スペイン(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数※
141 325 8,495
※学習者数の内訳
教育機関の種別 人数 割合
初等教育 5 0.1%
中等教育 36 0.4%
高等教育 1,743 20.5%
学校教育以外 6,711 79.0%
合計 8,495 100%

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 公的機関による日本語教育は、1971年にバルセロナ、1975年にマドリードの両国立語学学校(現・公立語学学校(EOI))である。
高等教育機関においては、1985年にマドリード自治大学語学センターで日本語コースが開始したが、1992年に同哲文学部に東アジア研究センターが設置されて以降は、学部レベルでも日本語・日本文学等の選択科目が履修可能となった。1988年にはバルセロナ自治大学翻訳通訳学校(3年間の学士課程(Diplomatura)を提供)で選択科目として日本語が開講、1992年に翻訳通訳学部(4年間の学士課程(Licenciatura)を提供)に昇格して以降も継続した。また1994年にはバルセロナ自治大学でスペイン初の日本語能力試験が実施されるなど、1980~1990年代は各地の大学の附属語学センターや人文科学系学部の第二外国語科目や自由選択科目として日本語コース設置の動きが活発化し、大学における日本語コースの地位が確立していった。附属語学センター等での一般向け公開講座も含め、現在は約30大学で日本語コースが開講されている。
 学士課程レベルでは、スペイン政府の承認の下、2003年にマドリード自治大学、バルセロナ自治大学、サラマンカ大学、カタルーニャ公開大学の4大学において日本研究を含む東アジア研究後期学士課程(Ciclo Superior de Licenciatura:2年間)が誕生した。このうちマドリード自治大学及びバルセロナ自治大学の課程に関しては、ボローニャ・プロセス(1999年にイタリアのボローニャで採択された『ボローニャ宣言』に基づくヨーロッパの高等教育の改革プロセス)に従い、それぞれ2009年にアジア・アフリカ研究学士課程及び東アジア研究学士課程(Grado:4年間)として改編、サラマンカ大学の課程に関しては2008年に修士課程への統合を経つつ2015年に学士課程(Grado:4年間)としても新設、カタルーニャ公開大学の課程に関しては2012年に修士課程に統合された(2019年終了)。さらに2011年にはセビリア大学においても東アジア研究学士課程(Grado:4年間)が設置され、学士課程においても日本語学習のための環境が整いつつある。
 一方、スペイン各地の公立語学学校(EOI)では日本語学習のニーズの高まりを受け、前述のマドリードとバルセロナを含めて現在12校で日本語コースが開講されている。また公的機関としては、国際交流基金マドリード日本文化センターと提携するカサ・アシアのマドリードとバルセロナで日本語講座が実施されている。その他、民間の語学学校等も80機関以上ある他、個人教授で日本語を学ぶ学習者も少なくない。
 2018年の日本語教育機関調査(速報値)では日本語学習者が前回(2015年)比約160%の大幅増となっており、日本語教育はますます盛んになっている。日本語能力試験も1994年の開始時にはバルセロナ自治大学のみの実施であったが、その後2006年に国内2番目の会場としてマドリード自治大学でも開始、現在では全国7会場で実施されるまでに成長している。
 日本語教育支援体制としては、2010年2月にスペイン日本語教師会(APJE)が設立され、同年4月に国際交流基金マドリード日本文化センターが開設、ともに設立10年を迎え、教師研修の機会の提供とネットワークの強化を通してスペインにおける日本語教育の拡充をさらに進めている。

