011年には外務省からの短期派遣女性教師によりプリンセス・ヌーラ女子大学、ダール・アルヘクマ女子大学、エファット女子大学、プリンス・スルタン大学女子部にて短期日本語講座が実施された。さらに、同年、サウジアラビア人女性教師によりキング・アブドルアジーズ大学女子部、ウム・アルクラ大学女子部、ジッダ・ダワー・センターにおいても短期の日本語講座が行われた。
 2011年6月から7月にかけてプリンセス・ヌーラ女子大学に国際交流基金の日本語専門家が派遣され、新たに開設される日本語学科のカリキュラム作成が行われたが、学科開設には至っていない。また、2012年にリヤドで開催された「第5回日本語弁論大会」において、初めて女性の部が設けられた。
 このように、これまで唯一の日本語教育機関であったキング・サウード大学以外にも、日本語教育のすそ野が広がり始めており、2015年に開催された「第8回日本語弁論大会」では、機関に所属しない学習者が優勝を収めた。
2018年よりキング・サウード大学の学部カリキュラムの改訂により、日本語学科の修業年数がこれまでの5年制から4年制に変更となった。

背景

 日本とサウジアラビアの交流は、日本のエネルギー政策の観点から当初経済面での交流が主流であったが、交流の多様化を図り、文化・人物交流等も積極的に進めるべきであるとの認識が両国で共有された結果、その一環としてキング・サウード大学にて日本語講座が開設されることとなった。
 一般的にサウジアラビアにおいて日本は、高度経済成長を遂げ、先端技術を有する国として評価・関心が高い。例えば、テレビ番組等でも良好なイメージで紹介されることが多い。
 また、日本は2011年に、「サウジアラビア伝統と文化の国民祭典(ジャナドリヤ祭)」において、毎年1か国しか選ばれない名誉ゲスト国として招待された。その日本館は来場者が30万人以上にのぼり、大成功を収めている。また2017年4月の日本文化週間内では3,000人収容のホールにおいて日本語講座が行われ多くの男女が参加した。
 日本への留学生も多く、アブドッラー国王奨学金プログラム(サウジ政府奨学金留学制度)を利用して日本へ留学するサウジアラビア人学生が急増した。2006年に約20名で始まった学生数は、2008年に約200名、2010年約320名、そして2012年には約500名を数えるまでになった。2019年現在は約330名が日本に留学している。

特徴

 サウジアラビアの日本語教育の特徴としては、教育機関で学ぶ学習者の全体数が少ないことや、日本語教育機関が高等教育段階に限定されていることが挙げられる。また、基本的には初等教育より男女別学であり、教師も同性の教師が教えることがほとんどである。

最新動向

 特になし。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

高等教育

 2020年10月現在、日本語専攻課程があるのはキング・サウード大学のみである。同大日本語専攻卒業時のレベルは日本語能力試験N2程度である。これまでは、日本語専攻内の学生のみを対象にした授業だけであったが、2019年7月には一般向けの短期の夏期講座が開かれた。
 他に、リヤドではアルファイサル大学、ジッダではキング・アブドルアジーズ大学女子部において、選択科目として日本語講座が不定期で行われている。

学校教育以外

 日本語教育の実施は確認されていない(2020年10月現在)。過去には在ジッダ日本総領事館において、1999年4月から6月まで日本語講座を実施していた。また、ジッダにあるアブドゥルラティフジャミール・センター・フォー・コンティニュアス・ラーニング(ACCL)においても2009年から2010年まで一般講座が開かれていた。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 6-3-3制。初等教育機関として小学校(6年間)、中等教育機関として中学校(3年間)及び高等学校(3年間)があり、高等教育機関として大学(通常は1年予備教育、4年専攻科)及び2年制の短期大学、教員養成大学等がある。2004年の閣議決定により、小中学校の9年間を義務教育とすることが正式に制定された。
 小学校から男女別学。公立の場合、大学卒業まで教育費は無料。政府は大学生を対象に月額約840リヤル(約25,000円)の奨学金も支給しており、進学を奨励している。

教育行政

 初等教育、中等教育、小学校教員養成、特殊教育及び生涯・社会人教育を教育省が、高等教育を高等教育省が管轄している。また、技術高校、技術短大、職業訓練センターを技術教育職業訓練庁が管轄している。女子教育に関しては2002年に女子教育庁が教育省に統合され、現在は教育省が管轄している。2004年には女子高等教育分野の管轄が高等教育省に移管された。

言語事情

 公用語はアラビア語。ただし、多くの場所で英語が通用する。

外国語教育

 公立の学校では以前は英語教育が6年生から教えられていたが、現在では小学校4年生から行われている。近年の教育改革において、特に英語教育に力を入れていることがうかがえる。また私立の小学校では1年生から英語教育を取り入れているところもある。 2019年には中国語の授業が全教育段階で開始されるという発表があった。

