英国(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2021年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数※
172 473 14,631
※学習者数の内訳
教育機関の種別 人数 割合
初等教育 1,558 10.6%
中等教育 3,648 24.9%
高等教育 6,573 44.9%
学校教育以外 2,852 19.5%
合計 14,631 100%

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 英国における日本語教育の端緒は、19世紀終盤の日本の開国期に赴任した外交官(アーネスト・サトウ、ウィリアム・アストン等)による日本の言語・文化の研究の形で立ち現れたものと言われており、その成果として口語辞書、文法書等の出版が記録されている。
 20世紀に移り、1917年にはロンドン大学に東洋研究所(The School of Oriental Studies, 1938年にThe School of Oriental and African Studies:以下、「SOAS」に改組)が設立され、教育機関内における日本語教育実施への萌芽が見られた。しかしながら同研究所で細々と営まれた日本語教育は、1921年に日英同盟が終息すると、中国大陸における植民地政策の利害対立による両国の敵対もあって、第二次世界大戦初期までは有名無実に近い状態に陥った。
 開戦後は、いわゆる敵国研究の必要性により、同研究所に日本語特別コースが設けられ、当該コースで日本語を学んだ者の数は、1942年から1947年までの5年間で約650名にも上る。
 戦後、1947年にスカボロー卿を座長とする諮問委員会が、主として国際問題への国家的対応のための学問基盤を整える観点から、東洋・アフリカ研究の必要を政府に答申したことにより、オックスフォード、ケンブリッジといった名門大学に日本語講座が設けられていく。1961年には、軍事力の低下した英国の国際影響力を維持する観点より、通称「ヘイター・レポート」(the Hayter Report)が米国式の地域研究の必要性を説くこととなり、大学における日本語教育の成長に弾みがつくこととなった。
 ヘイター・レポートは、政府及び通商関係者の教育・研究の重要性についての認識が足りないとして、1986年に「未来に向けて―アジア・アフリカ言語及び地域研究に対する英国外交・通商上の要請に関する一考察」という調査報告書(通称:パーカー・レポート)が作成される。パーカー・レポートの結論部では、日本語、日本文化を学ぶべき理由として「世界貿易における日本の役割の増大と国内市場の漸次の自由化」が挙げられており、同レポートに対する『英国日本研究会の見解』(1986年9月)においても、「長期的目標」として「世界第2位の日本経済の位置に鑑み、日本研究は英国の大学カリキュラムの中で重要な位置を占めることが望ましい」と述べられている。
 ロンドン大学SOASの歴史に垣間見られるように、同レポート発表以前より英国のアカデミズムにおいては日本を含めた東洋研究は、しかるべき位置を占めてはいたものの、少数精鋭の研究者による研究対象で、パーカー・レポートによれば「米国の場合、過去27年間にわたって、歴代の政府当局がLess Commonly Taught Languages研究を、連邦と州レベルの双方において奨励し、これに資金を与えるという積極政策をとってきたのと比べ、著しくかつ恥ずべき対照をなすもの」であり、日本語学習の大衆化は、同レポート以後に図られたと言えよう。その後、日本経済の順調な発展に影が差すまでの間、英国における日本語教育は、追い風に乗って成長を続けることとなった。1988年のイギリス通商産業省(DTIOpportunity Japanキャンペーンも、日本を英国の外交、通商上の重要な相手国とみなし、両国の特に通商面での関係強化を視野に入れた日本研究及び日本語教育振興策であった。
 一方、近年の教育省(DfE : Department for Education)の言語政策に目を移すと、1995年よりイングランド地方に導入されたLanguage College認定制度、1999年4月より、公募により選抜された初等教育機関20校での実験的な外国語教育導入等の施策が観察され、教育省は一言語主義からの脱却を図り、明白に外国語教育の促進を企図していたことがわかる。また、2002年にはLanguages for All, Languages for Lifeをスローガンとする外国語教育に関する国家戦略が発表された。これは、早期教育の必要性に着目して、2010年までにKey Stage 2(第3学年から第6学年)のすべての生徒に外国語を学ぶ機会を与えることと、生涯学習を促進するため「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能別に到達度を認証するシステムの導入(2005年にLanguages Ladderとして発表)を主たる内容とし、どちらも2005年にその具体的な構想が発表された。その後、2010年9月を目指して初等教育での外国語教育導入の準備が進められたが、2010年5月の保守党・自由民主党の連立政権発足後、外国語教育を含む前政権の初等教育に関する方針は見直しのため一旦中断され、3年に亘る再検討の結果、2013年9月に発表されたイングランドの新カリキュラムでは2014年9月より公立初等教育機関のKey Stage 2での外国語教育が必修化されることとなった。
 2015年4月、GCE試験(Aレベル)の開発実施機関は日本語を含む学習人口が少ない外国語のAレベル試験問題開発を2017年から行わないと発表した。それに対して、学校教育関係者、コミュニティグループ、政府機関などを巻き込んで反対の声が上がり、英国議会議員へのロビー活動やDfEへ働きかけを行った結果、2016年4月に開発実施機関から作成の継続が発表された。