背景

 スペインでは70年代中頃以降、30年以上続いていた独裁政権から民主化への移行に大きなエネルギーが注がれたため、他の欧州諸国と比べ国際化という点で大きく遅れをとり、アジア地域を含む欧州以外の地域に対する関心が低かった。しかし、EU加盟後の目覚しい経済発展の後押しを受け、それまで関係が薄かった国・地域に対する関心が高まり、現在では官民をあげて日本やアジア諸国との関係強化に取り組んでいる。2001年には、政府が掲げた「プラン・アシア」に基づき、スペインとアジア諸国の学術・文化・経済交流促進を目的としたカサ・アシアが設立された。また、2007年にはマドリード市が、日本との交流強化計画「プラン・ハポン」を掲げ、これに基づき、2010年4月にマドリード市の誘致を受けた国際交流基金マドリード日本文化センターが開設された。
 市民レベルでも対日評価・対日関心は非常に良好であり、伝統文化、日本食、武道などに対する関心が高いほか、近年では、日本のアニメ、マンガ、ゲームなどに傾倒する若年層を中心に日本語を学習する人々が増加している。スペイン各地で日本に関するイベントが行われ、毎年秋に、マドリードで開催されるジャパン・ウィークエンド・マドリードには16万人以上、バルセロナで開催されるマンガ・バルセロナには15万人以上が参加している。また、日本への旅行者数も増加傾向にあり、日本旅行をきっかけに日本語に関心を持ち、日本語学習を始める学習者も少なくない。

特徴

 スペインでは、公立語学学校(EOI)や大学附属語学センターの公開講座、そして民間の語学学校等の学校教育以外の日本語教育機関で学ぶ学習者が約80%を占め、高等教育が20パーセント、初等・中等教育では日本語教育はほとんど行われていない。その他に機関調査の結果には表れないが、個人教授で日本語を学ぶ学習者も多い。

最新動向

  1. (1)2018年の日本語教育機関調査(速報値)では、機関数、学習者数、教師数すべて前回(2015年)比160%の高い伸びを示しており、急激に増加している。 また、スペインではこれまで初・中等教育機関での日本語教育は把握されていなかったが、同調査で5機関(補習授業校2校を含む)が初めて確認された。
  2. (2)日本語能力試験は1994年にバルセロナ自治大学で始まったが、2019年は7月にバレンシア、12月にグラン・カナリア島のラス・パルマスでも始まり、合計7会場となった。受験者も順調に増加して、1994年の約200名から2019年には約1400名となり、近年は上位レベル(N1、N2)の受験者も増えている。
  3. (3)スペイン日本語教師会(APJE)の活動が非常に活発で、2018年6月に第3回日本語劇コンクールが、2019年6月に第5回日本語教育シンポジウムが開催された。どちらも隔年開催で、今後も継続される予定であったが、2020年度は新型コロナウィルスの感染拡大の影響で第4回日本語劇コンクールは中止となった。
  4. (4)2015年に東京外国語大学と国際交流基金の支援の下、サラマンカ大学文献学部に東アジア専攻の4年制学士課程(Grado)が導入され、2019年に最初の学生11名が課程を修了した。
  5. (5)2018年にバレンシア州のアリカンテとエルチェの公立語学学校(EOI)で公式の日本語コースが開講した。EOIではCEFR準拠の外国語教育が行われているが、2018年にCEFRの補遺版(Companion Volume)が公開されたのに伴い、日本語でも「仲介」を授業や評価に取り入れる動きが進んでいる。
  6. (6)2019年に国際交流基金メキシコ日本文化センターの発案で「スペイン語でつながる日本語教師ネット」が設立され、中南米スペイン語圏の教師とスペインの教師がオンラインで繋がり、スペイン日本語教師会(APJE)も協力する勉強会が始まった。

教育段階別の状況

初等教育

 学校教育の正規の外国語科目としては実施されていないが、補習授業校2校と民間の年少者向け日本語教室1校で継承語教育として実施されている。その他の日本語教育機関で夏休み等の特別コースとして開講されることもあり、個人教授で学ぶ学習者もいる。

中等教育

 学校教育の正規の外国語科目としては実施されていないが、バレンシアのサント・トマス・デ・ビジャヌエバ校(Colegio Santo Tomás de Villanueva)等では希望者向けの課外授業として実施されている。公立語学学校(EOI)では義務教育で教えない外国語は14歳から受講可能で、大学附属語学センター等でも16歳から学生を受け入れており、国際交流基金マドリード日本文化センターでも中高生向け講座を開講している。個人教授も含めると相当数の学習者が存在する。