外国語の中での日本語の人気

 インターネットやTV等を通じ、アニメを代表とする日本のポップカルチャーが特に若者層に浸透しており、日本語に対する人気も高い。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育のは確認実施されていない。

高等教育

  • 『かなをまなぼう』ファーリス・シハーブ
  • 『アラブ人のための日本語』ファーリス・シハーブほか
  • 『まるごと 日本のことばと文化 かつどう編 A1~』国際交流基金(三修社)
  • 『初級からの日本語スピーチ』国際交流基金関西国際センター(凡人社)
  • BASIC KANJI BOOK Vol.ⅠⅡ』加納千恵子ほか(凡人社)
  • INTERMEDIATE KANJI BOOK』加納千恵子ほか(凡人社)
  • 『日本語文化読解』ファーリス・シハーブ

学校教育以外

 日本語教育の実施は確認されていない。

IT・視聴覚機材

 サウジアラビア国内で日本語が学習できる教育機関は限られているため、インターネットの語学学習サイト等に登録したりすることで、独学で日本語学習に励んでいるサウジアラビア人が多く見られる。

教師

資格要件

 2020年10月現在、サウジアラビア人の日本語教師はキング・サウード大学に1名在籍するのみで、資格、及び研修制度については記述できない。以下は現地採用講師(外国人講師)の場合。

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

高等教育

 専任講師は、日本語教育関連分野での修士号か博士号の学位取得者。助手や非常勤講師は、各大学の判断に任されている。日本語ネイティブ教師の場合は、日本語教育経験や日本語教師養成講座(420時間)修了、日本語教育能力検定試験合格等があると有利である。

学校教育以外

 日本語教育の実施は確認されていない。

日本語教師養成機関(プログラム)

 サウジアラビアには日本語教師を養成する特別プログラムは存在しないが、キング・サウード大学日本語専攻では、将来のサウジアラビア人日本語教師を育成するため、成績が優秀だった卒業生を助手(アシスタント)として採用している。これまで2008年、2011年、2012年に1名ずつ計3名が採用された。そのように大学職員として採用された者たちは、専任講師昇格条件である修士号や博士号を取得すべく、日本に留学中である。留学費用は国費で賄われ、留学期間中の給与も保証される。2020年10月時点で、日本の大学の博士課程に在籍する助手が2名、修士号を取得し、博士課程入学準備中の助手が1名キング・サウード大学に在籍している。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 駐在員の配偶者等、滞在資格を持つネイティブ教師若干名が、短期講座の講師として採用されることがある。主に入門レベルの授業を、単独で担当する。
 2020年10月現在、キング・サウード大学に現地採用の日本人教師が1名在籍している。

教師研修

 現職の日本語教師対象の研修はない。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 国内に日本語教育関係のネットワークはないが、中東諸国(エジプト、アラブ首長国連邦、イエメン、イラン、カタール、サウジアラビア、シリア、チュニジア、トルコ、バーレーン、モロッコ、ヨルダン、レバノンほか)の日本語教師のネットワークがある(国際交流基金カイロ日本文化センターが主催)。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣(2019年10月現在)

日本語専門家

 キング・サウード大学 1名

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし

その他からの派遣

 (情報なし)

シラバス・ガイドライン

 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムは確認されていない。

評価・試験

 共通の評価基準や試験は確認されていない。

日本語教育略史

1993年 キング・サウード大学に国際交流基金専門家派遣開始
1994年 キング・サウード大学に3年制日本語学科開設
1998年 キング・サウード大学日本語学科が5年制に
1999年 在ジッダ日本総領事館にて短期日本語講座実施
2001年 教科書『かなをまなぼう』『アラブ人のための日本語』出版
2004年 日本大使館主催「第1回日本語弁論大会」開催
2009年 アブドゥルラティフジャミール・センター・フォー・コンティニュアス・ラーニング(ACCL)にて短期日本語講座実施
2010年 ダール・アルヘクマ女子大学にて日本語講座開始(2011年まで)
2011年 プリンセス・ヌーラ女子大学に日本語学科開設準備のため国際交流基金専門家が短期派遣
プリンセス・ヌーラ女子大学、ダール・アルヘクマ女子大学、エファット女子大学、プリンス・スルタン大学女子部、ウム・アルクラ大学女子部、ジッダ・ダワー・センターにて女性向け短期日本語講座実施
2012年 アルファイサル大学、キング・アブドルアジーズ大学女子部にて日本語講座開始
「第5回日本語弁論大会」にて初めて女性の部開催
2018年 キング・サウード大学日本語学科が4年制に
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