J-LEAPとしてのシアトルでの活動報告

ローズベルト・ハイ・スクール
池谷 日都美

ワシントン州と日本、日本語

派遣先であるワシントン州はアメリカ北西部に位置し、面積は日本の1/2程です。ワシントン州はEvergreen Stateという愛称がつけられていて、その名とおり、1年中緑が絶えることはありません。最大都市はシアトル市で、シアトルを中心とした州の西側は温暖な気候です。ワシントン州全体の人口はおよそ700万人で、シアトルは約65万人です。アジア系は8%弱で、全米標準と比べると高くなっています。ワシントン州にはマイクロソフト、ボーイング、アマゾン、コストコなど数多くの有名企業の本社があり、また農業も盛んで、ワシントン州のりんご、チェリーなどは特に有名です。

ワシントン州は日本とのつながりも深く、日系人の数は全米第3位、任天堂の米国本社はレドモンド市にありますし、日本はワシントン州にとって重要な輸出相手国でもあります。

ワシントン州の日本語プログラムは、小学校から大学まで、多くの学校で開講されています。

また、ワシントン州日本語教師会、兵庫県ワシントン州事務所や、ワシントン州日本文化会館もあり、それぞれが主催で日本文化などに関連するイベントも開催されます。そのため、ワシントン州は他州と比べて日本語を学習する動機が得られ易い環境であると思います。

ATとして

受入機関であるRoosevelt High School(ローズベルト高校)は、教師数は90人前後、生徒数は約1,700人の高校です。大学など高等教育機関への進学率が高く、また、ジャズバンドや演劇の評判も高い学校です。ローズベルト高校には5つの外国語があります。内訳は、スペイン語、フランス語、ラテン語、アメリカ手話、そして日本語です。日本語はレベル1、2、3、AP(Advanced Placement)があり、APでは試験に向けた勉強を中心に行います。2014-2015年度は各レベル1クラスずつ、各クラス30名前後が日本語を履修しました。

アシスタントティーチャー(以下、AT)として、リードティーチャー(以下、LT)と共同して教案作成や教材作成、日々の生徒への学習サポートを主に行いました。また、LTとパートを分担し、授業を行いました。1年目に担当した主な内容は以下の通りです。

  1. (1) 文化紹介
    月1回または2回、文化紹介の時間を担当しました。時には他のJ-LEAPメンバーと共に各学校へ授業をしに行きました。
  2. (2) 新出単語インプット
    新出単語インプットの時間は週3~4日、授業の始めの10分間程度行いました。スライドで絵を提示し、生徒が単語を答えるというのが基本でしたが、グループ分けをしてゲーム形式にして行なったりもしました。
  3. (3) ことわざ紹介
    日本語2と3のクラスでことわざの授業をしました。毎回10分程度、意味だけでなく例文も提示し使い方を教えました。

学校外での活動

受入機関での日本語クラス以外では、近隣中学訪問、日本語や日本文化関連のイベントでの活動を行いました。

中学校訪問は、ローズベルト高校の近隣の中学校で出張授業および日本語授業の広報を行いました。出張授業では、高校生が授業で作成した日本紹介のスライドや創作ストーリーを使って、高校生の日本語や授業内容を知ってもらえるような授業をしました。広報は、スライドで日本語授業の紹介をすると共に、高校生のコメントを載せた、授業風景がわかるようなチラシを作り、配布しました。中学生は積極的に質問をしたりと、高校での日本語の授業に興味を持ってくれたようでした。

イベント関連では、イマージョンキャンプにスタッフとして参加しました。イマージョンキャンプとは、日本語だけを使用し日本文化を体験する日帰りのイベントで、中学生対象と高校生対象の2回行いました。各文化体験クラスの準備、体験中のサポートだけでなく、日本語をできる限り使うように話しかけたりと、参加者に「楽しかった」、「日本語をもっと勉強したい」と思ってもらえるように活動しました。

他にも、在シアトル日本国総領事館から依頼を受け、JET参加者へのオリエンテーションでの日本語講座も担当しました。私たちと同じようにこれから海外で外国語授業のアシスタントを行うJET参加者と交流できたこと、そして彼らに少しでも協力できたことが嬉しく、自分もさらに頑張ろうと思える貴重な経験でした。

What I am to be, I am now becoming

私にとってこの1年は、日本語教師としても1年目の年であり、そのため目標はできる限り多くのことを学び吸収することでした。ワシントン州に派遣され、LTはじめ、ワシントン州の多くの日本語教師の方々とお会いできたこと、またワークショップやWATJ(Washington Association of Teachers of Japanese)のボランティアなどを通して先生方と意見交換ができたことで、たくさんのことを学び考えることができました。また他のJ-LEAPメンバーも同州にいたことで、意見交換やお互いの学校訪問などもできました。このようにLT以外の先生の授業を見たり、WATJなどで意見を聞いたりすることでいろいろなアイデアを得て受入機関での授業に生かすことができ、非常に貴重な経験ができたと感じています。お会いした日本語教師の方々は日々日本語プログラムの発展のために努力しており、いかにして生徒が日本語を楽しみながら、かつ学習を継続してもらえるかを考え、授業に取り入れています。私も生徒に興味を持ってもらえる授業作りをすることをこれからも目標にしていきます。

1年を通して常に考えていたことは、日本語のネイティブスピーカーとして、アメリカの高校生のためにできることは何であるか、でした。しかし、うまく具体化できず失敗した授業もありました。そこで2年目は1年目の経験をふまえ、生徒へのインプットをできる限りし、生徒のアウトプットレベルも引き上げられるような継続的な授業内容を考え取り組みたいと考えています。

What I am to be, I am now becoming” は、ローズベルト高校のモットーです。日本語を学ぶ生徒と共に、私もさらに成長できるよう、2年目も常に学ぶ姿勢を忘れずさまざまなことに挑戦したいと思います。

  • 派遣先での写真その1
  • 派遣先での写真その2
  • 派遣先での写真その3
What We Do事業内容を知る