背景

 パーカー・レポート発表の4年後(1990年)に実施された海外日本語教育機関調査の結果と比較すると、1998年の調査結果では英国における日本語学習数が約4倍にはねあがる(1990年3,562人、1998年14,451人)という大躍進を遂げた。その背景には常に、日本研究者育成の役割と並び、ビジネス及び科学技術分野での日本との関係の緊密化にあたって有利になるという、日本経済の国際的地位があった。
 2017年ブリティシュ・カウンシルがまとめた「Language for the future」において、「英国に必要な言語」として、日本語は第9位になっている。
 対象言語の使用国の経済力が学習者の外国語選択に与える影響は今後とも無視できない。米国経済圏に匹敵する巨大市場であるユーロ圏の出現や、回復の兆しを見せているとはいえ、依然、多くの問題を抱える日本経済の動向、さらには、台頭著しい中国経済の伸張は、これからの英国における日本語教育の将来を予測する上で楽観を許さないものである。

特徴

 外国語教育全般を見渡すと、中等教育段階での外国語科目の衰退が社会問題化しており、とくにフランス語やドイツ語等EU内の「大」言語と目される言語で、GCSEGeneral Certificate of Secondary Education、中等教育修了一般資格試験)の受験者数は年々著しい減少を見せている。日本語について見れば、GCSEの受験者数は2009年までは増加傾向にあり2009年は1,477名が受験したが、2010年以降は減少傾向がみられる。
 2018年度機関調査結果(速報値)によると、英国の日本語学習者数は20,040名で、2015年度調査との比較では、高等教育段階では約20%の増加、その他の教育機関(大学の市民講座、語学学校や、自治体が運営する生涯学習コースなど)に登録している日本語学習者には約38%の増加となっている。一方で、初等教育と中等教育では機関数、教師数、学習者数が揃って減少しており、教育予算の削減やSTEM(科学・技術・工学・数学)科目の重視、GCSE等における日本語の新カリキュラム導入に伴って試験が難化したと捉えられていることが原因として考えられる。

最新動向

 GCSE及びGCE試験(Aレベル)の試験内容、評価方法が改編されることになり、日本語のGCSEは2019年に新試験の実施となったが、同年日本語科目のGCSE受験者数は698名(2018年は1048名)と大幅に減少した。日本語のAレベル新試験は2020年に実施予定だったもののCOVID-19の影響により延期された(但し、大学受験用に夏までに評価が必要な受験生に対しては内部評価を公式評価の代替とした)が、試験内容の改定によって更に難易度が高くなると考える教師が多い。英国では毎年各校の試験結果のランキングが大手メディアから発表されるため、生徒の試験結果が日本語科目の存続を左右するなど、教育関係者の懸念材料ともなっている。
 日本語に先立って、新試験に移行したフランス語、ドイツ語などの外国語教育関係者の間では、外国語科目のGCSE及びGCE試験(Aレベル)試験の内容、難易度、評価方法の不公正さ(例:母語話者の受験が増えているが、外国語として学ぶ生徒と区別されていない)について問題視し、受験者激減の一因として指摘する声が少なくない。外国語を履修する高校生の減少で高等教育機関も影響を受けるため、2019年5月にはオックスフォード大学をはじめ英国の36大学、152名のアカデミックスタッフが声をあげ、資格・試験規制局 (Ofqual:Office of Qualifications and Examinations Regulation)に署名した手紙を送って、この問題を訴えている。 

教育段階別の状況

初等教育

 初等教育では、いくつかの機関が正規授業または課外授業の一環として、日本語の授業の実施を試みている。
 2002年12月18日、教育技能省(現教育省)が、Languages for All:Languages for Lifeと題した言語政策文書をイングランド向けに発表し、国際化が進む21世紀に取り残されぬよう、外国語教育に力を入れ、外国語能力及び異文化理解能力を向上させていくことを宣言した。同文書では、特に初等教育段階での外国語教育を最重視し、「2010年までにKey Stage 2(第3~6学年)のすべての小学生(7~11歳)に外国語を学ぶ機会を与える」と提言した。この政策は、2010年に労働党政権に代わり保守党・自由民主党の連立政権が誕生した際に再検討のため中断したが、2014年9月から外国語教育が必修化されることに決まった。
 2019年にブリティシュ・カウンシルがまとめた調査報告によれば、イングランドでは2014年にナショナルカリキュラムにおいて初等教育段階での外国語が必修化された(対象:「公費維持学校」と呼ばれる公立学校のみ)ものの、教員のスキルアップ研修の参加度が低い、学習時間が確保されていない、教育水準局(Ofsted:Office for Standards in Education, Children’s Services and Skills)の監査対象になりにくい、中等教育機関との連携のシステムがない等、課題が山積している。また、社会経済的状況の厳しい地域の学校と富裕層が通う学校の間では、外国語学習機会という点からも格差が広がっていることが明らかとなった。

