アイオワでの2年間

トマス・ジェファーソン・ハイ・スクール
永井 宏美

日本語クラスでの活動

クラス内での主な業務は、文化紹介、リードティーチャーの授業補助(スピーキング・リスニングの担当、教材・テスト作成、提出物・テストの添削、学生のサポート)とAP試験対策でした。
年中行事や文化の時間を毎月2・3回設けてもらうことができたので、伝統文化からポップカルチャーまで幅広く紹介することができました。派遣先には授業以外で日本文化に触れられる機会はほぼないので、いつも学生が行事や文化に関係するものを試食できたり、アクティビティやゲームで体験したりできることを意識して授業を計画しました。任期後半はあらかじめキーワードを伝え、調べた結果をクラス全体でまとめながら文化を紹介する方法を取り入れることもありました。クイズ形式などで楽しく学ぶ方法もひとつではあると思いますが、自国と比較・対照することで背景などにも関心が芽生え、より理解が深まるように感じました。
会話モデルでは、より自然な日本語を目指し、相槌やボディランゲージ、男性・女性言葉なども取り入れました。また、紙芝居や絵本の読み聞かせをしたり、漫画の吹き出しを使って、ディクテーションをしたりしました。ひとつひとつの言葉をきっちり理解するのではなく、場面や表情、アクションなど音以外の情報も加えて、全体で日本語を理解する能力がついたと思います。 また、APの授業では、授業プランから指導まで一人で担当し、今後の基礎となる教材やアイディアが残せたと思います。

クラス外の活動

日本語クラブを立ち上げ、定期的に開催することが、私の2年間の目標のひとつでもありました。市内には本物の日本食が味わえるお店がないので、日本語クラブでは、主に日本の食べ物を紹介しました。代用品を探したり作ったりと材料を集めるのに苦労しましたが、回を増すごとに参加者が増えて、日本語クラス外の学生や先生にも食べてもらうことができました。
日本語クラブの活動を通じ日本語クラス外の学生からも日本文化に興味を持ってもらえたようで、2017年度の受入機関の高校のマーチングバンドのテーマは「侍」に決まったそうです。残念ながら直接お手伝いすることはできませんが、学生の関心が目に見えるかたちで残ったことをとても嬉しく思っています。
また、受入機関外の活動として、近隣の中学校で日本文化について出張授業を行いました。日本文化を紹介した後、折り紙やけん玉、あやとりで一緒に遊びました。初めて日本の伝統的な遊びに触れた学生も多く、楽しそうに遊んでいる姿がとても印象的でした。出張授業がきっかけとなり数年後の日本語履修者が少しでも増えることを期待しています。

小さな文化交流

派遣されたばかりの頃は日本についての認知や関心が低いことに驚くばかりでした。しかし、日本を知る機会が圧倒的に少ないだけだということに気づき、機会さえあれば興味を示してくれる人がたくさんいることが分かりました。
業務以外で日米交流のイベントに携わることはできませんでしたが、友達や同僚の先生のパーティーに招待してもらったり、アメリカらしいイベント(フットボール観戦、独立記念日、感謝祭など)を通して、派遣先の方と交流することができました。ポットラックパーティーの際には日本食を持参するようにしていました。しかし、アイオワには日本のような多様な食文化がなく食事に対し保守的な傾向にあるので、食べるのを躊躇していることもありましたが、アメリカとは異なる食文化にだんだんと興味を示し、楽しんでくれる人も増えました。日本食をきっかけに文化についての話題は多岐に渡りましたが、違いが多い日本とアメリカの文化のなかに共通点を見つけると話は盛り上がりました。遠い国のイメージだった日本が少しずつアイオワの方々に近づいているように感じられ、とても嬉しかったです。

任期を終えて

日本語を指導する能力よりも人間力が試された2年間だったと思います。失敗したからこそ学んだこと、気がついたこともたくさんありました。自分の常識と比較・対照し、異なるものを排除するのではなく、違いを認め、受け入れること。そして、それを楽しめることが、異文化でうまく生活していくには欠かせないと思います。これは教育現場でも同じで、学生の違いや予定外のハプニングも、それを受け入れて場面によって柔軟に対応できることが求められます。
これから海外の教育機関に派遣される若手日本語教員の方には、自分を通して日本という国を見られていることを忘れずに、積極的に活動していただきたいと思います。派遣先の日本語教育の規模によっては、目に見える結果や成果に結びつかない活動を続けることもありますが、前向きに自分なりの歩みを続けることが大切です。そして、ひとりでも多く日本のファンを増やしてもらえることを期待しています。

  • 派遣先での写真その1
  • 派遣先での写真その2
What We Do事業内容を知る