高等教育

 マドリード自治大学、バルセロナ自治大学、サラマンカ大学、セビリア大学には、日本研究を専攻した場合に日本語を必修科目として学習する東アジア研究学士課程ないしアジア・アフリカ研究学士課程(Grado)があるほか、日本の法律・社会・文化に特化した日本研究修士課程がサラゴサ大学に、日本研究を含む東アジア研究等の修士課程がマドリード自治大学、バルセロナ大学、ポンぺウ・ファブラ大学、サラマンカ大学、バリャドリード大学、グラナダ大学等にあり、その他の大学でも選択科目として日本語が設置される場合がある。通信遠隔教育ではカタルーニャ公開大学と国立遠隔教育大学(UNED)に日本語コースがあるほか、マドリード・コンプルテンセ大学など多くの大学の附属語学センターでも一般向け公開講座として日本語コースを設置しており、それぞれ単位を取得することもできる。
 東アジア研究学士課程等の学生は在学中に提携大学等へ留学するケースが多い。また、文部科学省国費留学制度、国際交流基金各種フェローシップ制度などに応募する者も少なくない。

学校教育以外

 大学の附属語学センターでは一般向け公開講座として日本語コースを設置している。学生以外の受講者も多いため、2015年の機関調査では「学校教育以外」に分類されているが、現在約30大学に設置されている。
 スペイン独自の教育制度に基づく公的な言語教育機関である公立語学学校(EOI)では、日本語の公式コースが8校(バルセロナ、マドリード、マラガ、ビーゴ、ア・コルーニャ、バレンシア、アリカンテ、エルチェ)に設置されており、他に4校(パンプローナ、トゥデラ、ムルシア、シウダード・レアル)で非公式のコースを開講している。公式コースではCEFR準拠の教育とレベル認定試験を実施しており公的な資格を得ることができるが、日本語は現在B2レベルまでとなっている。他に公的機関ではカサ・アシア(バルセロナ、マドリード)で一般向けの日本語教育が実施されており、国際交流基金マドリード日本文化センターとともにJF日本語教育スタンダード準拠の日本語講座を実施している。そのほか、マドリード、バルセロナ等の大都市を中心に、民間の語学教育機関(いわゆる語学学校)の日本語コースも多い。また、スペインの特徴として、年少者も含めて個人教授で日本語を学ぶ人が少なくない。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 6-4-2制。
 幼児教育が幼稚園(0~3歳)と幼児学校(3~6歳)の6年間、義務教育は、小学校6年間(7~12歳)、前期中等教育(ESO)4年間(13~16歳)までの10年間。その後、後期中等教育(バチジェラート)2年間(17~18歳)。高等教育は大学(4~6年。専攻によって異なる)、職業教育を中心とする専門学校がある。

教育行政

 教育法に定められた基本的枠組みの中で、国内全17自治州に対して教育制度に関する自治が認められており、各自治州によってカリキュラムの内容等は異なる(例えば、カタルーニャやバスクなど、スペイン語以外の公用語を併せ持つ自治州では、州公用語の授業の義務化など)。

言語事情

 憲法によってスペイン語(カスティーリャ語)がスペイン全土の公用語として定められているが、自治州によってはその州の言語も公用語として併用されている(ガリシア州、バスク州、カタルーニャ州、バレンシア州等)。

外国語教育

 小学校1年生より外国語が必修(ほとんどの場合英語)。中学校1年生より第二外国語が選択科目となる。自治州によって異なるが、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語などが選択可能。また、語学学習に特化した公立語学学校(EOI)が300以上設置されており、そこでもスペイン国内の地方語や欧州言語のほかにアジア言語などさまざまな言語が教えられている。

外国語の中での日本語の人気

 相対的な学習者は、英語や主要欧州言語よりも少ないが、他のアジア言語と比較すると、日本語の人気は非常に高い。特に、日本のアニメやマンガ、ゲームやドラマ等の人気が高まっていることもあり、ポップカルチャーへの関心がきっかけで日本語学習を始める例が多く見られ、個人教授や独学で学んでいるケースも多い。授業料の安い公立語学学校(EOI)では、日本語は毎年10倍を超える倍率で抽選となっているほか、東アジア専攻課程においても中国語、韓国語、アラビア語など他の言語と比べて日本語コースの人気は圧倒的に高く、競争率も高い。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 補習授業校等の継承語教育では、日本の学校教育の教材や日本の子ども向けの教材を使用している。個人教授や単発の日本語講座では『おひさま[はじめのいっぽ]子どものための日本語』(くろしお出版)、『まるごと 日本のことばと文化 入門(A1)』(三修社)などが使われることもある。