中等教育

 教師数の不足を補うため、イギリス人日本語教師の一部は、充分な日本語運用力を習得する機会を得ないまま、教壇に立たなくてはならないことがある。一方、日本人日本語教師の一部は、外国語教授法や教室運営等に関する専門知識がないままクラスを任されているという傾向もある。英国の高等教育機関で日本語のみを専攻として公的教員資格を取得できる唯一の課程がノッティンガム大学(PGCE課程)にあったが、2007年に同大学日本語コースは閉鎖となった。2019年10月現在、フランス語、ドイツ語、スペイン語等の欧州言語と日本語の組み合わせで公的教員資格を取得できる大学は、シェフィールド大学、バース・スパ大学である。これらの大学では、外国語教員としての公的資格取得を目指す現職教師のための特別な認定コースや、教育省による奨学金制度も設けられている。
 加えて、英国の事情(学習者レベル、カリキュラム等)に合った教材の開発、日本語関係試験(GCSE, Aレベル, IB等)の内容の一層の向上も望まれる。そのような中、国際交流基金ロンドン日本文化センターでは、2007年3月、GCSEのトピックシラバスに即して文法項目・構文・語彙・漢字等の導入順を割り振り、それらに対応したテキスト、ドリル、音声ファイルを作成して初級教材「力-Chikara-」と名づけてウェブサイト上で公開した。
 また、2016年には、英国における中等教育段階の日本語教育の中核機関であるダートフォードグラマースクールを「JFにほんごネットワーク(通称:さくらネットワーク)」機関として認定し、同校と連携して、研修会の開催や中等教育機関の教師ネットワーク構築を支援する取り組みを行っている。

高等教育

 高等教育機関における日本語教育については、各機関の置かれている状況が千差万別であり一概に言えない。高等教育における日本語は、日本研究を主専攻とする者の必修科目、日本研究ともうひとつの専門を持つ二重専攻における必修科目、他の分野を専門とする者の選択外国語科目の3つの異なる形態で学ばれており、日本語に限らず、英国全体で外国語主専攻コースの履修者が減少するなか、選択外国語科目の履修者は増える傾向にある。
 英国では教育機関の評価方法に競争原理が導入されて久しいが、これにより英国における日本語教育の歴史で重要な役割を果たした学位コースが財政難により縮小・廃止される事態が起こっている。また、中等教育での既習者と未習者への対応も含めて、高等教育と中等教育との連携も課題として意識されている。
 高等教育に従事する日本語教師の多くは、雇用条件が概して不安定である。日本語教育の質の向上はもとより、英国の高等教育機関における日本語教師の雇用条件の改善のためにも、日本語教育に関する研究実績の積み重ねが極めて重要であるが、その研究環境も整備途上である。1998年9月に設立された英国日本語教育学会(The British Association for Teaching Japanese as a Foreign Language(略称BATJ))の活動は、こうした現状を打破するものとして発足し、研究大会の実施、学会誌の発行、研修会など、その活動の幅を広げている。
 財源の確保が各大学に任されている中で、東アジア学部や日本学関連学位コースが大学のリストラの標的とされ、閉鎖に追い込まれる例が2000年代前半に見られた(以下参照)。

  • School of Modern Languages and Literature, University of Ulster
     2001-2002年度:最後の新入生受け入れ、2004年夏、日本語コース閉鎖
  • School of Modern Languages, Japanese Studies Section, University of Stirling
     2001-2002年度:最後の新入生受け入れ、2005年夏、日本語コース閉鎖
  • Dept of East Asian Studies, University of Durham
     2003-2004年度:最後の新入生受け入れ、2007年夏、東アジア学部(日本、中国、韓国学)閉鎖

 英国の総合大学にとって東アジア学は「財源をもたらさない学問」と見なされやすいという事実も無視できない。これらの措置は英国の他の大学の東アジア学部、日本学関連コースにも大きい懸念を与えることとなった。
 なお、懸念されていた2012年度からの大学授業料値上げは、現在のところ日本語履修者には大きな影響を与えていないようだが、今後も引き続きその影響を注視する必要がある。
 一方、2007-2008年度にはマンチェスター大学で日本語・日本研究(BA)コースが、2011-2012年度にはイースト・アングリア大学で日本語(BA)・日本研究(BA, MA, Phd)コースが開講される等の動きもあった。また、上記のダラム大学では2014-2015年度にSchool of Modern Languages and Cultureの一部として日本研究・日本語コースが再び設置された。

学校教育以外

 英国では生涯教育の考えのもと、成人教育機関においては豊富な選択肢が用意されており、ロンドン大学キングスカレッジ言語センターのように、外国語講座のひとつとして日本語講座を開講している高等教育機関も見られる。国際交流基金ロンドン日本文化センターは、、2013年1月に、JF日本語教育スタンダードに基づく『まるごと 日本のことばと文化』を採用した「入門日本語講座」をロンドン大学SOAS言語センターと共同開設し、2017年まで継続した。

教育制度と外国語教育

教育制度

 イングランド、ウェールズ、北アイルランドでは6-5-2制で、キーステージと呼ばれる4つの教育段階に分かれている。
 公立学校の場合は、Primary School Education(初等教育)が6年間(5~11歳)、Secondary School Education(中等教育)が5年間(11~16歳)である。ただし、イングランドでは、2015年から16〜18 歳の 2 年間,教育又は訓練の継続(パータイムも可)が義務付けられるようになった。5年間の中等教育を終えた後、Further Education College(継続教育)に進む者、Sixth Form College(後期中等教育/大学進学準備課程)に進む者に分けられる。継続教育カレッジは、職業教育を中心に多様なプログラムを提供している。なおSixth Form Collegeに進む場合、前期中等教育を受けた学校が当該課程を有していればそのまま同一の学校で学ぶことが多いが、諸般の事情で別の学校に進む場合もある。
 義務教育は5歳から16歳までの11年間であり、日本より2年長い。

