世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)第三の都市マンダレーの日本語教育

マンダレー外国語大学
國頭あさひ

マンダレーはミャンマー第三の都市であり、ビルマ最後の王朝があった歴史ある街です。この街にあるマンダレー外国語大学(MUFL)は、ヤンゴン外国語大学(以下、YUFL)の姉妹校です。毎年YUFLから教員が入れ替わりでMUFLに転勤し、ほぼ同じカリキュラムで日本語の授業が行われています。国際交流基金がアジア3か国で行っている「日本語教師育成特別強化事業」の一環として、日本語教師育成コースMUFLで開始されることを受け、2019年度から新たに専門家が派遣されることになりました。

MUFL日本語学科について

1997年12月にMUFLが設立された当初、日本語学科は2年制のディプロマコースとして始まりました。その後2000年12月から学部コース、2002年から夜間コース、2014年6月から修士コースが開講し、学習者の層を広げてきました。現在は、カリキュラムも整備され、MUFLYUFLと肩を並べてミャンマー国内の日本語教育の中心的役割を担っています。頼もしいことに、日本語学科の教員はほぼ全員が国際交流基金の訪日研修などに参加した経験があります。最近では、マンダレーにある他大学でも日本語を選択科目として教える大学が増えてきて、MUFLの教員が交代で日本語の授業を担当しているようです。

日本語学科の教員らの写真
日本語学科の教員ら

マンダレーでも教師育成コースがスタート

ミャンマー人日本語教師の育成コースが2018年にヤンゴンで新設されたのに続いて、2019年12月にはマンダレーでも同育成コースが始まりました。マンダレーコースの第1期はMUFLの学部4年生と一般の日本語教師の合計19名が登録し、12月から3月までの前期の授業が行われました。難しい理論の勉強から、楽しいドリルのレッスンまで、年齢や経験の差を超えて、協働的で楽しい学びの場が生まれました。MUFLの教師育成コース担当教員が本プロジェクトに積極的に参画してくださったおかげで、受講生にきめ細やかに支援が行き届いたと感じています。

パターンプラクティスを練習する教師育成コース受講生の写真
パターンプラクティスを練習する教師育成コース受講生

毎月の日本語教師勉強会

マンダレーへの専門家派遣を機に、2019年の1月からマンダレーの日本語教師の勉強会を始めることにしました。これまで、年に2回春と秋、マンダレー外国語大学で日本語教育セミナーという大きな集いが開催されていましたが、この勉強会は、もう少し気軽に教えるコツや技術を共有できる場になればと思って立ち上げたものです。ミャンマーでは学習者がアルバイトで教師を始めることも珍しくないため、将来日本語教師を目指している学習者も勉強会に参加できます。これまで「音声」「コロケーション」「音読」「学習者へのフィードバック」などのテーマで小さな勉強会を毎月続けてきました。学習者と教師の垣根を超えて、どうやったら楽しく効果的に学習が進められるか、一緒に考えながらネットワークを形成できる場になればと思っています。

日本語パートナーズの活躍

日本人在住者が少ないマンダレーでは、学習者が日本語母語話者と接する機会がヤンゴンほど多くありません。そこで存在感を示しているのが、国際交流基金アジアセンターから派遣されている日本語パートナーズです。MUFLには2016年度から日本語パートナーズが派遣されていて、日本語学科の会話やビジネス日本語などの授業をサポートしたり、文化交流のイベントを企画したりと、MUFL内外の学習者にとって貴重な存在となっています。日本語パートナーズとの交流を通して日本留学への意欲を燃やし、日本語の勉強にますます力を入れる学生もいるようです。

この地域では、意欲ある学習者と、熱心な日本語教師、そしてそれを支えるMUFL教員が1つの日本語チームのように団結しているように感じます。国際交流基金の専門家として、地域の一生懸命な人たちをまるごと支える業務に大きなやりがいを感じています。

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