中等教育

 補習授業校等の継承語教育では、日本の学校教育の教材や日本の子ども向けの教材を使用している。個人教授や単発の日本語講座では『みんなの日本語 初級Ⅰ・Ⅱ』(スリーエーネットワーク)、『まるごと 日本のことばと文化 入門(A1)』国際交流基金(三修社)などが使われている。また、Web版『エリンが挑戦!日本語できます。』(国際交流基金)もよく使われている。

高等教育

 多くの機関では主教材として『みんなの日本語Ⅰ、Ⅱ』本冊、翻訳・文法解説書スペイン語版(スリーエーネットワーク)が使用されているほか、スペイン発行教材『Nihongo. Gramatica de la lengua japonesa. Japones para hispanohablantes』(Herder, S.A.)などが使用されている。中級レベルでは『まるごと 日本のことばと文化 中級(B1)1・2』国際交流基金(三修社)を使うところも多く、その他の日本で市販されている教材も使われている。

学校教育以外

 『みんなの日本語Ⅰ、Ⅱ』本冊、翻訳・文法解説書スペイン語版(前出)や関連副教材のほか、最近は『まるごと 日本のことばと文化』シリーズ(三修社)もよく使われている。『Nihongo. Gramatica de la lengua japonesa. Japones para hispanohablantes』(Herder, S.A.)、『Japanese for Busy People』スペイン語版(AJALT)、など入門、初級レベルではスペイン語解説つきの教材も多く使用されているが、『初級日本語げんき』坂野永理ほか(The Japan Times)、『できる日本語』できる日本語開発プロジェクト(アルク)、『文化初級日本語』文化外国語専門学校日本語科(文化外国語専門学校)を使用している学校もある。
 そのほか、参考書としては、独学者向けにスペイン人著者が執筆した、マンガを利用した教材『Japones en vinetas. Curso basico de japones a traves del manga マンガで日本語』(Norma)のシリーズが初心者の絶大な支持を得ている。スペイン人学習者向けの文法参考書では『Manual de Japones Basicoスペイン語圏 日本語基礎文法』(Pearson Education Japan)、『Manual de lengua japonesa (Segunda Edicion)』(マドリード自治大学)などもよく利用されている。
 文字教材としては、『Basic Kanji Book』加納千恵子ほか(凡人社)、『ストーリーで覚える漢字300』ボイクマン総子ほか(くろしお出版)、『漢字たまご』有山優樹ほか(凡人社)、『GENKI Plus KANJI LOOK AND LEARN』坂野永理ほか(The Japan Times)の他、上述と同じ著者によるマンガを利用した『Kanji en vinetas. Curso basico de kanji a traves del manga マンガで日本語』(前出)も使われている。国際交流基金の「ひらがなMemory Hint」「カタカナMemory Hint」「漢字Memory Hint」も教師を通して紹介されている。

