日本語教育通信 本ばこ 『みんなの日本語中級Ⅰ 教え方の手引き』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

『みんなの日本語中級Ⅰ 教え方の手引き』

編者:スリーエーネットワーク
出版社:スリーエーネットワーク

みんなの日本語中級1 教え方の手引き

URLhttp://www.3anet.co.jp
発行年月:2010年6月
ISBN:978-4-88319-491-9
判型・頁数:B5判、245頁

 日本でも海外でも広く使われている初級日本語教科書『みんなの日本語初級』に続く中級への橋渡しとなる総合教科書『みんなの日本語中級Ⅰ』の教師用指導書です。『初級』は、ⅠとⅡの本冊に各国語版の翻訳・文法解説書や教え方の手引き、副教材など付属教材が充実していますが、『中級』は、現在のところ、Ⅰの本冊、CD、翻訳・文法解説書(英語版/中国語版/韓国語版/ドイツ語版)と今回紹介する『教え方の手引き』が発行されています。

中級を教えた経験の少ない教師への配慮

 この手引きは、3部構成になっています。第Ⅰ部では、『中級Ⅰ』の全体の編集方針、構成、内容と使い方について書かれています。『初級』と同じ点、違う点もわかります。

 第Ⅱ部では、各課の具体的な教え方が書かれています。授業の準備に役立つのがこの部分です。各課の目標、学習項目と授業の流れに沿った細かい手順や留意点が書かれています。『初級』の手引きのように導入のし方や各パターン練習のやり方の例はありませんが、ロールプレイの評価のポイントや、読解、作文と発表の指導の手順などが具体的に示されているので、このような授業活動の経験のあまりない教師にとって参考になります。

 第Ⅲ部は、資料編です。動詞のフォーム一覧、学習漢字索引、課ごとの文法項目と提出語彙一覧などがあります。

『初級』を振り返りながら中級を教える

 中級を初級と同じシリーズで学ぶメリットはいろいろあります。『中級Ⅰ』は、『初級』と登場人物も同じで、練習のパターンもよく似ているので、初級を復習しながら同じやり方で続けて勉強したい学習者には使いやすい教科書だと言えるでしょう。『初級』で練習のやり方に慣れている学習者なら、本冊と翻訳・文法解説書を自習用として使うこともできるでしょう。

 また、各課の文法説明の下に「参照」として『初級』で勉強した関連文法があがっており、動詞のフォーム一覧には、新しく提出された活用形と接続文型だけでなく、『初級』で導入した活用形と接続文型もすべてあがっています。これは、教師にとって、これまで学習者が何を学習し何を学習していないか、新しい学習項目と関連する文型は何課でどのような例文で学習したかが一目でわかり便利です。授業の準備にも試験を作るときにも利用できるでしょう。

 文法説明には、「参考」として、同じスリーエーネットワークの参考書『初級を教える人のための日本語文法ハンドブック』『中上級を教える人のための日本語文法ハンドブック』から説明が引用されているところもあり、すべてを入手できない環境で教えている教師にとって有益な情報となるでしょう。

P.28(小松知子/日本語国際センター客員講師)の図P.28 P.37(小松知子/日本語国際センター客員講師)の図P.37

(小松知子/日本語国際センター客員講師)

国際交流基金の新刊教材・図書

日本語国際センター図書館

「日本語教育通信」の「本ばこ」では、新しく出版された図書の紹介を行っていますが、日本語の教材や、日本語、日本語教育関連の図書についての情報がほしいときは、日本語国際センター図書館のホームページもぜひ利用してください。

日本語国際センター図書館
http://www.jpf.go.jp/j/urawa/j_library/j_lbrary.html

11月のテーマ展示「日本語のスピーチ・プレゼンテーション」
http://jli-opac.jpf.go.jp/display2/201011.html

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