  • 英国では定められた期間、通学すれば卒業資格を授与されるシステムはなく、イングランド、ウェールズ、北アイルランドの場合、義務教育終了時(Key Stage 4、第11学年、16歳)に、中等教育修了一般資格(GCSE:General Certificate of Secondary Education)試験に合格しなければならない。受験する科目数は自由であるが、通常8~11科目程度受験する。大学入学志願者は、義務教育終了後、Sixth Form Collegeと呼ばれる後期中等教育段階の大学進学準備課程に進学して2年間レベル試験の準備をする。Aレベルは、正式には教育一般認定上級資格(General Certificate of Education, Advanced Level(GCE))と呼ばれ、通常4~6科目程度受験する。
  • Further Education Collegeで学ぶ場合、16歳から18歳までそこで教育を受けて大学に進学することもできるし、大学に進学せずに16歳から数年間かけて職業資格取得を目指すこともできる。主な職業資格としては、National Vocational Qualification、Business and Technology Education Council (BTEC)、National DiplomaBETC Higher National Diplomaなどがある。
  • Mature Student枠による、成人の大学入学が盛んである。
  • • スコットランドでは7-6制を適用しており、義務教育終了時である中等教育4年生の終了時にスコットランド共通試験(SCE:Scottish Certificate of Education)を受ける。大学進学希望者は、中等教育5年または6年生終了時に、スコットランド共通試験(Higher grade又はAdvanced Higher grade)を受験する。継続教育カレッジ(16 歳〜)では、職業教育を中心に多様な全国職業資格プログラム(1〜2 年)が用意されている。

教育行政

  

 英国は、イングランド、ウェールズ、スコットランド及び北アイルランドの 4 地域からなる「連合王国」であり、各地域に教育を所管する政府機関が置かれている。イングランドには中央に,教育省(DfE)が置かれ,初等・中等から高等教育、訓練及び教員まで国の教育制度全般を統括している。

Department for Education
(教育省)
教育全般に関する方針を策定する。
(2010年、DCSFDepartment for Children, Schools and Families)がDfEDepartment for Education)に改組された。)
Local Education Authority
(地方教育庁)
教育省の施策を受け、各地方の実情に沿った教育施策を策定し、教育機関に推奨、勧告する。
Standards and Testing AgencySTA
(基準・試験局)
教育省傘下。2012年3月に閉鎖されたQCDAQualification and Curriculum Development Agency)の業務を引き継ぎ、早期基礎段階から初等まで義務教育の評価の開発・実施を担当。
Universities and Colleges Admissions Service
(大学入学部局)
大学進学希望者と大学を仲介する。

言語事情

 公用語は英語。
 一般には英語が広く使われているが、ウェールズでは、英語と共に約25%が日常的にウェールズ語を使用している。スコットランド・ゲール語、アイルランド語、アルスター語も少数ではあるが、それぞれの地方を中心に使われている。移民社会の内部では、コミュニティランゲージとしてポーランド語、ウルドゥー語、パンジャブ語、中国語、アラビア語等、移民の言語も英語と併用されている。

外国語教育

  1988 年「教育改革法」により、全国統一のナショナル・カリキュラムが導入され、7歳、11歳、14歳、16歳の生徒に対し、全国一斉学力試験を行い、その学力試験の結果に基づいて学校番付を作成、番付を4ランクに分けて全国紙で発表されるようになった。ナショナル・カリキュラムは、その後、数度の改定を経て現在に至っている。ナショナル・カリキュラムには、Key StageKey Stage 1:5~7歳、Key Stage 2:7~11歳、Key Stage 3:11~14歳、Key Stage 4:14~16歳)別に科目の履修内容が示されている。旧カリキュラムでは、イングランド、及びウェールズの公立中等学校の生徒は、Key Stage 3(7年生、11歳)から外国語(Modern Foreign Language)を履修しなければならないと定められていたが、2002年の改定でKey Stage 4での外国語学習が必修ではなくなった。一方、イングランドの公立初等学校では2014年9月よりKey Stage 2(7〜11歳)での外国語教育が必修となっている。
 スコットランドでは「言語学習の1+2アプローチ」と呼ばれる政策を掲げており、2020年からの実施を目指している。これによると、初等教育1年生から母語に加えて1つ目の追加言語(additional language)、5年生までに2つ目の学習を開始し、これを中等教育3年次まで継続する。

大学入試での日本語の扱い

 大学進学に必要とされるGCE試験(Aレベル)の科目として日本語を選択することが可能。一方、スコットランドでの資格試験科目に日本語は含まれていない。また、日本語・日本研究専攻では、外国語履修経験があることを考慮する場合が多い。

学習環境

教材

初等教育

 2014年9月からの外国語教育必修化を受けて、日本語教育を導入する機関が増えてきているが、特定の教科書はなく、担当教師の自作教材が使われる場合が多い。国際交流基金ロンドン日本文化センター作成の、Japanese Scheme of Workを利用する機関もある。

中等教育

 コース設定は特定の試験を目指して行われることが多く、教科書の選定もそれに合わせられる。主教材では、オーストラリアで発行された『Obento』シリーズ、またアイルランドで作られた『Nihongo Kantan』、『JAPANESE FOR YOUNG PEOPLE』(講談社USA)、『初級日本語げんき』(ジャパンタイムズ)等が使われているようである。一方、自作の教材を使用する学校も多い。
 副教材は、担当教師やコースによって異なるが、『絵とタスクで学ぶ日本語』(凡人社)、『BASIC KANJI BOOK』(凡人社)、『Hiragana in 48 minutes』、『Katakana in 48 minutes』、『Japanese-Language and People』、『読解20のテーマ』(凡人社)等が使われている。Aレベルコースでは、『どんどん読めるいろいろな話』(武蔵野書院)や吉本ばななの短編小説、映画作品では『千と千尋の神隠し』『ディア・ドクター』『誰も知らない』等が試験委員会から指定されている。

