世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)ジャカルタ日本文化センターの日本語教育支援(2021)

ジャカルタ日本文化センター
EPA担当:大田美紀、小川靖子、平田佑和、竹田恒太
中等教育担当:今井智絵
NP事業担当:古閑紘子
特定技能担当:手島利恵
高等教育・講座担当:森田 衛

ジャカルタ日本文化センター(以下、JFJA)では、日本語教師支援、JF にほんごeラーニング「みなと」講座、経済連携協定(以下、EPA)に基づくインドネシア人看護師・介護福祉士候補者日本語予備教育(訪日前研修)、在留資格「特定技能」に対応し日本で生活・就労するために必要な日本語教育の支援、日本語パートナーズ(以下、NP)事業を行っています。現在はコロナ禍で対面での研修や授業が実施できないことから、オンラインを活用して業務を進めています。

対面でもオンラインでも『にほんご☆ラクラク』

オンライン教材、にほんご☆ラクラクの表紙の画像
高校生のための新しいオンライン教材が誕生

専門高校向け教科書『にほんご☆ラクラク』が完成しました。専門高校のカリキュラムでも教えやすい分量に抑え、内容や語彙も専門高校の授業内容に合わせました。キャラクターも新たに設定し、楽しく「ラクに」学べる教科書を目指しました。コロナの影響でスケジュールや音声の録音方法の変更を余儀なくされましたが、音声の録音は各自で録音し編集するという方法で、会話の場面を含め一度も顔を合わせずにすべてオンライン上で完成させました。教科書はPSMK(教育文化省専門高校教育局)のウェブサイトから無料でダウンロードできます。
また、オンラインを使って自分のペースで学習したいという声に応えて、「みなと」の中に『にほんご☆ラクラク』A1自習コースを開講しました。こちらもすべて無料で、いつでも、どこでも気軽にコースに参加できます。コースのグループページには、勉強した表現を使って日本語で自己紹介を書いたり、疑問に思ったことを質問したりと活発なやり取りが展開されています。

日本にいるNPOB/OGが活躍!オンライン日本語おしゃべり会

世界的な新型コロナウイルスの蔓延により、2020年度のNP派遣は中止となってしまいましたが、少しでも日本とのつながりを感じてもらえるよう、インドネシアの高校日本語教師を対象とした「オンライン日本語おしゃべり会」を企画し、過去にインドネシアに派遣された元NPの皆さんと日本語で交流する場を設けました。
おしゃべり会は参加者を変えて4回実施しましたが、どの回も2019年度派遣NPの有志5〜6名に“おしゃべりパートナーズ(OP)”として協力してもらい、参加者一人一人がしっかり日本語で話せるようにOP1名+参加教師2~4名のグループを作りました。テーマは「私のまちのお祭り・イベント」「私が今ハマっているもの・こと」「私のまちの自慢」のいずれか1つで、事前に話す内容や見せる写真・動画などを準備してきてもらいました。
当日はZoomの操作や通信のトラブルだけでなく、思ったように話せない、言いたいことが伝わらない…など、コミュニケーション上の難しさを感じた参加者もいたようですが、最後に感想を聞いた時は「毎週・毎月やってほしい!」という声もあり、皆さんの生き生きとした表情を見て、企画して本当によかったと心から感じました。これをきっかけに、今後もオンラインの場を活用していけたらと思います。

「みなと」学習者交流イベント「みんなとみなと」をオンラインで開催

「みなと」を使って日本語を学習している人を対象に、インドネシアでは「みんなとみなと」というイベントを開催しています。当初はJFJAを会場にして、日本語学習を始めたばかりの初心者から自分の意見を詳しく話せるような人まで、参加者の日本語力に応じたクラスに分かれて活動していましたが、コロナ禍で一か所に集まることができなくなり、2020年4月からオンラインで開催することにしました。インターネットの接続問題などが心配されましたが、オンライン化によって、インドネシア各地から応募者が多数集まるようになりました。また、コロナのため日本に入国できず、インドネシアに待機していた日本留学予定の国費留学生を対象にした「みんなとみなと」を日本大使館の協力のもと実施したところ、こちらも好評でした。

EPA14期、オンライン研修スタート

オンライン研修の様子の写真
オンライン研修の様子

2021年2月8日、275名の候補者を迎え、オンラインでのEPA訪日前研修14期が開講しました。候補者、講師、そして調整員と専門家からなる運営スタッフそれぞれがインドネシアと日本各地からオンラインで繋がりながら、研修を実施しています。
研修開講準備として、まず「みなと」と『まるごと』を軸としたコースをデザインし、その後副教材やテスト作成、講師研修を行いましたが、それだけでなく、候補者の学習環境整備や学習習慣形成のサポート、また講師がオンラインで教授活動やチーム・ティーチングを行うための環境作りなども大きな課題でした。これらは専門家にとっても新しいチャレンジで、研修開始後も日々PDR(やってみて、ふり返りつつ経験を重ねていく)の連続です。
そんな中、気になるのは候補者の反応です。まだ学習成果を語るには早いですが、研修前半終了時の候補者へのアンケートでは約9割から今期について「学習しやすい」という回答がありました。コメントからは、オンラインでも先生やクラスメートと繋がり、「みなと」と『まるごと』を使って自分で勉強が進められる、自分が伝えたいことが話せる・書けるという実感を得ている様子が伺えました。オンラインでの研修については約7割が肯定的でしたが、「できれば先生やクラスメートと直接会って勉強したい」という声も少なからずありました。
この先何が待ち受けているか分かりませんが、候補者、講師、運営スタッフが協力、励まし合いつつ「未知の世界」での航海を続けていきたいと思います。その先の新大陸を目指して!

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Jakarta
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
インドネシアの各機関・団体と連携をとりながら、幅広い日本語教育支援を行っている。中等教育では各地域や全国レベルの教師会と、高等教育では主にインドネシア日本語教育学会とその各地域の支部と連携し、勉強会やセミナーを実施しており、「にほんご☆キラキラ」や「にほんご☆ラクラク」等当センターで作成した教科書を積極的に紹介している。2019年には当センター内において特定技能チームが発足し、民間の日本語教育機関を対象とした研修やコンサルティングも開始した。JFスタンダードに準拠した「JFにほんごeラーニング みなと」講座、日本語パートナーズ派遣事業、EPAに基づくインドネシア人看護師・介護福祉士候補者日本語予備教育事業を実施しているほか、近年、需要が高まっているオンライン教材の開発・普及にも力を入れている。
所在地 Summitmas Ⅱ Lt. 1-2, Jl. Jenderal Sudirman, Kav. 61-62 Jakarta 12190, Indonesia
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:3名、専門家:5名、生活日本語コーディネーター3名
国際交流基金からの派遣開始年 1980年
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