米国若手日本語教員(J-LEAP) 12期生 総合報告書
テキサス州で過ごした2年間
ザ・ウッドランズ・カレッジ・パーク・ハイ・スクール
前川 穂香
「やってみたい」をかたちにした2年目
1年目と比べ、2年目はさまざまな人と一緒に授業をする機会が増えました。特に印象に残っているのは、学内の家庭科の先生とのコラボレーションです。家庭科の先生とともに、3日間の授業を一からプランニングしました。また、同時期に姉妹プログラムのJOI(日米草の根交流コーディネーター)でダラスの日米協会に派遣されていた森安さんにも声をかけ、プログラム同士での協働も実現しました。家庭科と日本語クラスの生徒が合同で授業を行ったことで、生徒同士のつながりが広がっただけでなく、日本語を履修していない生徒にも日本に興味を持ってもらうきかっけを作ることができました。また、リードティーチャー(以下、LT)との関係が深まったこともあり、2年目はLTとしての役割を担う機会も増えました。クラスをリードする経験を重ねるうちに、最初の頃に感じていた「教室の前に立つと緊張する」「完璧にこなさなければならない」というプレッシャーが次第に和らぎ、授業そのものを純粋に楽しめるようになりました。その結果、生徒との距離もさらに縮まり、より良い関係を築くことができました。これらの経験を通して、楽しく学びのある授業を作るための柔軟な発想力や、「やってみたい」という思いを言葉にし、行動に移す積極性を身につけることができました。
体験を通して広がる日本文化の輪
昨年の秋、総領事館の方とのご縁から、ヒューストンで開催された「Houston Japan Festival」で浴衣の着付けボランティアを行いました。このイベントには4万人以上が来場し、領事館のブースにも多くの方が足を運びました。さまざまな国籍や年代の方が浴衣に興味を示し、着付けの合間に交わした会話から、日本のどこに魅力を感じ、何に関心を持っているのかを直接知ることができました。文化を伝えるだけでなく、対話を通じて日本のことを新たな視点から学べる、非常に貴重な機会となりました。また、今年度もライス大学の日本語の授業に参加し、日本文化をテーマにした授業を担当させていただきました。学生の約3分の1が日本への短期留学を予定していたことから、「現地での生活に役立つテーマを扱ってほしい」という要望がありました。そこで、日本のゴミ分別やエコバックの利用、風呂敷の活用方法について紹介しました。授業の後半には実際に風呂敷を使ってエコバックを作るアクティビティも行い、どの学生も笑顔で積極的に取り組んでくれました。これらの活動を通して、ただ日本語を学ぶだけでなく、体験を通じて文化を理解することこそが、学びを深め、心に残るものにすると改めて実感しました。
教室を越えて、日本語でつながる
日本語教育の発展の維持という観点からこれまでの活動を振り返ると、LTと共にTexas Foreign Language Association(TFLA)に登壇したことが印象に残っています。LTがテキサス州日本語教師会で会長を務めていたことや、教師会のニュースレターで私の活動を取り上げていただいたことがきっかけとなり、登壇の機会を得ました。発表では、J-LEAPの活動概要や、カレッジパーク高校における日本語プログラムの取り組みについて紹介しました。テキサス州内での学会ではありましたが、プログラム内容だけでなく、日本語教師不足が指摘される米国内において、若手日本語教師の存在を広く知っていただく良い機会にもなりました。また、学内では他教科の先生方と協力し、多くの生徒に日本語や日本文化を紹介する機会を作ることができました。授業後には日本語を履修していない生徒が教室を訪ねてきたり、日本語クラブに参加する姿も見られました。こうした教科の枠を越えたつながりが生まれたことは非常に嬉しく、日々の活動への大きな励み、やりがいとなりました。同時に、日本語プログラムに少しでも貢献できたのではないかと感じています。
挑戦を楽しむ姿勢を大切に
J-LEAPの活動を通して、かけがえのない貴重な体験を得られました。もちろん、新しい環境での生活は楽しいことばかりではなく、時にはつまずき、悩むこともありました。日々の業務では、思うように授業ができず落ち込むことや、想定外の事態に戸惑ってしまうことも度々ありました。ですが、周囲にはいつも支えてくださる方々がいて、何より「生徒の笑顔」が日々のやりがいとなり、常に努力をし続けたいと思う大きな励みになっていました。できることから一つずつ取り組む中で、少しずつ活動の幅が広がり、生徒との距離も縮まっていきました。気づけば、不安を抱えながら授業をしていた以前の自分が、授業そのものを楽しめるようになっていました。また、学外でもアメリカの文化にたくさん触れ、美しい景色に出会い、さまざまな人との交流を通して、視野が広がりました。こうした経験の積み重ねが、教師としてだけでなく、人としても大きく成長するきっかけになったと感じています。これから派遣される方たちには何事も前向きに捉え、新しい経験を通して、さまざまな学びを得ていただきたいです。私は今後、類似プログラムの運営アシスタントとして、新たな一歩を踏み出します。J-LEAPで培った柔軟性や積極性、そして挑戦を楽しむ姿勢を大切にしながら、これからも国際交流や日米のつながりに貢献していきたいと考えています。