高等教育

 高等教育の日本語主専攻、二重専攻のコースでは、初級レベルの主教材として、『みんなの日本語』(スリーエーネットワーク)、『初級日本語げんき』(前出)等がよく使われている。中・上級レベルでは、市販の副教材に加えて、担当教師の自作の教材や生教材が使われることが多い。選択外国語としての日本語のコースでは、主教材として『JAPANESE FOR BUSY PEOPLE』(講談社USA)、『みんなの日本語』(前出)、『初級日本語げんき』(前出)が使われることが多い。

学校教育以外

 成人教育で日本語が教えられている場合は、『JAPANESE FOR BUSY PEOPLE』(前出)が主教材として使われることが多いが、『まるごと 日本のことばと文化』(三修社)の使用も次第に増えている。

IT・視聴覚機材

初等教育

 学校の授業でコンピューターに触れる機会があるが、日本語と組み合わせている例は多くはない。現場の教師が教授として使うのは、国際交流基金ロンドン日本文化センター作成の初等教育(Key Stage 2)向けJapanese Scheme of Work、Japan 21(現在はJapan Society)と共同開発した「Ready Steady NihonGO!」がダウンロード可能である。

中等教育

 国際交流基金ロンドン日本文化センターがGCSEを背景に開発した中等教育向け日本語教育リソース「力 -Chikara-」は各課にIT教材を含んでおり、ウェブサイトからのダウンロードあるいはCD-ROMで使用することができる。その他、「エリンが挑戦!にほんごできます。」など多くのリソースが使われている。

高等教育

 ほとんどの大学はMoodleなどを利用したVirtual Learning Environment (VLE)を導入しているが、日本語教育の現場での利用の度合いは様々である。

学校教育以外

 機関によって様々であるが、大学の施設が使える機関は、教師の裁量により、導入が行われている。

教師

資格要件

初等教育

 下記【中等教育】を参照。

中等教育

 通常、ノンネイティブ日本語教師が公立校で教える場合は、教員免許(QTS: Qualified Teachers Status)が必須である。教員免許として認められている代表的なものは次のとおり。

  1. 1.PGCEPost Graduate Certificate in Education)取得者
  2. 2.教育学士号(Bachelor of Education)取得者
  3. 3.教師として働きながらのトレーニングプログラム修了者(例えば、Graduate Teacher Programme、Registered Teacher Programmeなど)
  4. ※教員免許を取得するには、これら以外の選択肢も存在している。

 これらの資格を取得していれば、日本語を主専攻で学んだことがなくても日本語の授業を受け持つことが可能となるため、例えば、主専攻はフランス語であり日本語についての知識をほとんど持たない者が、日本語を教授しているような事例もある。
 JETプログラムの派遣帰国者が日本語教師となるケースもある。日本語を正規科目として勉強したことのない教師から日本語の修士号を取得した教師まで、日本語教師のレベルはさまざまである。
 私立校では、公立校のような教師に対する資格制限はなく、教師の採用は各校の判断に委ねられているものの、質の高い教師獲得のために、多くの学校では公立校と同様の教師資格及び教授経験を重視している。また、上記の教員免許(QTS: Qualified Teachers Status)の有無は待遇にも関わってくる。

高等教育

 ノンネイティブ教師、ネイティブ教師のいずれも特定の資格を要求されないが、言語学、日本語学、日本研究等の分野において修士号以上の学位を取得している教師が多い。日本語教授の経歴も重視される。

学校教育以外

 大学が営む成人向け夜間クラスにおいては、各校で採用基準がさまざまだが、労働可能な査証の所持が重要な条件となる。

日本語教師養成機関(プログラム)

 中等教育機関が常勤で日本語教師を雇用することは珍しいため、2019年10月現在、日本語科目のみの正規教員資格を取得できるコースは存在していない。ただし、日本語が含まれるPGCEPost Graduate Certificate in Education)コース(例えば、フランス語及び日本語のPGCEなど)は、シェフィールド大学、バース・スパ大学などで取得することができる。ノッティンガム大学は1992年開設した日本語科目のみのPGCEを中止しているが、日本語が含まれているGraduate Teacher Programmeを提供できる場合もある。
 その他、民間学校に日本語教師養成講座が設けられており、講座終了時に独自の修了証を得ることができる。参加者の多くは在英日本人である。ただしこれらは英国教育省の認定する正規教員免許(QTS)資格コースではない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 日本語教師の総数に対してネイティブ教師が占める割合は、中等教育では6割程度、高等教育では8割程度である。成人教育においては非常にネイティブ教師が多く、9割とも言われる。

初等教育

 日本語のみを教える常勤のポストは極めて少ない。したがって、ネイティブ教師は複数の小学校を掛け持ちして教える場合が多い。ノンネイティブの日本語教師が他科目を教えながら課外活動などとして日本語や日本文化を教育活動に取り入れていることが多い。

