2年間を終えて
ダウニングタウン・イースト・ハイ・スクール
西川陽子
日本語クラスで
初年度はクラス編成の都合上、リードティーチャー(以下LT)とチームティーチングをすることはあまりありませんでしたが、Japanese2に関するほぼ全てを任されたため、授業計画からアクティビティーまで自分で考え、研修やACTFLで得た新しいアイデアやツールなども積極的に取り入れることができ、とても勉強になりました。生徒も新しい試みに楽しんで取り組み、より日本語や日本文化に興味を持つようになった生徒もいました。そのような生徒たちが友達に日本語クラスを宣伝してくれたこともあり、2年目の日本語クラスの学生数増加にもつながったと思います。2016年秋からは新たにJapanese3が開設されることが決まり、日本語プログラム拡大に貢献できたことを嬉しく思っています。
2年目はLTの授業にアシスタントとして入りましたが、ひらがなと文化はアシスタントティーチャー(以下AT)がプランや教材を作り、授業でもリードしました。普段は授業外の事務補佐に徹することが多く、Global Classmatesという日本の高校との交流プログラムで相手校の先生との連絡やスケジュール管理を担当したり、評価の基準となる出席状況や点数、ノートチェック、スケジュールなどを表にまとめてLTに提出したりしました。授業内では主に机間巡視を行い、冷静に生徒を見る時間が増えたため30人近いクラスでも生徒一人一人をよく知ることができました。生徒の変化にもいち早く気づきLTに報告したり、生徒たちのミスが多い箇所や理解が浅い点をフォローしたりしました。また、授業に遅れがちな生徒についてサポートしたり、クラスにあまり溶け込めない生徒の話し相手になったりすることもありました。家庭環境が複雑な生徒や特別教育の生徒が多い中で一人一人にきちんと向き合い対応するよう心掛け、日本語教師としてよりも、どちらかというと中等教育の教師として非常に貴重な良い経験が積め、自分にとって新たな分野で成長できたと感じています。
日本語クラス外で
受入機関の2つの高校で放課後の日本クラブに参加しました。どちらのクラブも日本語クラス以外の生徒も参加しており、日本のゲームやアニメなどを中心に活動していました。ATは生徒たちの料理やクラフトを手伝ったり、日本のゲームを教えたりしました。
年に数回、他の外国語クラスと共同でそれぞれの言語でチームを作りゲームやスポーツ大会を行いました。また、マルチカルチュラルナイトという、夜に学校で各言語のブースや店を出し一般に公開するイベントにも生徒とともに参加し、どら焼きやクラフトを作って売りました。
日本語クラスの存在をより多く知ってもらうために、校内の廊下に季節のイベントで生徒たちが作ったクラフト作品を飾ったり、個人的に校内イベントに参加して日本語クラス以外の生徒にも認知してもらえるようにしたりしました。
受け入れ学区内の小学校で日本文化を教える機会が予定されていましたが、学区側の都合でキャンセルになり、学校外で日本語や日本文化について教えるような機会はほぼなかったため、個人レベルで地元の人々と交流し日本食を作ったり、日本語クラスがない学区外の高校に通っている学生の日本語の自主学習の手伝いをしたりしました。
異文化交流
初年度に参加したACTFLで、Global Classmatesという日米の高校の生徒が交流するプログラムを知り、2年目に申し込んで参加することができました。このプログラムでは毎週オンラインで生徒同士が交流することや、先生同士も密に連絡を取ることが求められ、多忙なLTに代わりその運営を行いました。多くの生徒にとって初めて個人として日本人と交流する機会であり、日本の生徒さんの名前を覚えたり自分の好きなことについて書いたりしたことは、新鮮な経験だったようです。特にオンラインだけではなく実際にプレゼントを贈りあったことは、個人と個人の交流として強く印象に残り日本をより身近に感じたようで、小さな交流ではありますが、日米双方の高校生にとって意味のあるものだったと思っています。
また、AT自身、日本人として、なるべく生徒に声をかけ、楽しく接するよう心がけました。
アメリカと一口に言っても州や地域によってびっくりするくらい違います。小さな日本ですら地方によって異なる習慣などがテレビで話題になるくらいですから、当然のことかも知れません。国による違い、地域による違い、家庭による違い、個人による違い。最終的にはみんな違うのですが、その違う相手を尊重し理解しようとすることが大切なのだということを、私の個人的な意見ではありますが、最後に生徒たちに伝えてきました。生徒たちが今後日本や様々な自分と異なる文化と接したときに、少しでも思い出してくれればと思います。
貴重な経験
派遣先やパートナーとなる先生によって、できることは全く異なります。派遣先によっては研修などから思い描いていたものとは全く異なり、自分がなぜ派遣されたのかわからなくなってしまうこともあるかもしれません。でもそんな中でも、必ず学べることはあるので、自分の人生にとって何かしら役に立つであろう経験を見つけて、頑張って欲しいと思います。特殊な環境で辛いことも多くあると思いますが、その分得られる経験は貴重なものです。
私はこの2年間で、仕事のパートナーと協力して一緒に働くということについて多くを経験し学びました。また、多感な年齢の学生たちと向き合うことや褒め方など中等教育ならではの学びも多く、アメリカの教育と日本の教育の違いを日々目の当たりにし、双方の良い点悪い点などにも思いを巡らせ、良い教育とは何かを考えるようになりました。日本語教育のみにとどまらず、教育というものにより興味とやりがいを感じるようになりました。今後もこの貴重な経験をもとに、学習者一人一人と向き合って教育に携わっていきたいと思っています。