IT・視聴覚機材

 高等教育機関や公立語学学校(EOI)、国際交流基金等の公的機関、大手民間語学学校等においては教室にPCやプロジェクター、TVモニター、DVDプレーヤー、音響などの設備が整っている場合もあり、授業でマルチメディア教材、パワーポイントやDVD、インターネットなどを活用している教師も多い。国際交流基金が開発した「エリンが挑戦!にほんごできます。」のDVDWeb版、「アニメ・マンガの日本語」Webサイト、「まるごと+(プラス)入門(A1)」などもスペイン語版があるため、よく利用されている。また、スペイン語がないもの(「ひらがな Memory Hint」「カタカナ Memory Hint」「漢字Memory Hint」)も英語版が使われている。そのほか教師の間では「まるごと+」や「ひろがる」を授業で使っているという声も聞く。
 スペインでは通信制大学2校で日本語が開講されており、講座登録者向けのEラーニングが活用されている。まず、カタルーニャ公開大学は対面授業なしの完全通信制大学であり、同語学スクールで開講されている日本語コースもオンラインでの受講となっている。教材は日本語講師とシステム開発者が協力して開発しており、印刷用教材とEラーニング教材がある。イラスト、音声、動画などを活用した教材で、学習者が自由にアクセスし、練習問題等に取り組むことができ、教室のフォーラムや担当講師に質問のメールを送ることもできる。また、学習者が動画、音声、テキストを送ることができる教室内ブログも活用されている。また2010年に新規で日本語コースが開講された国立遠隔教育大学(UNED)では、『まるごと 日本のことばと文化』が主教材とされており、国際交流基金の「まるごと日本語オンラインコース」も併用されている。補助教材として文法や漢字の練習問題が提供されている。試験以外は基本的にオンライン受講であり、掲示されたペースに従って同サイトで学ぶことになっているが、スクーリングコースを選んだ場合は、スペインの2地域では、週1回の対面授業も実施されている。
 国際交流基金の「JFにほんごeラーニング みなと」にはスペイン語で開講されているコースがあり、国際交流基金マドリード日本文化センターでも独自の自習コースや教師サポートコースを開講している。

教師

資格要件

初等教育

 学校教育の正規の外国語科目としては実施されていないため、特に資格要件はない。

中等教育

 学校教育の正規の外国語科目としては実施されていないため、特に資格要件はない。

高等教育

 日本語教師としての資格は明確ではないが、学士号以上の学歴を有し(日本で取得した学位の場合、大学によっては、スペインでの学位認定手続きが必要)、スペインにおける日本語教育の経験を有していることが一応の基準となっている模様。なお、各大学独自の選考によって採用が決定されているが、語学センター等の場合、時間給による有期雇用契約が多い。また、東アジア研究学士課程の常勤教員の場合、契約更新条件として博士号の取得が課されるなど、大学の常勤教員となるためには相当の日本語教育経験と学位が必要となってきている。

学校教育以外

 公立語学学校(EOI)の教師となる場合は、各州によって多少異なるが、学士号を有し、かつ公立語学学校(EOI)の日本語学科を卒業していること、あるいは同校が実施する認定試験の最上級レベルに合格していることなどが条件となっており、書類審査、採用試験を経て決定される。なお、公立語学学校(EOI)の待遇等は公務員に準じており、多くはスペイン人であるが、最近は日本語ネイティブ教師も増えている。民間の語学学校の場合は、特に定まった資格要件はないが、スペインにおける日本語教育経験などが考慮されることが多く、一定のスペイン語能力と地域によっては地域語の能力も必須であり、また労働居住許可などの在留資格を有していることが条件となる。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本語教師養成機関やプログラムはない。

日本語のネイティブ教師(日本語教師)の雇用状況とその役割

 日本語教師の約75%は日本語ネイティブ教師である。スペイン人教師は高等教育において日本の政治・経済・文化・社会やなどの専門科目を教える傍らで日本語科目も担当するなど、重点は専門科目にあるようである。東アジア研究学士課程などにおいては、主なコーディネーターは日本人教師であり、課程全体の方針に従って全体カリキュラムを組んだ上で、科目担当者がそれぞれ授業を計画・実施している。大学附属語学センターや第二外国語や選択科目で教えている大学においては、日本語ネイティブ教師1~数名で日本語コースを担当している場合がほとんどである。
 一方、公立語学学校(EOI)では日本語ネイティブ教師がいない学校もある。全国共通の目標、時間、シラバスなどの要領に沿って、主にスペイン人教師がコーディネートし、授業を実施している。民間の語学学校においても、日本語ネイティブ教師のほうが圧倒的に多い。初級段階が中心であるため、特に科目によるネイティブ教師と現地教師の役割分担などはほとんど行われていない。