中等教育

 日本語のみを教える常勤のポストは極めて少ない。その他のほとんどの常勤ポストは日本語と共に、フランス語やドイツ語等の他の外国語も教えることにより成り立っている。ネイティブ教師の場合はそのほとんどが非常勤ポストである。
 

高等教育

 約5割が常勤のポストに就いているが、いわゆる日本語教育と共に日本学を教えるポストと兼ねている例も少数だが含まれている。

学校教育以外

 成人教育においてはほとんどが非常勤の形態である。

教師研修

現職教師研修プログラム(一覧)

1.BATJ(英国日本語教育学会)、国際交流基金ロンドン日本文化センターの共催研修会
  • 《対象》英国内外の日本語教師  (2019年から、会場参加に加えオンライン参加も受け入れる研修形態が採用され、英国各地、欧州各地からオンライン参加する教師も増えている)《内容》国際交流基金ロンドン日本文化センターのチーフアドバイザーとBATJ役員が共同で内容設計にあたる。年少者から成人まで対象者や校種に関わらず汎用性の高い実践的なテーマを取り上げている。
        
2.BATJ(英国日本語教育学会)年次大会
  • 《対象》主としてBATJ会員
    《内容》講演やワークショップ、研究発表、実践・調査報告、ポスター発表、学会員によるプロジェクトの成果報告などが行われる充実した二日間のプログラム。日本語教育を実施する英国の高等教育機関を会場に、毎年9月に行われている。(国際交流基金助成)
     
3.「JFにほんごネットワーク」(通称:さくらネットワーク)機関主催による研修会
  • 2020年11月現在、英国の「JFにほんごネットワーク」(通称:さくらネットワーク)機関には、BATJ(英国日本語教育学会)、イーストアングリア大学、エジンバラ大学、カーディフ大学、ニューカッスル大学、ダートフォードグラマースクールがある。それぞれの機関が、幅広くコミュニティのニーズに合った研修会を独自に企画し実施している。(国際交流基金助成)
      
4.Japan Conference for Schools
  • 《対象》主に初等・中等教育機関の日本語教師
    《内容》日本語教授法、授業実践報告等の1日間のワークショップ。The Japan Society in the UKと国際交流基金ロンドン日本文化センターとの共催事業。2018年まで隔年で実施していたが、2020年11月現在休止中。
    国際交流基金ロンドン日本文化センター主催
     
5.ノンネイティブ教員のためのオンライン入門日本語コース
  • 《対象》日本語未修者の英国学校教員
    《内容》「JFにほんごeラーニング みなと」を利用した、自習とビデオ授業からなる。2017年から2018年にかけて「まるごとA1-1教師サポート付きコース」が試験的に実施された。
     
6.日本語教員のための教育実習と授業見学を受け入れるパイロット講座の運営
  • 《対象》英国学校教員
    《内容》2015年から2019年までJF日本語教育スタンダードに基づく『まるごと 日本のことばと文化』を主教材とする日本語講座が運営されていた。本パイロット講座は、『まるごと』を活用した教育実践による知見の共有化を目的とし、教師の見学を随時積極的に受け入れたほか、教育実習の機会を提供した。

7.文化を取り入れた日本語教育セミナー、ワークショップ
  • 《対象》英国及び欧州の現職日本語教師
    《内容》国際交流基金ロンドン日本文化センター企画。文化を取り入れた日本語授業のアイデアを提供するもの。2019年はセンターにて「アート×アクティブラーニング」をテーマに対面式のワークショップを実施、2020年は「落語」をテーマに外部講師を招きオンラインのセミナーを開催した。

8.教師のためのICT活用講座(オンラインコース)
  • 《対象》英国及び欧州の現職日本語教師
    《内容》教師のICTリテラシー向上を目的とするオンライン講座。2020年11月開講。
     
9.ALLAssociation for Language Learning主催
  • 年次大会
    《対象》主に中等教育機関で外国語を教える教師
    《内容》年次大会の一環として2日間の会期中に外国語教育に対する学術的もしくは実践的なセミナーが開催される。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 1998年9月、1999年3月、英国で相次いで日本語教師ネットワークが設立された。前者は、高等教育機関の日本語教師を中心とした英国日本語教育学会(The British Association for Teaching Japanese as a Foreign LanguageBATJ)。後者は、Association for Language LearningALL内に中等教育機関の日本語教師のために設立された日本語部会(Japanese Language CommitteeJLC)である。
 なお、1988年の設立以来、英国唯一の日本語教育関係者ネットワークとして大きな役割を果たしてきた日本語協会(Japanese Language AssociationJLA)は、中心人物の引退、財政基盤の弱体化等の理由で、1998年11月に解散した。
 英国日本研究協会(British Association for Japanese StudiesBAJS)は、1974年、英国における日本研究発展のために設立された。1975年以来、年次大会が開かれ、広く非会員にも研究発表の場が開かれている。機関誌"Japan Forum"が年4回発行されている。

1.JLC(中等教育機関の日本語教師のための日本語部会)の活動

 JLCは、日本語教育の重要性と可能性に対する中等教育関係者の認識を高めることと、日本語試験の内容改善を試験委員会に働きかけることを最優先課題として活発な活動を展開してきた。
 会設立以来の主要な活動は中等教育段階のスピーチコンテスト 「Nihongo Cup」の開催である。(国際交流基金ロンドン日本文化センターとの共催)

2.BATJ(英国日本語教育学会)の活動

 BATJは、高等教育機関の日本語教師を中心に「英国における日本語教育の振興を図る」ことを目的とし、研究・研修、また会員相互の啓発・支援活動を通して、日本語教育を研究分野のひとつとして位置づけることに努力し、日本語教育の水準の維持・向上に貢献する」ことを主要目的として設立された。
 学会としての主な活動は次のとおり。

  • 会員の研究発表、意見交換の場を提供するための活動:年次大会、研究紀要の出版
  • 教授技術を磨くための活動:講演会、ワークショップ(年5回程度)、勉強会(年数回)の企画
  • 英国の高等教育の日本語教育に関する情報収集と提供のための活動:会報の発行(年2回)、会員のメーリングリストの運営
  • 大学生のための日本語スピーチコンテストの開催(国際交流基金ロンドン日本文化センターとの共催)

最新動向

 BATJ(英国日本語教育学会)は1998年9月の設立以来、講演会、ワークショップ、勉強会等を継続的に実施しており、順調に活動が続けられている。2018年より会員の協働、連携を促し、英国における日本語教育の質的向上と活性化を図るため、日本語教育に関する研究、調査、リソース制作、実践研究などのプロジェクトの募集を行った。2020年11月現在会員による複数のプロジェクトが進行中である。(国際交流基金助成)
活動詳細はhttp://www.batj.org.uk/を参照。
 コロナ禍の⼤学連携の新しい動きとしては、「J-YAP Inter-University Support Network Programme」がある。2020 年 4 ⽉、英国の複数の⼤学の⽇本留学コーディネーターを兼任する⽇本語教員の有志グループが⽇本留学が不可能となった学⽣に学習継続の場を提供すべく、⼤学連携プログラムとして、オンライン・プラットフォームを⽴ち上げることを計画した。この連携プログラムは英国日本語教育学会のプロジェクトとして承認され、10月には英国内で⽇本留学プログラムを有する全⼤学を対象に活動を展開している。専用サイト:https://japaneseyearabroad.wixsite.com/jyap-iusp

日本語教師等派遣情報

国際交流基金からの派遣(2020年10月現在)

日本語上級専門家

 国際交流基金ロンドン日本文化センター 1名

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし。

その他からの派遣

 民間日本語学校(日本語教師養成機関)から関係機関へ派遣

シラバス・ガイドライン

初等教育

 下記【中等教育】を参照。

中等教育

 英国では長い間学校における教育内容の基準が定められておらず、各学校の自主性に任されてきた。
 1988年に初めて統一的な教育内容の基準としてナショナル・カリキュラムが政府により定められた。現行版は主として、2007年発表のものであるが、カリキュラム改革の結果、2014年9月から新カリキュラムが適用されている。ただし、新カリキュラムはイングランドの公立学校のみを対象としている。具体的なシラバスは、ナショナル・カリキュラムに基づきそれぞれの学校で設定される。私立学校はナショナル・カリキュラムを遵守する必要はなく、独自のカリキュラム及びシラバスを設定できる。公立学校、私立学校共にシラバス作成においては、それぞれの学校が生徒に受験させる試験(GCSE等)のシラバスから強い影響を受けている。
 新ナショナル・カリキュラムは5歳から16歳(初等・中等教育段階)の生徒が学習する全ての教科に適用される。日本語を含む外国語の学習はKey Stage 2(第3学年から第6学年)から始まる。新カリキュラムでは到達目標及び学習プログラムについて、Key Stageごとの概要しか書かれておらず、学年ごとに細かく規定されていた前カリキュラムと比較して自由度が増している。北アイルランド、スコットランドにおいても公立学校を対象として、それぞれ独自のカリキュラムが設定されており、スコットランド省、北アイルランド省の教育担当部門がその内容を管轄している。

高等教育

 シラバス及びカリキュラムは機関独自に設定されている。多くの大学では、コースコーディネーターがシラバスをまとめている。

学校教育以外

 シラバス及びカリキュラムは機関独自に設定されている。シラバスは受験する日本語試験を考慮し、使用する教科書に沿って作成する傾向にある。

評価・試験

 英国では、初等、中等教育全体を通して、学校の履修成績によって進級や留年等を決定するという制度はとられていない。また、初等教育から中等教育への進学にあたって一部のグラマースクールを除けば、生徒の能力に基づく選抜は行われていない。
 生徒の到達度を評価し、教育水準を維持するための措置として、教育省が認可した複数の試験機関が実施する外部試験がある。代表的な試験として、中等教育修了一般資格(General Certificate of Secondary Education、以下、「GCSE」)と大学入学資格(GCE)が挙げられる。GCEには、2019年まで上級試験(Aレベル)と準上級(ASレベル)試験の別があったが、2019年の試験を最後に、AS試験は廃止となっている。これらの試験は、いずれも各生徒が受験した科目についてのいわば「成績証明書」の性格を持つもので、高等教育への進学や就職にあたって重要な意味を持っている。
 私立や公立進学校の一部ではInternational Baccalaureate (IB)を採用している。IB認定校になるための費用がかかるため、資金的に余裕がある学校でのみ導入されており、日本語教育を行っている中等教育機関では1割に満たない。教科担当教師はIB Exam Boardから定期的なトレーニングを受ける。