教師研修

 スペインでは様々な形で教師研修、セミナーが開催されている。スペイン日本語教師会(APJE)による春と秋のセミナーや週一回のオンライン勉強会のほか、スペイン日本語教師会(APJE)と国際交流基金マドリード日本文化センターとの共催による総会兼研修会(毎年)やシンポジウム(隔年)が実施されている。また、国際交流基金マドリード日本文化センター主催の地方巡回日本語教育セミナーがスペイン各地において年数回実施されている。加えて、2017年度からは新たな試みとしてオンライン研修が実施され、地理的な制約のない研修形態が好評を得ており、スペインのみならず、隣国のポルトガルからの参加も多い。
 海外研修としては、国際交流基金日本語国際センターの日本語教師訪日研修や、毎年フランスで行われている欧州日本語教育研修(国際交流基金パリ日本文化会館主催)にスペインから参加する場合もある。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 以前、バルセロナにはカタルーニャ州の教師が中心となった日本語教師会が存在していたが、スペイン全土を網羅するネットワークは存在しなかった。2000年から毎年1月に大使館で行われていた日本語教師連絡会を母体として徐々に教師会設立機運が高まり、2010年2月に設立総会が行われ、スペイン日本語教師会(APJE)が正式に発足した。2010年は設立総会とともに研修会を実施したほか、3月に勉強会、6月に第1回スペイン日本語教師会シンポジウム、10月にワークショップを開催し、論集を発行するなど活発に活動している。2013年9月には第17回ヨーロッパ日本語教師会(AJE)シンポジウムをマドリードで開催した。また、2014年からは隔年で日本語学習者による日本語劇コンクールを開催している。2020年2月現在の会員数は150名。活動内容は、教師会総会兼研修会(2月)、シンポジウムまたは日本語劇コンクール(6月)、研修会・ワークショップ(年2-回)を国際交流基金マドリード日本文化センターとの共催または助成で実施しているほか、教師会ホームページやFacebookでの情報提供、メールによる会員向け情報発信、論集の発行(PDF版)、オンライン勉強会(毎週)や教材開発プロジェクト等の活動を行っている。

最新動向

 シンポジウムは隔年の開催としており、2019年にはアリカンテ大学において第5回大会が開催された。2021年には第6回大会が、2022年6月には第4回日本語劇コンクールを開催する予定である。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣(2019年10月現在)

日本語専門家

 国際交流基金マドリード日本文化センター 1名

日本語指導助手

 国際交流基金マドリード日本文化センター 1名

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし

その他からの派遣

 なし

シラバス・ガイドライン

初等教育

 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

中等教育

 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

高等教育

 東アジア研究学士課程においてはボローニャ・プロセスに従ったETS(単位)制度を取り入れており、課程全体の単位数は240単位で、各学年60単位。その内訳は大学によってやや異なるが、教養60、必須84-120、選択90-54、実習6単位であり、うち言語科目の単位は40%となっている。また、CEFRに基づいた全課程終了時の目標レベル設定はB1-B2である。選択科目などで日本語を開講している場合、また、語学センターでも単位が認められる場合は、単位取得に必要な時間数のほかには、特に決められたシラバスやガイドラインはない。

学校教育以外

 公立語学学校(EOI)ではCEFRに準拠した教育が行われ、全言語に共通したカリキュラムが国レベル、州レベルで制定されている。CEFR導入前は基礎・中級・上級の3レベルだったが、2006年にCEFRが導入されて基礎がA2、中級がB1、上級がB2となり、その上にC1、C2が追加された。2017年にカリキュラムの改訂があり、CEFRと同様にB1とB2が中級、C1とC2が上級へと今後移行される。日本語は現在のところB2までしか開講されておらず、各州のカリキュラムに基づいて各校の教師がコースデザインを行っている。

評価・試験

 公立語学学校(EOI)ではCEFRに準拠した教育が行われ、各州で公的なレベル認定試験を実施している。この試験はコースを履修していなくても受験することが可能で、公的な資格と認定されている。中等教育では正式に日本語が教えられていないため、大学入試では受験科目として日本語は採用されていない。国際交流基金の日本語能力試験はNOKEN」の略称で、広く認知されており、受験者も多い。また、少数ではあるが、日本漢字能力検定試験を受験する学習者もいる。

評価・試験の種類

 公立語学学校(EOI)のレベル認定試験は各州が実施しているため統一試験ではないが、認定された資格は国内で通用する。日本語能力試験は統一試験的性格を持っているが、CEFRに準拠していないため、職業上の資格や大学等での単位や修了の要件にはなっていない。