評価・試験の種類

1.GCSEGeneral Certificate of Secondary Education

《対象》
 中等教育の学習者、成人学習者
《概要》
 英国で最も知られている試験。義務教育修了試験に値するため、イングランドの学校のほとんどが採用している。通常は、Key Stage 4の終わり(16歳)に8~11科目を選択して受験する。学習到達度は9段階で評価される。日本語GCSE試験を作成している機関は、Pearson EDEXCELのみ。2019年からFoundationHigherの2レベルが設けられた。年1回(毎年6月)実施。

2.Aレベル:GCEGeneral Certificate of Education

《対象》
 大学進学希望者
《概要》
 2016年から2017年にかけて準上級(ASレベル)コースの廃止が決定され、2020年の新試験からAレベル試験に一本化されることになった。年1回(毎年6月)実施。通常4~6科目を受験、成績が良かった3~4科目に絞って受験大学へ提出する。大学は入学条件をAレベル3科目の試験結果で「A・A・B」などと定めている場合が多い。

3.International BaccalaureateIB

 国際的な大学受験資格で、アメリカの大学など英国以外の大学進学を目指すにはIBの方が有利と考えられる場合がある。Japanese Aという試験が母語話者向けにある。非母語話者向けの試験はJapanese B。対象学年(年齢)により、Year 10-11(15-16才)「Ab initio」、Year 12-13(16-17才)「Standard Level(SL)」、Year 12-13(17-18才)Higher Level (HL)という3つの段階がある。年2回(毎年5月と11月)実施。

日本語教育略史

1903年 英国最初の日本語学校(シャンド日本語学校)がロンドンに開校。
1946年 ロンドン大学SOASにおいて日本研究講座が開設、高等教育レベルにおける日本語教育開始。
1970年 カウンティーアッパースクール(公立中等教育機関)において、英国の中等教育では初めての日本語教育開始。
1960~1970年代 成人教育機関(語学学校等)において日本語を教える機関が現れはじめる。
1986年 アジア・アフリカの言語、地域研究促進のためピーター・パーカー卿が英国大学助成委員会の委託を受けて作成した調査報告書「未来に向けてーアジア・アフリカ言語及び地域研究に対する英国外交・通商上の要請に関する一考察」(通称パーカー・レポート)がまとめられる。このなかで日本研究及び日本語教育は英国の外交・通商上、大変重要であり、日本語を学んだ人材に対する需要は今後増加するであろうことから、これら分野の研究・教育の場を拡大するよう勧告。
1988年 イギリス通商産業省(DTIOpportunity Japanキャンペーン実施。英日間の通商促進を最終目的として、高等教育機関での日本語、日本文化関係プログラムへの資金拠出を決定。
Japanese Language Association(通称、JLA)設立。
ナショナル・カリキュラム制定。日本語が選択できる19の外国語の1つとして指定される。
1980年代末から1990年代初頭にかけ、上記パーカー・レポートを受けた各種助成制度の拡充及び日本の景気拡大による日本企業の対英国進出の増加等により、大学及び中等教育機関において日本研究講座、日本語授業を開始するものが急増。
1993年 ノッティンガム大学において、英国の公立中等教育機関教員資格が得られる日本語教師養成講座開設。
1995年 Language College制度が開始。認定校の7割程度が教育技能省の財政的支援を得て日本語教育を導入。
1990年代半ば 高等教育機関に対する政府助成金の大幅な削減により、いくつかの大学において日本研究・日本語講座が縮小または廃止された。中等教育においては、資金難により日本語授業を継続できなくなる学校が見られる一方、新たに日本語教育を開始する学校が相次ぐ。
1997年 国際交流基金ロンドン日本語センター開設。
1998年 Japanese Language Association(通称、JLA)解散。
英国日本語教育学会(BATJ)設立。
1999年 英国最大の外国語教育者団体ALL内に日本語部会(JLC)設立。
2000年 Nuffield Foundationが英国における外国語教育の抜本的改革の必要性を説く調査報告書"Languages:The next generation"を発行し、これに基づき政府への提言を行った。
2002年 教育技能省(DfES: Department for Education and Skills)が、言語政策‘Languages for All : Languages for Life’を発表。
2005年 教育技能省が、既存の資格と言語能力の位置付けを明確にするための"Language Ladder"を発表。
教育技能省が、初等教育の外国語導入のための"Key Stage 2 Framework for languages" を発表。
2007年 教育技能省が中等教育の外国語学習促進のための提言を含む"Language Review"を発表。ノッティンガム大学で日本語単独で教員資格を取得できる課程(PGCE)が閉鎖。
2010年 政権交代により教育についても見直しがされる。
Language College制度が廃止となる。教育技能省の制度的財政的支援を失い、日本語を正規科目として提供する中等教育機関が減少。
2013年 教育省(DfE: Department for Education)がKey Stage1からKey Stage4までの全教科の新カリキュラム(National curriculum)を発表。
2014年 イングランドの公立初等学校(KS2)から外国語が必修となる。
2017年-2018年 日本語のGCSEとA レベル試験コースの新シラバスが策定される。
2019年 シラバス改編を受けて、日本語のGCSE 新試験が初めて実施される。
2020年 ASとA2の試験を統合したAレベル新試験が実施される予定だったが、COVID-19の影響により6月から11月に延期。大学受験用に8月に評価が必要な受験生は内部評価で代替。
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