日本語教育略史

1971年 バルセロナ国立語学学校にて日本語コース開講
1975年 マドリード国立語学学校にて日本語コース開講
1985年 マドリード自治大学語学センターにて日本語コース開始
1988年 バルセロナ自治大学の翻訳通訳学校(1992年翻訳通訳学部に昇格)にて日本語コース開始
1992年 マラガ公立語学学校(EOI)にて日本語コース開講
マドリード自治大学哲文学部に東アジア研究センター開設、日本語・日本文学等に関する科目が開講
1994年 バルセロナ自治大学にて日本語能力試験を初実施
1980年代末
~1990年代
各地の大学の語学センター、翻訳・通訳学部、文学部等で日本語講座設置が活発化
2003年 スペイン政府の承認を受け、マドリード自治大学、バルセロナ自治大学、サラマンカ大学、カタルーニャ公開大学に東アジア研究後期学士課程(2年間)が新設
カサ・アシア・バルセロナにおいて日本語講座開講
2006年 マドリード自治大学にて日本語能力試験を実施
公立語学学校(EOI)のカリキュラムにCEFR導入
2007年 ガリシア州(ビーゴ、ア・コルーニャ)の公立語学学校(EOI)にて日本語コース開講
2008年 サラマンカ大学の東アジア研究学士課程が修士課程に改編
カサ・アシア・マドリードにおいて日本語コース開講
2009年 マドリード自治大学、バルセロナ自治大学にて東アジア研究学士課程(4年間)が設置
2010年 スペイン日本語教師会(APJE)が発足
国際交流基金マドリード日本文化センター開設
第1回スペイン日本語教師会シンポジウムをマドリードで開催
国立遠隔教育大学(UNED)にて日本語講座開講
2011年 国際交流基金マドリード日本文化センター内で直営日本語講座開講
カサ・アシア, マドリードで同基金との連携日本語講座開講
2012年 第2回スペイン日本語教師会シンポジウムをバルセロナで開催
サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学において日本語能力試験を実施(国内3会場に)
2013年 マドリードで第17回ヨーロッパ日本語教師会(AJE)シンポジウム開催
2014年 グラナダ大学において7月に日本語能力試験を実施
カサ・アシア, ・バルセロナで国際交流基金マドリード日本文化センターとの連携日本語講座開講
第1回日本語劇コンクールを開催(以後、隔年で開催)
2015 年 第3回スペイン日本語教師会シンポジウムをサンティアゴ・デ・コンポステーラで開催
スペイン日本語教師会(APJE)、バルセロナ自治大学(UAB)が国際交流基金のさくらネットワークメンバー*に加入。
サラマンカ大学にて東京外国語大学グローバルオフィスが開所
また、文献学部内に東アジア研究課程日本語コースが、翻訳学部内にも日本語コースが開講される。
2016年 マドリード・コンプルテンセ大学にて7月に日本語能力試験を実施
バレンシアの公立語学学校(EOI)にて日本語コース開講
2017年 第4回スペイン日本語教師会シンポジウムをサラマンカで開催
バレンシアのサント・トマス・デ・ビジャヌエバ校(Colegio Santo Tomás de Villanueva)にて日本語の課外コースが開始
公立語学学校(EOI)カリキュラム改定
2018年 バレンシア州(アリカンテ、エルチェ)の公立語学学校(EOI)にて日本語コース開講
2019年 公立語学学校(EOI)カリキュラムの追補版公開
第5回スペイン日本語教師会シンポジウムをアリカンテで開催
バレンシアのサント・トマス・デ・ビジャヌエバ校で7月に日本語能力試験を実施
ラス・パルマスのラス・パルマス・デ・グラン・カナリア大学で12月に日本語能力試験を実施(国内7会場に)

*さくらネットワークメンバー:国際交流基金が、世界各地での日本語教育の充実・発展・質の向上を目標に構築を進める「JFにほんごネットワーク(通称;さくらネットワーク)」を構成する連携機関。各国・地域の中核的日本語教育機関がさくらネットワークメンバーとして認定を受けている。

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